「武田君、アイドル写真集を賭けて勝負しないか?」
歯を見せて親指を突き出しながら言ってみた。途端に武田君の目が輝く。
「いいッスよ! 勿論ほしのあきッスよね?」
「当然だ。いまならアイコラもつけてやるよ」
「うっひょーッス! 早く勝負するッス!」
「まあ慌てるなよ。勝負方法は…… そうだな、『ティッシュ箱くじ引き』でどうだ?」
「なんスかそれ? まあなんでもいいッスけど。それで、俺が負けたときはどうするッス?」
「うん、眉毛剃らせてくれ」
「……」
武田君の表情が豹変した。具体的に言えばキレた。
グーパンチで殴られる。くそう、イカサマがばれたのか?
「後世の参考にしたいから、どうしたら頭がよくなるのか教えてくれ」
もうすぐテストだ。勉強しても無駄だと悟った俺は水原君の教えを請うことにした。
「そりゃ、日々の努力が無きゃ無理だろ。誰だって突然頭がよくなったりはしないさ」
「く…… 頭のいい人はみんなそう言うぜ。水原君はいいよな、音楽が出来て運動も出来て頭が良くて……」
「そ、そんな褒められるほどじゃないさ。君の方が凄いことだってあるだろ?」
水原君は多少照れながら言った。俺は少し悩んだ後、思いついたことを言ってみた。
「髪の毛とか?」
水原君はにっこり笑った後ヴァイオリンで殴打してきた。おいおい意外と痛いぞコレっ!
「ヘイ彼女、お茶しない?」
「何やってるの? 三矢君。ていうか古いわよそのナンパ」
商店街でナンパをしようとしたら第一号が智美だった。あからさまに胡散臭そうな目で見られる。
「いや、俺も野球ばっかりじゃなくて青春しようと思ってな」
「ふーん? じゃあさ、私がデートしてあげよっか?」
「いや、変な宗教に勧誘されそうだからいいです」
「私の事なんか勘違いしてない?」
「だってみんなで同じ真っ黒な服着てたじゃないかーっ!」
俺は走って逃げた。ついに思っていたことを暴露してしまった。これで俺も謎の宗教団体から狙われる身になってしまったのだろうか。
「ヘイ彼女、お茶しない?」
「えっ、三矢君?」
やばい、明日香だ! 俺は焦った。誤魔化さなければいけない。心の選択肢を開く。
A いえ、僕は従兄弟の四谷です。
B 一緒にアバンチュールしようぜ!
C 今なら洗剤もつけますけど、一ヶ月だけでもどうですか?
うーんどうするべきか。欲望のままにBにすべきか? まあここは無難に行こう。
→C
「他の社とは違って格安ですので……」
「えっと、ごめんなさい、人違いでしたっ」
明日香は走って逃げた。何とか誤魔化せたようだ。俺は額の汗を拭った。
はて、明日香の目尻に少し涙が浮かんでいたような?
「というわけで先生、全く試験勉強が出できていません」
「うーん、それを報告されても…… 私にできることある?」
俺は家に帰りようこ先生にカウンセリングを受けていた。先生の困った顔が目に浮かぶ。
「答えをいただければ補習は免れるんですけどね」
「ストレートに言ってもダメよー」
チッ。
「でも先生、補習があったら野球の練習ができませんよ!」
「それもそうなのよねー。じゃあ成績が悪かったら一番前の席にするってことでどう?」
「えっ、それは……」
「どうしたの、何か不都合でもあるかしら?」
それでは寝れないじゃないか、とは言えまい。俺は咄嗟に言い訳を考えた。
「えっと、先生の小じわが間近に見えて」
「……言いたい事はそれだけかしら?」
そう言い残して電話は切れた。先生もキレた。お、今上手いこと言った?
「荒井三兄弟を坊主にしたら普通の人は分別がつかないと思うんだ」
「それでオイラに何をしろと?」
「いや、友達なら区別できるかなーって」
実際にやってみました。
「むーん」
「むーん」
「むーん」
「えっと…… 新手のホラーでやんすか?」
「んー…… かもしれない」
実際にお見せできないのが非常に悔やまれる。ちなみに判別不可。
その後俺は三人の坊主に校内を追っかけられる壮大な鬼ごっこに興じた。捕まったらのりかの餌にされそうなのでかなり必死だった。
アイツら怖えよ! なんでむーんしか言わないんだよ! しかも足速いし!
「むーん。伊達に走力Aじゃないんだなー」
「むーん。お姉ちゃんに献上なんだなー」
「むーん。今日から君はお姉ちゃんのペットなんだなー」
「ちょ、お前ら止めろ、離せっ!」
俺の人としての生涯は終わった。
せめてのりかじゃなくてマリコならば…… 俺の願いは露となり消えた。
::ワーイ、ワーイ、ノリカ様トデート、楽シイナ……
終わる