29 (―――来た!) ドアが開くと同時に鉛玉が飛んでくる。 俺は慌てて柱から出ていた首を引っ込めた。 (いきなりか・・・。 クソッ、先制攻撃を取られたか。 うかつに顔が出せない・・・) ドアが閉まる。相手が出ていった様子は、無い。 雑貨屋で拾った手鏡で相手の姿を見る。 (は・・・・? あれは・・・幸せ島のロボット―――?) 手鏡から見えたのは、PX-001、通称たかゆき(38番)。 (なんでロボットがいるんだ! 弾なんか通じねえだろ・・・。 マズイ・・・逃げるか?) しかし、その台所には勝手口や人が通れるような窓はない。 (・・・・) ―――絶体絶命、であった。 (ククク・・・。早く顔を出してこい! そして絶望しろ! 俺に弾丸や刃なんて通用しねえ! まさに無敵! 優勝は確定している!) 手の中に収まっている銃の名はワルサー。 ―――ちなみにたかゆきの手は銃を持つことは出来る。 反動も少なく、扱いやすい銃である。 (弾の装填は苦労したが、入れちまえばこっちが有利・・・。 ・・・? 何やってるんだ? 早く撃ってこいよ? このままじゃ死ぬんだぞ? ・・・・・。 あ、まさか逃げたのか? だからいつまで経っても撃ってこないのか・・・? うーん・・・。 ・・・まあどっちにしても俺が死ぬことはないんだ。 前進しても危険は無いだろう) 俺は前進を開始した。 (やべ、動き出してきた! マズイ・・・。 どっか弱点とか無かったっけ? えーと、ヤツの構造、構造―――) 俺は島での労働を思い出していた。 ―――俺の仕事は、頭部と足部の補強、それと組み立て。 関節部分は・・・ダメだ、そこは特に強化補強してある。 足部は・・・弱点らしいところはないし・・・。 頭部は論外だ・・・CPUとやらがあるらしいから別金属を使っていた・・・! (弱点なんか・・・ねえッ!) 足音が近づいてきていた。残り3メートル、といったところか。 関節は、ダメ・・・!―――残り2メートル――― そ、足部も・・・だ、ダメ・・・。―――残り1メートル――― か、顔は・・・・・・・!顔・・・? たかゆきが台所に入ってくる。 俺は死角から腹あたりに蹴りを入れる。 「うぉッ・・・」 たかゆきがバランスを崩す。その時、指が引き金にかかった。 ――――パンッ 銃とは思えない、軽い音。 銃から出た鉛玉は俺の右足をかすめる。 (―――ッ) 右足に痺れるような感覚が走ったが、それに構ってる余裕はなかった。 俺は、とっさに思いついた弱点である「ソレ」に標準をあわせる。 引き金を、引く。手全体に強い反動。 続けて、ガラスが割れたような音がする。 「あ?め、目が見えない・・・・!」 俺は、続けてたかゆきの顔に、弾を撃った。 そして、すぐに床に伏せる。 ―――爆発でも起こるかと思いきや、少し電磁波が迸った程度だった。 俺は、ゆっくりと顔を上げる。 目に映るのは、床に散るガラスの破片、そして顔の真ん中が無くなっているロボット。 (た、助かった・・・・か) そして壊れてもまだ握っているワルサーを引き離した。 (ロボットのくせに、俺に襲ってきただと? ・・・・。 コイツも、ゲームに乗っていたのか? 何のためにだ?金が欲しかったのか? ・・・・。 まあ、俺の知ったことじゃないがな) そして、銃声によって人が寄って来ないうちにそこを後にした。 一体のロボットの、一つの夢。 それは、サイボーグになった自分の夢。 今となっては、小さな、儚い夢。 【38 PX-001 死亡】 【17 小杉 優作 右足に軽傷】 【残り41人】