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このSSは辰也がやられません。また、8主人公及び美空ストーリーをほぼ無視しています。そして辰也の性格が終盤で本来の性格とはずれます。
その為辰也は絶対にやられて欲しい方、辰也のキャラを変えたくない方は、閲覧をご遠慮下さい。






悪役だってたまにはいい思いをしてもいいじゃないか!!



























 

ユメノカケラ

アイス





















 ――今日は楽しかったね。
    ああ。
    ねえ、初デートの記念に、写真撮らない?
    ……写真?まあいいけど。
    うん、撮ろう!すみませーん!
    ん?ああ、さっき占ったカップルじゃないか。
    あの、写真とっていただけますか?
    ああ、いいぞ。ほら2人とも並べ。撮るぞー。


 そこで辰也は夢から覚めた。そして、強烈な既視感に襲われた。
(何だっ、今の夢……俺は女とデートなんてしたこと無いはず。なのに、どうして……しかも、隣にいた女、どこかで聞いたはずの声……くそっ、思い出せない……)
頭の中に靄が残る。だがいつまでも考えているわけにもいかず、体を起こした。
いつものように新聞に目を通す。しかし、今日は特別だった。何かの記事を探すように目を動かす。
(昨日の晩は満月だった。ということは……あった!)
辰也の双眸が嬉しそうに細くなる。そこには、
【レッドローズ 7回目】
という大きな見出しと、文が書かれていた。
辰也はパソコンを起動させるとメール画面を開き、何回も見たそのメールをもう一度見た。
[俺を人間にする。それでOK?]
[OK.よろしくお願いします。]
それは辰也が人間になれる希望だった。
(今美空の所にあるルナストーンは7つ。あと1つだ。あとはそれを依頼主に渡せば、俺はもう人間だ。やっぱりサイボーグ同盟を抜けて、正解だったな。)
辰也の頭の中に、森や石中の顔が浮かぶ。
(あいつらにはもう付き合ってられなかったしな。あいつらだって本当は人間に戻りたいくせに、大神グループを倒すとかきれいごとばっか言って……)
その日のことを、思い出す。

「ちょっとあんた何それ!?自分だけ人間になろうって訳!?」
「別にいいじゃねえか」
「私たちは大神グループを潰すのが優先事項でしょ!」
「それはお前らの話だろ?俺にとっては人間になることの方が優先だ」
「それでも別にそんなことしなくたって、大神を潰せば私たちも人間同然よ!」
「そんな先の話待ってられるか」
辰也はサイボーグ同盟で自分に任せられた資金を使い、人間の臓器を買おうとしていたのだ。そこを森に見つかり、口論になっている。
「とにかくそんな使い方認められない!リーダー呼んでくる!」
そして。
「……森から話は聞いた。確かに個人に当てられて資金は自由ということになってるが、あくまで大神を倒すために利用するってことになってる」
「……」
「だから残念だが、そのような使い方は容認できない」
「……リーダー、この同盟の目的は、やはり大神グループの壊滅が第一ですか?」
「まあ、そうだが」
「……悪いですが、俺は今日限りでサイボーグ同盟を抜けさせていただきます」
その場にいた周りの全員がざわめいた。森となると即座に腰から拳銃を抜き辰也に発砲したが、それを読んでいた辰也は腕についている装甲板ではじき返した。そんな中、石中が尋ねる。
「どうしてだ?」
「俺は人間になることが最優先事項なんです。大神との無駄ないざこざも避けたい。だから、大神と対立するこの同盟からは、脱退します」
それだけ言うと、辰也は部屋から出て行った。森も、石中も、周りも何も言わなかった。
辰也は知らない。その時森が懐から写真のようなものを取り出し、こう言ったことを。
「彼女のこと忘れて、戻っちゃったね、上川……」

思い出し、ふぅっ、と息をつく。
(やることも無いし、久しぶりに外に出るか。体もほぼ治ったし、少しは動かしておかないとすぐにガタがくるしな。)

