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ようろう村の子守唄

アイス
















 リリ…リリ…
虫の音がよう聞こえるな。もう眠とうなってきた。やっぱり森で寝るのが一番やな。
五木からは城で寝てもええって言われとるけど、あたしにとってはようろう村の森が一番や。
 こっちに落ちてきてもう……だいぶ経つな。ここに住みついてからは通る奴から通行料取ったり、迷い込んだ子供を脅かしたりして遊んでたけど、いつまでもそんなことやってるわけにもいかんな。早よこの世界でマナ溜めてキングダムに戻らんとなぁ……ハァ。

――ガサッ――

 ん?なんや、子供が倒れとるな。どうしたんやろ?呼吸は……ないな。微かにピクピク動いとるけど。これはもう、死んだな……
あたしはクナイを出して刺し、その子を楽にしてやった。さて、解体して肉でも頂こかな。人肉もカマいたちよりは美味しい、しな。
何やこの子の手にもっとるもん。草……?ま、ええか。いちおクナイ入れにでも入れとこ。
――この子の埋葬もせえへんとな……


 「くそっ!またやられた!!」
次の朝城に行くと、五木がわめいとった。なんや、面白いことでもあるんかね?
「どうしたん、五木?」
「ああ、イルか。吸血鬼だよ吸血鬼!!」
「吸血鬼?なんや面白そな話やな♪」
「面白がられても困るんだが……まぁいい。ここ最近、村人が吸血鬼に襲われる事件が多発してるんだ。今回はちゃんと警備もしてたんだが、ものの見事に手薄なところをやられたよ……」
「へぇー。ま、何か会ったら教えたるわ」
「ああ、頼んだぞ」
あんま馬鹿騒ぎ、って訳でもなさそうやな。でもちょっとした暇つぶしくらいにはなるかな。キャハハハハッ!


 ふぅ。今日も疲れたな。今日もゆっくり木の上で寝るとするかな……あたしもついこの前までは何の仕事もせずにのんびり遊んでたんやな、何だかもう信じられへんね。まあキングダムにいたときはいろいろとやってやけどな。
「うわああああああああっ!!!わあああああああああああっ!」
何や!?誰か走ってきおるな。二人おる。一人は、子供やな。もう一人は……綾華?あれ、綾華やんか!!何しとるんや?ちょっとこれは放っておけへんな……あたしは急いで木から飛び降りた。
「あーやかーっ。何しとるんやーっ?」
「!?……イルさん?どうしてこんなところに?」
「どうしても何も、ここで寝泊りしとるさかいなぁ」
「そうですか。あ、それより後ろの子をこちらへ!」
何やさっきの子。いつの間にかあたしの後ろにまわってぶるぶる震えとった。
「そう、その子です。早くその子をこちらに渡してください!!」
あいつの目、血走っとる。ヤバイな……
「この子がなんかあるんか?」
「いいから早くこちらへ!!!」
もうあたしは全部わかってた。そのまま綾華に言ったる。
「あんた、最近噂になっとる吸血鬼やろ?警備が薄いところをやられたのも当然や。あんたも五木の配下の忍者。警備も全部知っとるんやからなぁ?」
「……」
「返事の無いとこ見ると、本当みたいやね。」
「すべて、わかられているようですね……」
おっとアイツ、腰の刀に手をかけよったな。でも、

キインッ!!

力ならこっちの方が上や。
「どうやらどっちの方が上位か、わかってないみたいやね?」
「っ……!」
ここであたしは、後ろの子をチラッと見た。まだだいぶ震えとるな。……助けてやろか。
「綾華。契約せえへんか?」
「契約……?」
「そうや。今この子は助けてやってもらえへんか?その代わり、この国の馬鹿騒ぎが終わったら、いくらでも血を吸える世界に連れてってやる、これでどうや?」
「本当にそんな世界があると思います?」
「信じてぇや。もしその世界に連れてけへんかったら、あたしの血を吸ってもええさかい、な?」
「……まあ、そこまで言うのならいいでしょう」
ふぅ、危なかったなぁ。綾華は行った……な。後ろの子も、安心した見たいやな。
「あ、あ、ありがとうございました」
「ええで。でも何でこんな夜に森ん中歩いてたんや?危ないで?」
「その、薬草を探しに来てたの。でも暗くなっても見つからなくて……お母が病気だから、早く見つけないとだめで……」
「なるほどな……」
「ほんとは、もっと前の日に兄《あん》ちゃんが探しに行ってたの。でもいつまでたっても帰ってこなくって、だからあたしが」
!!昨日の晩倒れてた子、まさか……
うっ!何やこの感じ。胸が痛い。どうしたんやろ?いくらトドメさして肉食うたかて、あの子は別にあたしが手を出さんでも死んでたんや。あたしが悪いわけとちゃう。ほんなら、何でこんな苦しいんや……
「あっ!!」
わっ!びっくりしたわ。
「どうしたんや?」
「その、腰についてる入れ物からはみ出てる草……」
そうやった。昨日の草、クナイ入れに入れといたんやった、持ってた草。つまりこれは、薬草……あの子、折角薬草を手に入れたのに、世界はひどいもんやな……もちろんこの草は。
「欲しいんやったら、あげるで?」
「え、ほ、ほんとに!?」
「ああ、ええで。」
「うわあああ!やったよ!!」
あたしに向かって、頭下げとる。でもこれは肉を食うてもうたあたしの、せめてもの償い。こんな頭を下げてもらえる権利なんて無いんや……
「安心したら、何だか、眠く……」
寝てもうた。まあ、ええか。
前に村におりたときに聞いた子守歌、うろ覚えやけど歌ってみよかな、この子に。あと、


土の下におる、この子の兄ちゃんに。