24 (小杉、優作―――) 私は、さっき会った人の名前を思い出していた。 (死んだと思っていたのに、意外なところで再会したわね。 ―――最悪の形で) たった4本のメスを、1本消費してしまった。 そして、かすり傷をつけることすらできなかった。 失態。ホントに不覚・・・。 (支部長に無様な姿は見せられない。 ―――このままじゃ、会いたくない) こんな、ショボイ武器しか持っていなくて、おまけに獲物を取り逃がした姿で。 (早く、獲物を―――) 私が先輩と会ったのは、プロペラ団に入団したとき。 その頃は日本支部長が変わったばかりとかで、色々バタバタしていた。 入団したばかりで何をすればいいのか分からなかった私は、とりあえず新しい支部長と会うことにした。 (こういう世界では、上にコビを売った者の勝ち。 上から注目されれば、その分チャンスは多くなる) 私は支部長室のドアをノックした。 中から聞こえたのは意外にも女の声で、私はびっくりした。 ドアを開け、中に入り挨拶をする。 「失礼します。新支部長就任のお祝い・・・・」 「あら、あなたは・・・浅上さん。 入団したばかりよね」 私を知っている?ホントに入ったばかりなのに? 「え、ええ。そうですけど・・・」 「今のうちに上の心を掴もうっていう考え、といった所かしら。 世渡り上手、ってわけね」 驚いた。まさか見透かされているとは。 「私も嫌いじゃないわよ、そういうやり方。 でもね、あなたはそんな事しなくていいの。 もともと目を付けていたんだから」 「え・・・?」 「カメラであなたを見た時ね、思ったの。 あ、これはいい目だな、って。 ほら、よく時代劇とかで目を見て人を判断するじゃない? それと一緒。いい仕事をしそうな人は目で分かるの」 目で・・・?言っていることが胡散臭い。 「あ、信じてないわね? ・・・・まあ別に気にしないけど。 あなたにはすぐにでも仕事をしてもらうわ。 そして、活躍しなさい。 あなたはそれが出来るのだから」 その後、私の元には仕事が絶え間なく来た。 私はどれも難なくこなし、工作員でありながらまわりの人間に指示を出す立場になっていた。 そして、それよりも難解な仕事をこなしている支部長に、私は惹かれていた。 支部長には色々な話を聞いた。 幼い頃父を亡くしたこと、それからすぐにプロペラ団に入ったこと。 前の支部長を爆殺したこと、そして・・・高校での初恋の話。 「バレンタインでね、チョコを渡そうと思っていたんだけど・・・出来なかったの。 渡そうと決心しても、なぜか体が動かないの。 不思議でしょう・・・? それで、彼は甲子園に優勝して、私は転校。 結局渡せなかったの。私が、弱かったから―――」 私には、チョコを渡すような人などいなかった。 だから、どうして決心したのに体が動かないのかは分からなかった。 ――だが、しばらくして支部長の様子が少しおかしくなった。 暇ができるたびにデータベースを調べ、過去のファイルを探るようになった。 そして、ボーッとする事も多くなった。 ―――それでも仕事はちゃんとこなしていたが。 そして、私に小杉優作への接近任務を言った後、姿を消した。 噂では「プロペラ団壊滅」らしいが、それはデマだ。 その後私は日本に来た大神に認められ、再び職に戻った。 仕事があり、私がいる。それだけが、私にプロペラ団の存在を示していた。。 私は、大神をある程度信用していた。 そして、ある晩。 私は部屋に呼び出された。 窓の側に立つ大神。その横顔は笑っているように見えた。 そして、唐突にこう言った。 「時は、満ちた」 直後、口に布があてられ、私の意識は途絶えた。 ―――ふと、木の陰から何かが見えた。 任月 駆(31番)。ドリルトーイの若社長・・・だったか。 身を隠しているつもりなのだろうが、全然なっていない。 私はメスを一本とり後ろから近づいた。 「若社長様?お迎えに参りました・・・」 駆が振り向く。何かを言いたげにするが、言葉が出ない。聞こえるのは、ヒューヒューと息が漏れる音だけ。 ―――振り向いた瞬間に、喉笛を切られていたから。 慌てて持っていた銃を撃とうとするが、引き金が引けない。 ―――手首の血管を切ったから。 見る見るうちに顔が青くなっていく。 「それでは、よい旅を・・・」 メスを、心臓に突き刺した。 駆の持っていた銃をとる。 デザート・イーグル。反動がでかいため私には使いにくいかもしれない。 (それでもいい) 弾が正しく装填されているか確認をする。 予備弾倉と水だけ取り、その場を後にした。 【31 任月 駆 死亡】 【3 浅上 綾香 智美を捜す】 【残り42人】