 街頭に出ると、なにやら行列が出来ていた。
(ん?何だ?)
辰也は先頭の方へと目を向ける。そこには
(!!あの、夢に出てきた……)
占い師、埼川珠子がいた。
(いや、似てるだけだ。夢の人物が現実世界に出てくるなんてあるはずが無い。)
しかし珠子は辰也に気付くと『おっ』というような顔をして、その後にこっと笑った。その口が、『彼女はどうした?』と動いた。
(彼、女?なんだ、コイツ!!)
辰也は走ってその場を離れた。200mほど離れた場所で落ち着く。
(何だったんだ……夢と同じ占い師、それに彼女って、俺の隣にいた奴のこと……?)
そんなことを考えていると、
「よお、久しぶりだな。どうして逃げるんだ?まさか彼女にフラレたか」
いつのまにか追いかけてきていた珠子が楽しそうに声をかけてきた。
「うわあっ!」
辰也は驚いて転ぶ。
「どうした?」
「お、お、お前は誰だ!?」
「何だ忘れたのか。こっちは覚えてるぞ。1年半くらい前、お前と彼女を占って、写真も撮ってやったじゃないか。客の顔はよく覚えてるぞ」
(写真!?占い師!?彼女!?全部夢に出てきたのと同じ……)
辰也は怖くなり、全力疾走で逃げ出した。逃げ去るその背中に、珠子がつぶやく。
「どうしたんだ、あいつ?」
そこへ、森が声をかけてきた。
「誰だ?お前」
「あ、森友子といいます。さっき、辰也と話してましたよね。それに、写真って……」
「ああ、あいつ辰也って言うのか」
「はい。あの、写真って、これ……」
「何でお前が持ってるんだ?それは私が撮ってやったんだ」
「あの、信じられないかもしれませんが、私の話を少し聞いていただけますか?」
「何だ、言ってみろ。でも客を待たせてるから、なるべく早く頼むな」
 辰也は家に戻ってきていた。
(何だあの女、まるで俺を知っているよう……でもあの女は夢で出てきただけのはず、んん……)
そのまま辰也は、夢の中へと落ちていった。

――人質なんて卑怯だ!彼女は何も関係ねぇじゃねえか!
  アンドロイドのお前と恋人という時点で既に関係があるんだよ。
  え、た、た、たつや?アンド、ロイド?
  お前がおとなしく捕まってくれれば、可愛い彼女さんは見逃してあげるよ。
  くそ……
  
  パンッ! バタッ……

  !? CCRの野郎が、死んでる。おい、誰だ!撃ったのは!
  危なかったね、上川。そっちの彼女さんも怪我がないようで。
  ああ、森か……助かった、有難う。
  いいわよ。それよりあんたの彼女、わけがわかんなくて錯乱しちゃってるわよ。
  ばれちまったからな、アンドロイドだって。
  どうする?記憶消す?
  いや、ちょっと考えさせてくれ……


 そこで目が覚める。残ったものは『彼女』が誰かわからないモヤモヤと、強烈な既視感だった。
(何なんだ、一体……)

 満月の夜がやってきた。あれ以降あのような夢は見なくなり、辰也も気にしなくなっていた。今はただ人間になれるときを心待ちにしている、それだけだった。
(折角最後だし、見に行ってみるか。)
辰也は高級住宅街へと足を進めた。

「満月の夜に咲く赤いバラ!怪盗レッドローズ参上!最後のルナストーンも頂いた。さらばだ諸君。……二度と会うこともあるまい」
そしていつものように、レッドローズは消え去った。辰也はそのことを確認すると、ブローチ工場へ向かった。
CCRにつけられていたことを知らずに。

