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黒服の男が一人。

手には不釣り合いなお盆と一つのコップ。

扉の前で足を止め、ノックをする。

「会長様、コーヒーをお持ち致しました」

「・・・・・・入れ」

扉を開ける。大神 美智男が静かにスクリーンを見ている。

そのスクリーンは50分割されており、それぞれに島の景色が映っていた。

参加者の体内に仕掛けられた爆弾――――これは単なる爆弾ではない。

視神経と直結しており、参加者が見た映像をデジタル化、そして電波で送信。

その映像が、今大神が見ているものであった。

室内に聞こえる音は、草をかき分ける音。

「今は誰の音声を聞いていらっしゃるのですか?」

「17番、小杉 優作・・・」

当然、盗聴機能も付いている。

「知人と行動せず、かつソレを殺しもしない・・・・。
 おもしろい・・・・ククク・・・・・」

「画面が消えているのが7つありますが・・・。
 試合開始から30分、もう6人も死んだのですか?」

黒服が訊ねる。

――――残りの一人は当然、古沢 小一郎である。

「20と29は寝ているだけだ・・・。
 だが、後の4人は死んだ。
 ・・・実に面白い。
 人の視点でモノを見るのがこんな快感だとはな・・・・。
 死に逝くものは最期に何をみるのか―――?興味をそそられるだろう・・・?
 ククク・・・くだらない義務教育などよりよほど為になるとは思わんか・・?」

黒服の男が唾を飲む。あたりにはまだ草むらをかき分ける音しかしない。

「・・・・・イワノフ」

「はい」

「お前は、このゲームで誰が残ると思う・・・?」

「・・・・優勝者、ですか」

イワノフと呼ばれた男は直立不動のまま答える。

「やはり、戦場の実経験もあり武器もアタリである41かと」

41―――ヘルガ。

「41・・・・・。悪くない答えだ」

「・・・・有り難う御座います」

「だが―――私の思惑とは違う」

「・・・・・・」

「このゲームはな、予測などできんのだよ・・・・。
 人は狂気に支配されたとき、予測不能の行動をとる・・・・。
 既に11や43は狂気に取り憑かれている・・・。
 ――――いや、もう支配されているのかもな・・・。
 もしかしたら、最後の一人は自殺するかもしれかもしれない。
 相打ちという可能性だってある・・・。
 ――――私が殺される、という可能性だってあるのだ・・・・。
 予測などできん。幾通りも可能性が在りすぎるからな・・・・」

大神の口元が緩む。

イワノフは口を真一文字に結んでいる。

サングラスによって表情の全ては確認できない。

「――――それにな」

大神がもう一度口を開く。

「予測などできたら、私がつまらなくなるだろう・・・?」

――――どこか分からない、薄暗い部屋。

部屋に響くのは、大神の笑い声と草をかき分ける音だけ。

【大神 美智男 所在地不明 島の中にはいる】
【残り45人】