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 チャンバの街のガラクタ山に、一人の男がいた。年のころにして30代前半、青いロングコートを着ていて、髪は緑。まあ言うまでもなく、ブラックタイガー幹部、カミカワである。
さて現在彼には1つ欲望がある。タイトルに有るとおり、「チバヤシを殺し、ブラックタイガーの実権を握ること」である。ゲームではそんなそぶりは微塵も見せないが、本心はそう思っているに違いない。そういうことにしておこう。そうしないと話が進まない。
 この物語は、そんな彼の奮闘記(?)である。





















 

ブラックタイガーは俺のもの

アイス






















 ここはブラックタイガー地下研究室。ゲームにはそんなものは出てこないが、あることにしておく。
カミカワは薬棚に手を伸ばすと、無色透明無臭の液体の入ったビンを取った。
(昨日仕入れた毒薬。見た目やにおいは水と全く同じだから気付かれることはまず無い。でも効果は絶大。一瞬で心臓を止められる。閣下、死んでいただきますよ……)
そのビンを持ったまま研究所を出て、外に出た。そこには、ブラックタイガーの雇ったモグラ乗りに向かって、チバヤシが何か演説をしている姿が見えた。
「……この世に奇跡は存在したのだ……」
(チャンス!)
カミカワの顔がニヤリとゆがむ。彼は知っていた。チバヤシがあの話をすると、すぐ興奮してむせることを。
(そこでこれを飲ませれば……)
その時丁度チバヤシがむせた。カミカワは急いで駆け寄る。
「閣下、興奮しすぎです。とりあえず水をお飲み下さい」
さっきのビンを渡す。チバヤシは何も疑わず、ごくごくと飲んだ。
(勝った!!)
カミカワの双眸が嬉しそうに細くなる。しかしチバヤシは、
「ああ、スッキリした。それでは、またな!」
なんとも無いようだった。
(なっ……!死なないだと!?)
カミカワは急いであとを追う。


 その頃。
「エーベルさん、何してらっしゃるんですか?」
広場でリンとエーベルが話をしていた。ちなみに二人とも主人公の仲間である。
「ああ、リンさんですか。今、新薬を作ってるんですよ」
「へえ。……ん?このビンの中身、水ですよね。薬にも水を使うんですか?」
「ああ、それは水じゃないですよ」
「?」
「水とよく似た劇薬です。単独で飲めば即死です。でもそれにこの薬を加えれば毒の成分は消え、筋肉の増強剤になります」
「へえ。でも毒薬なんて売ってませんよね、どこで手に入れたんですか?」
「昨日の夜に主人公君が属しているブラックタイガーの地下研究室から盗んできました。あそこはおそらく裏ルートでいい薬も手に入るんでしょう。面白い薬が沢山ありました」
「なんだか楽しそうですね。でもばれませんか?」
「空になったビンには、水を入れておきました。水とこの薬はそっくりですから、まずばれませんよ」






 数日後、ビンの中身がただの水に変わっていることに気付いたカミカワはしばらく落胆していたが、すぐに次の作戦を考えていた。そんな時、
「ちょっといいか、カミカワ」
チバヤシに話しかけられた。
「閣下、どうなさいました?」
あくまでも礼儀正しく答える。心の中は殺したい気持ちでいっぱいだったが。
「今度の珠もレッドドラゴンに売り渡して、それからレッドドラゴンを潰したいのだが、何かいい方法は無いか?」
そういうことにはよく知恵の回るカミカワは即答。
「珠の裏に爆弾でも仕掛けておけばどうでしょう?ボタンで爆発するようにして、何か適当に理由をつけてそのボタンを押させるんです」
「おお!!なるほど、わかった。ではまたな!」
そういうとチバヤシは満足気に去っていった。それを確認すると、カミカワは楽しそうにククッと笑った。
(同じ手で閣下も殺せるな。)
しかしすぐに少し考えたような顔になる。
(同じ手に引っかかったりはしないか。となると時限爆弾にして、俺がボタンを押して、爆発する前に閣下に渡せばいい。だがそんなものを作れるような奴は……いた!!)
カミカワが思い浮かべた顔は雇ったモグラ乗りがこの前連れていた化学者らしき男、エーベルであった。勿論カミカワはそのエーベルが薬を盗んだことなどしるよしもない。

 そして。
「時限爆弾……難しそうですね」
「材料は渡しますし、報酬も出しますから」
「ふむ……わかりました。ところで、形や設定はどうしますか?」
「ああ、ボタンで起動できるもので。それから、爆発までの時間は30秒でお願いします」
「やってみましょう」
依頼を取り付けたのだった。
エーベルは本来スポーツドクターとディッガーの修理屋なので、時限爆弾を作るなど出来ないはずだが、出来るようにしないと話が進まないのである。

時は飛んで2つ目の珠を手に入れた夜、爆弾を爆発させた直後。
「じゃあ俺は、珠の回収に行ってきます」
カミカワはレッドドラゴンの本拠地に出向いていった。そして珠を拾うと、下にエーベルから貰った時限爆弾をとりつけた。
そしてガラクタ山に戻ると、
「回収してきました」
珠の下に有るスイッチを押した。
カミカワは知らない。エーベルが設定を『3秒』と聞き間違えたこと、そしてその通り3秒で爆発するように作られていることを。
3秒後、カミカワはチバヤシに珠を渡すことなく黒焦げになった。