 美空はブローチ工場で寂しげに座っていた。
「私、これから何をすればいいんだろ……」
辰也は工場の扉を押し開けた。
「誰!?」
美空が振り向く。辰也は美空に歩み寄りながら言った。
「俺だよ」
「た……辰也!?凄い凄い!ルナストーンで本当に願いがかなった!!」
「いや、願いがかなうのはこれからなんだぜ」
「そうなの?……へへ、もう何でもいいや。辰也が帰ってきたら、他には何にもいらない!」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。じゃあそのルナストーンは貰ってもいいよな?」
「? うん!」
ルナストーンを辰也に全て渡す。辰也は満足気に笑みを浮かべた。
(証拠も隠滅しておいたほうがいいかな。)
「おっと、それからもう1つ」
「ん?何?」
「お前の命もくれや」
「……え?」
戸惑う美空をよそに辰也は腰から拳銃を抜き、
パアン!!
その引き金を引くことは出来なかった。辰也はその場にうずくまっている。
「なっ……
「違法サイボーグ上川辰也、逮捕する」
銃を売った男の声が響く。
「CCR……!くそっ!」
辰也は窓ガラスを蹴破ると、そこから逃げ出した。
「待て!」
男があとを追う。
「辰也……私の恋人じゃ、ないの?利用されてただけ?それにサイボーグ、って……何?どういうこと?」
工場には、呆然とした美空だけが残された。そこへ、
「よお、久しぶりだな」
珠子が入ってきた。
「だ、誰!?……あれ、何か見たことあるような、でも会ったこと無いような……」
「やはりな。森から聞いたとおりだ」
「森……?誰ですか、その人?」
「全部、話してやるよ」

 (ふう、何とかあのCCRも振り切ったな。美空は殺せなかったが、人間になればそんな事も関係ない。さて、待ち合わせはこの辺のはずなんだが……)
その時、辰也に大柄でサングラスをかけた男が話しかけてきた。
「そこの方」
「『何の用だ?』」
「『八つの月を買いに来た』」
辰也の顔がニヤリと歪む。どうやら本人確認のための暗号だったらしい。
「ルナストーン8個だ」
「うむ、確かに」
「約束どおり、俺を人間にしてくれよ」
「ああ、その為の連中も到着した」
二人のところに車が近づいてきて、二人の前で止まった。中から出てきたのは、
「CCR!?おい、約束が違うぞ!」
白瀬と灰原だった。白瀬は、辰也の頭に銃を押し当てる。
「っ……!」
そして、辰也を車に押し込む。そこへ
パンパンパン!!!
高い銃声が3つ響いた。1つは車のタイヤを割り、1つは白瀬の足を突きぬけ、1つは灰原のサングラスと目を破壊した。
(!!?)
辰也は訳のわからぬまま、逃げだした。
その向こうに、銃をしまう森がいた。

