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(小杉、優作―――)

私は、さっき会った人の名前を思い出していた。

(死んだと思っていたのに、意外なところで再会したわね。
 ―――最悪の形で)

たった4本のメスを、1本消費してしまった。

そして、かすり傷をつけることすらできなかった。

失態。ホントに不覚・・・。

(支部長に無様な姿は見せられない。
 ―――このままじゃ、会いたくない)

こんな、ショボイ武器しか持っていなくて、おまけに獲物を取り逃がした姿で。

(早く、獲物を―――)



私が先輩と会ったのは、プロペラ団に入団したとき。

その頃は日本支部長が変わったばかりとかで、色々バタバタしていた。

入団したばかりで何をすればいいのか分からなかった私は、とりあえず新しい支部長と会うことにした。

(こういう世界では、上にコビを売った者の勝ち。
 上から注目されれば、その分チャンスは多くなる)

私は支部長室のドアをノックした。

中から聞こえたのは意外にも女の声で、私はびっくりした。

ドアを開け、中に入り挨拶をする。

「失礼します。新支部長就任のお祝い・・・・」

「あら、あなたは・・・浅上さん。
 入団したばかりよね」

私を知っている?ホントに入ったばかりなのに?

「え、ええ。そうですけど・・・」

「今のうちに上の心を掴もうっていう考え、といった所かしら。
 世渡り上手、ってわけね」

驚いた。まさか見透かされているとは。

「私も嫌いじゃないわよ、そういうやり方。
 でもね、あなたはそんな事しなくていいの。
 もともと目を付けていたんだから」

「え・・・?」

「カメラであなたを見た時ね、思ったの。
 あ、これはいい目だな、って。
 ほら、よく時代劇とかで目を見て人を判断するじゃない?
 それと一緒。いい仕事をしそうな人は目で分かるの」

目で・・・?言っていることが胡散臭い。

「あ、信じてないわね?
 ・・・・まあ別に気にしないけど。
 あなたにはすぐにでも仕事をしてもらうわ。
 そして、活躍しなさい。
 あなたはそれが出来るのだから」



その後、私の元には仕事が絶え間なく来た。

私はどれも難なくこなし、工作員でありながらまわりの人間に指示を出す立場になっていた。

そして、それよりも難解な仕事をこなしている支部長に、私は惹かれていた。

支部長には色々な話を聞いた。

幼い頃父を亡くしたこと、それからすぐにプロペラ団に入ったこと。

前の支部長を爆殺したこと、そして・・・高校での初恋の話。

「バレンタインでね、チョコを渡そうと思っていたんだけど・・・出来なかったの。
 渡そうと決心しても、なぜか体が動かないの。
 不思議でしょう・・・?
 それで、彼は甲子園に優勝して、私は転校。
 結局渡せなかったの。私が、弱かったから―――」

私には、チョコを渡すような人などいなかった。

だから、どうして決心したのに体が動かないのかは分からなかった。

――だが、しばらくして支部長の様子が少しおかしくなった。

暇ができるたびにデータベースを調べ、過去のファイルを探るようになった。

そして、ボーッとする事も多くなった。

―――それでも仕事はちゃんとこなしていたが。

そして、私に小杉優作への接近任務を言った後、姿を消した。

噂では「プロペラ団壊滅」らしいが、それはデマだ。

その後私は日本に来た大神に認められ、再び職に戻った。

仕事があり、私がいる。それだけが、私にプロペラ団の存在を示していた。。

私は、大神をある程度信用していた。

そして、ある晩。

私は部屋に呼び出された。

窓の側に立つ大神。その横顔は笑っているように見えた。

そして、唐突にこう言った。

「時は、満ちた」

直後、口に布があてられ、私の意識は途絶えた。



―――ふと、木の陰から何かが見えた。

任月 駆(31番)。ドリルトーイの若社長・・・だったか。

身を隠しているつもりなのだろうが、全然なっていない。

私はメスを一本とり後ろから近づいた。

「若社長様?お迎えに参りました・・・」

駆が振り向く。何かを言いたげにするが、言葉が出ない。聞こえるのは、ヒューヒューと息が漏れる音だけ。

―――振り向いた瞬間に、喉笛を切られていたから。

慌てて持っていた銃を撃とうとするが、引き金が引けない。

―――手首の血管を切ったから。

見る見るうちに顔が青くなっていく。

「それでは、よい旅を・・・」

メスを、心臓に突き刺した。



駆の持っていた銃をとる。

デザート・イーグル。反動がでかいため私には使いにくいかもしれない。

(それでもいい)

弾が正しく装填されているか確認をする。

予備弾倉と水だけ取り、その場を後にした。

【31 任月 駆 死亡】
【3 浅上 綾香 智美を捜す】
【残り42人】