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二頭の鬼

灰傘







「んー?」

気絶させた黒服の男を椅子に俺は銃の中身を弄っていた
理由は何となく興味を持ったからである
でも思ったよりも複雑で面倒臭そうでスグ飽きた

半分に割ったが戻す気も無く何処か闇の奥へと投げ捨てる

……朱里が此処にいたら、殺されてただろうな。あいつ意外に銃好きだし。

そうは思いながらも何もせずに立ち上がり腰を捻って体を軽く解す
今日の分は終わったはずだから、これも何となくである

………今日の分、ねぇ。

 「おーい、十川。こっちは終わったで」
 「了解。こっちも終わったからそっちに行く」

そこへ相棒の呼ぶ声が聞こえたので体の軸を回転
少し走っただけで合流できた

 「よう。……ところで朱里は?」
 「朱里なら別の仕事やけど。何や?一緒に戦いたかったか?」

ふーん、一言で受け流した後、周りの黒服の男達を見て

 「今回の敵、どう思う?」
 「サイボーグじゃなくて肉体強化タイプやな。CCR崩れの人間兵器かなぁ?」

槍の穂先を布で磨きながらもカズはそう答えた
「そうかもな」と小声で呟いた後、俺は思いっきり息を吸い

 「………はぁ〜〜〜〜〜〜……」

 「何やいきなり」

 「いや、溜め息だけどさ」

 「分かっとる。それで何に対しての溜め息や」

 「いや……去年までの俺と今の俺を比較して、な」

去年。親切高校が星英高校を破り甲子園で優勝した年
熱くも激しかったがそれは《平和》があればこそのものだった

その《平和》が一切無い生活など去年の俺は想像していただろうか?

 「まぁウチや紫杏にホレられた時点で想像してなかった十川が悪いとゆーことで」

 「恥ずかしい事サラッというなおい………」

カズに信頼され超能力という異形の存在を知ったのも
紫杏を説得し異形の一つである組織から手を切らせたのも

紛れもなく去年の俺
結果として今の俺がこうなっているだけだ

 「それに善先生のおかげで……ええっと……少林寺?にも行けたし」

 「少森寺だ。おかげで人生が終わるかと思ったがな」

俺は護身の為に野球部を引退後すぐ善先生の紹介で少森寺へと入門
昔の達人の紹介とあってか無茶な修行をさせられ何度も死に掛けたが
善先生が成し遂げなかった少森寺八連闘を乗り越えるまでに成長

そして悠々と学校に帰ったのだが……俺は退学した事になっていたのだ
怒りに身を任せ警備員を薙ぎ倒し突撃したが偶然出会った天月の

「理由で学校を休んでいいワケないだろう」

の一言で見事撃沈やる気ゲージは0へと転落
心に深い傷を負いながらも俺は逃げるように(実際に逃げてたが)学校を去った
この時生まれた初めて俺は自分の頭の悪さを呪った

その後二人に拾わなかったら間違いなく路頭を迷っていただろう

 「でも今十川が生きてるのもそれのおかげやろ?」

 「まぁ……な」

だからこそ嫌な思い出だとは言い切れないのだが

 「ウチとしても十川と一緒にいられてラッキーやしな」

 「だからそういう恥ずかしい事を言うな」

 「他の子の誰よりも口説くチャンスが多い」

 「他の子って………酒呑童子か、俺は」

 「!!あははは!!うまい事言うやん!!じゃあ茨木童子はウチか!!」

隠密行動中だというのに喧しく笑うカズ
殆ど思いつきで言ったのに、こう反応されると余計に恥ずかしくなる

 「本気にするなよ……酒呑童子って女にモテすぎて鬼だとも言われたんだろ?俺、女にモテた試しすらないぞ」

 「えー?そうけ?確か十川、桜夜って子に何かしてたんやろ?」

 「誤解してるようだが膝枕してもらっただけだ」

 「十分や。あと時間外に天月と二人っきりで海見に行ってたりしたんやろ?」

否定は出来なかった

 「あと蘭子には一方的に付き合わされて振られたけど妙子によく勉強を教えてもらったり……これもまた二人っきりで」

 「………その情報、何処で?!」

 「十川に惚れてこっそり追い駆けていた噂好きな女の子からや」

奈桜か!!まさかアイツ、俺がいない間その事を学校中に……。

 「いやそれは無かったやろ………多分な」

仲間評価も彼女評価も0だったんだな
そう言えばあの時の天月はどこか怒ってた気もする
 「すまない……皆……」

遅すぎるし今カズしかいないが謝っておく

何故かそれとほぼ同時、ザッ!!という擬音と共に黒服の男達が現れた
前からも左からも右から後ろからも……俺達は囲まれたらしい

 「あれま!」

 「ほら喋ってる間に。どうする?カズ」

 「どうするって、アンタがリーダーやんか」

 「だから俺は酒呑童子じゃねぇ!!」

と言うより恥ずかしい

 「どうします?リーダー」

 「聞けよ!!」

 「どうします?頭領?」

 「だから……」

 「いや、どうしやす?お頭」

聞く気無いね
もう諦める事にした

 「………んじゃあ、死なないように」

 「イエッサ!!じゃなかった了解!!」

カズは獲物を構えると同時に敵へと突っ込んでいく
越後ではないが「やれやれだぜ」と呟いた後、俺もそれに続いた


If End [二頭の鬼]