奇跡的に一命を取り留めたカミカワは、次の作戦を考えていた。
(もっと直で殺したほうがいいのか?)
そこへ、主人公がやってきた。何か急いでるらしくわき目もふらず一直線に全力疾走。カミカワは考え事をしているのでどちらとも前を見ておらず、
ドガシャーーーーン!!
ものの見事に正面衝突した。お互いの額からは血が出て、両者の拳銃は吹っ飛んだ。
「あ、す、すみません!」
ぺこぺこと謝る主人公。
「いや、こちらも不注意だった」
そこで主人公は何か思い出したような顔になり、
「あ、俺、急いでますので!それじゃあ!!すみませんでした!」
拳銃を拾い上げるとまた全力で走り去っていった。
ようやくカミカワもむくりと起き上がる。
(痛って……おっと、あれは閣下……のんびりしてらっしゃる)
視界の端にチバヤシを見つけたようだ。
落ちた拳銃をとる。それをしばらく見たあと周りを見渡し、
(誰もいないな……よし)
その照準をチバヤシの後頭部に向けた。展開の無茶さには突っ込まないで欲しい。
(これでブラックタイガーは……俺のものだ!!)
ためらいなく引き金を引く。
銃口から銃弾が飛び出し、空を切り裂き、チバヤシの後頭部に真っ赤な花を咲かせたなんてことはなく、銃口から飛び出したのは万国旗と紙吹雪だった。
「…………」
カミカワは呆然として、しばらく動けなかった。


所は変わって、ここは酒場。リン、エーベル、主人公が座っている。
そこへオチタが入ってきた。
「いきなり呼び出してなんでやんすか?しかも皆いるでやんす!!」
主人公はオチタに向かって腰から取り出した拳銃を向ける。
「な、な、な、なんでやんすか!?」
主人公は答えずにっこりと笑って、引き金を引いた。
パン!!
勢い良く銃弾が発射された。
「!!!???」
神のごとき反射神経でオチタはぎりぎりよけることに成功した。オチタは呆気にとられた表情で主人公を見ている。しかし主人公はもっと間抜けな顔をしていた。ようやく我に返ったオチタが言葉を発する。
「何でやんすか!!オイラを殺すために呼んだんでやんすか!!」
「いや、こんなはずじゃなかったんだ!!俺はオチタ君の誕生日を祝おうとしただけで」
「じゃあなんで拳銃を撃つんでやんすか!!」
「違うんだ!!ほんとは万国旗が発射されて、それで皆で祝うつもりだったんだ!!でもどこかで拳銃を取り間違えて……」
「けんかは止めにしましょう。それより、パーティーをするんでしょ?」
リンの一言でその場はとりあえずおさまり、和気藹々としたオチタの誕生日パーティーが行われた。
ちなみにエーベルからは、オチタに新薬の筋力増強剤がプレゼントされた。








 元の拳銃を取り返したカミカワは、次の作戦を考えていた。
(エンジェル様が偽者だと公表すれば、閣下は自然に追い出される。そうすれば……)
その時、主人公が三つ目の珠を持ち帰ったという情報が入った。急いで遺跡まで出向く。
もちろんカミカワもチバヤシも、主人公を始末するつもりだった。
しかし。
数十分後、赤龍号を破壊されたカミカワは、地面に伏していた。
「ちょっと、聞きたい事がある」
主人公が声をかけてきた。
「エンジェル様ってのは、一体何なんだ?」
カミカワは微かに出る声で答える。
「……エンジェル様は……いない……ついたての裏にいるのは……ただの人形だ」
「やんす!?どういうことでやんすか?」
驚くオチタを脇に、会話は続く。
「やっぱりな。いろいろとおかしかったんだ」
「なあ……エンジェル様は偽者だって……お前が公表してくれないか?」
「? 何でまた」
「もうこれ以上人をだまし続けるわけには……いかない……でも俺がそれをやれば……閣下への裏切り……」
本心は、実権を握りたい一心である。しかしそれに気がつかない主人公は、
「わかった。やってみよう」
快く了解したのである。

「エンジェル様がおっしゃるには、次は隣の町を攻めよと……」
「何もおっしゃってないんじゃないか?」
ブラックタイガーの本部。主人公とチバヤシが対峙していた。
「お前、なぜ生きている!?」
耳を貸さず、主人公はついたてに仕掛けた紐を引いた。ガシャン、と倒れる。
「これは……人形じゃないか!!」
「おい、どういうことだ!!」
その様子を端から見ていたカミカワは、満面の笑みを浮かべる。彼は集団のところへ歩み寄り、
「やっちまえ!!」
何故か知らないがチバヤシと一緒に凄惨にボコされた。幹部だからだろうか。
「……はあ……」
誰もいなくなったあと、カミカワは天井に向かって大きなため息をついた。