 そして辰也は、又工場に戻ってきた。
「何だったんだ……あの銃声は……」
そこに、
「おお、辰也だっけ?今から美空に面白い話をするところだ、お前も一緒に聞け」
珠子がいた。美空は戻ってきた辰也を見つけ、びくっとする。
辰也は逃げようかとも思ったが、珠子から殺気を感じ、やめた。
ギイッ
森も入ってきた。
「な!?お前がどうしてここに!?」
森は平然と答える。
「だってさっきあんたを助けたのは私よ。ここにいてもおかしくないじゃない?」
「……なぜ俺を助けた」
「ちょっと私の話をきいてもらいたかったから。あんたの過去について」
「お得意の記憶操作か」
「違うわよ。なんなら、珠子さんに話してもらったら?珠子さんには、もう全部話してあるから」
「ああ、今話すところだったんだ」
「ちょっと待て、何でお前とこの女が知り合いなんだ!」
「まあ落ち着け、今から話をするんだから。二人とも、よくきいておけよ」
珠子の話が始まった。
「まあまず結論を言うと、辰也と美空は本当に恋人同士だったんだ」
「違う。俺は美空を利用するためだけに恋人のふりをしただけだ。本当に付き合ったつもりは無い」
「いや、最近の話ではない。お前がまだサイボーグ同盟にいた頃の話だ」
「俺はそのときにはまだ美空とあったことは無い」
「その記憶を失っているだけだ。その記憶を失うようにしたのはお前の意思だがな」
「俺……の?」
「ああ。最初から順番に話していこう。
 お前がまだサイボーグ同盟にいたころ、美空と出会った。情報カプセルを落としたお前を、美空は手伝って探してくれたんだ。その頃まで良心の欠片もなかったお前だが、美空の優しさを感じ、初めてお前の心に良心が芽生えた。
 それから2人は何度も会って、やがて恋人同士になった。しかしCCRが二人が恋人であることを利用し、美空を人質にお前を逮捕しようとした。その時はそいつ―森に助けられて怪我はなかったが、もう美空を危険に巻き込みたくなかったんだろう、森に頼んで美空のお前に関する記憶を全て消したんだ。そしておまえ自身も、美空に関する記憶を消してもらった。
 それからお前はサイボーグ同盟を抜け、偶然美空と再会。まあお互いの事は覚えていなかったがな。……そして美空が狼付であることを発見したお前は、あろうことにもかつての恋人だった美空を利用し、危険に巻き込んだ。それで今につながるわけだな。その時は美空を忘れお前の良心も消え去っていたから、何も躊躇いは感じなかったんだろうな」
「……出鱈目だ。証拠でもあるのか?」
「ああ」
「!?」
「森、あの写真を貸してくれ」
「はい」
「お前らの初デートのとき、私が撮ってやった写真だ。美空が、私に頼んでな」
「っ!夢の……」
「美空の記憶を消すとき、美空の思い出の品は全て捨てた……つもりだった。しかしその写真だけはこぼれ落ち、森がずっと持っていたというわけだ」
「あ、あ……うあっ……っ!!」
辰也の頭の中から、ふつふつと忘れた記憶が湧き上がってきた。美空のこと、写真のこと、人質をとられたこと。
(俺が見た夢、隣にいた女は美空、既視感があったのは、現実に体験したことがあったから……)
記憶と共に、無くしていた良心が、再び辰也の心に、出てきた。
「美空を、利用、していた……うあああああああああああああっ!!!!!!」
辰也は美空へと叫ぶ。
「美空あっ!今まであんなに、酷いことをしてきて……!」
美空は辰也を暫くじっと見ていたが、やがて
「いいよ」
そういって微笑んだ。
「辰也も今まで辛かったんだね。でももう大丈夫。辰也がアンドロイドでも私は好きだし、どんなに危険でも辰也についていくから、ね」
「美空……有難う……」
その様子を森と珠子は優しい目で見つめていた。やがて、
「さて、邪魔者は退散する?」
「ああ、そうするか」
二人は、工場から出て行った。
「ねえ、辰也」
「……ん?」
「大好きだよ!」
そう言うと、美空は辰也に飛びつき、抱きしめた。




















その時、乾いた銃声がした。
「!?」
辰也は何が起きたかわからず、周りを見渡した。そして気付く。服に血がついてることに。そして、腕の中の美空は物言わぬ肉塊と化していることに。
「み、そら……?」
辰也は美空の体を揺する。しかし、美空はビクとも動かない。
「美空……っ!どうしてだよ!!ついてきてくれるんじゃなかったのかよ!!」
工場の外で、声が聞こえた。
「……誤射した」
「もう!あんた一回逃がしてんだから、ここで仕留めないとCCRクビよ?あたしが足やられてんだから、頑張ってよね!」
「はいはい。でも今のはいきなりターゲットの前に誰かが飛び出してきたから失敗するのも当然だ」
「言い訳無用!!」
その声は辰也にも聞こえていた。
「CCRっ……!」
低い声で唸り、
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
腰の銃と左脇の予備の銃を取り出し、声のした方へと乱射した。
・・・・・・
「よし、今度は成功した」
「おつかれ」
「頭にあてちゃったな、もう死んでる。まあ一応救護班を呼んどいてくれ」
「了解」
機械の稼動してないブローチ工場に、肉塊と鉄塊が、1つずつ、転がっていた。お互いを支えるように。



FIN