16 黒服の男が一人。 手には不釣り合いなお盆と一つのコップ。 扉の前で足を止め、ノックをする。 「会長様、コーヒーをお持ち致しました」 「・・・・・・入れ」 扉を開ける。大神 美智男が静かにスクリーンを見ている。 そのスクリーンは50分割されており、それぞれに島の景色が映っていた。 参加者の体内に仕掛けられた爆弾――――これは単なる爆弾ではない。 視神経と直結しており、参加者が見た映像をデジタル化、そして電波で送信。 その映像が、今大神が見ているものであった。 室内に聞こえる音は、草をかき分ける音。 「今は誰の音声を聞いていらっしゃるのですか?」 「17番、小杉 優作・・・」 当然、盗聴機能も付いている。 「知人と行動せず、かつソレを殺しもしない・・・・。 おもしろい・・・・ククク・・・・・」 「画面が消えているのが7つありますが・・・。 試合開始から30分、もう6人も死んだのですか?」 黒服が訊ねる。 ――――残りの一人は当然、古沢 小一郎である。 「20と29は寝ているだけだ・・・。 だが、後の4人は死んだ。 ・・・実に面白い。 人の視点でモノを見るのがこんな快感だとはな・・・・。 死に逝くものは最期に何をみるのか―――?興味をそそられるだろう・・・? ククク・・・くだらない義務教育などよりよほど為になるとは思わんか・・?」 黒服の男が唾を飲む。あたりにはまだ草むらをかき分ける音しかしない。 「・・・・・イワノフ」 「はい」 「お前は、このゲームで誰が残ると思う・・・?」 「・・・・優勝者、ですか」 イワノフと呼ばれた男は直立不動のまま答える。 「やはり、戦場の実経験もあり武器もアタリである41かと」 41―――ヘルガ。 「41・・・・・。悪くない答えだ」 「・・・・有り難う御座います」 「だが―――私の思惑とは違う」 「・・・・・・」 「このゲームはな、予測などできんのだよ・・・・。 人は狂気に支配されたとき、予測不能の行動をとる・・・・。 既に11や43は狂気に取り憑かれている・・・。 ――――いや、もう支配されているのかもな・・・。 もしかしたら、最後の一人は自殺するかもしれかもしれない。 相打ちという可能性だってある・・・。 ――――私が殺される、という可能性だってあるのだ・・・・。 予測などできん。幾通りも可能性が在りすぎるからな・・・・」 大神の口元が緩む。 イワノフは口を真一文字に結んでいる。 サングラスによって表情の全ては確認できない。 「――――それにな」 大神がもう一度口を開く。 「予測などできたら、私がつまらなくなるだろう・・・?」 ――――どこか分からない、薄暗い部屋。 部屋に響くのは、大神の笑い声と草をかき分ける音だけ。 【大神 美智男 所在地不明 島の中にはいる】 【残り45人】