31 くずれるネロの顔。 落ちてくる血。 そして、ネロの体が倒れた。 「ネロ・・・?」 目の前の光景が、ただ信じられなかった。 少し前まで、隣を歩いていた。 少し前まで、殺し合いに疑問を抱いていた。 そんなネロが、今は、血滴り、物言わぬ肉塊と化した。 涙が目に溢れた。だが、声は出なかった。 叫ぼうとしても、小さな嗚咽が漏れるだけ。 それが、やけにもどかしかった。 ―――突然、誰かに見られている気がした。 俺は体を横に倒した。―――いや、倒れたといった方が近い。 直後、自分のいた場所を銃弾が切り裂く。 スナイパーライフルを構え、撃ってきた相手に向ける。 相手も俺に銃口を向ける。 静かに睨み合う。 「・・・・お前がやったのか?」 解っていることを聞く。 「だとしたら?」 「・・・・何故やった?」 「・・・・お前、正気か?」 「・・・・」 (何を言っている?俺は正気だ。むしろ人殺しをするお前はどうなんだ?) 「今は、生きるか死ぬかの状況なんだ。 生き残るには、他の奴を殺す必要がある。 殺さなければ、自分が殺される。 俺は死にたくはない。だから殺す。 これが普通の発想だ。当たり前だろ?」 「・・・・」 (普通だと・・・? 人殺しが普通?生き残るため? ・・・・そんなわけ―――) 「それが当たり前だと? 自分が生き残るためだったら、他人はどうなってもいいということがか? そんなわけないだろ・・・! 人の未来や希望を奪っておいて、それが当たり前だと? ふざける・・・なァッ!」 ――――気がつくと、引き金を引いていた。 それにつられて自分の体が勝手に動く。 引き金を引いた自分の体は再び横に倒れ、相手の銃弾をかわす。 ネロからのアイスピックを投げる。 引き金を引く。 自分の意志とは関係なく、躰が勝手に動く。 血が、飛んだ。 カチッ、カチッ、カチッ・・・・・ 引き金を引いても、渇いた音しかしない。 その音で、正気に戻った。 「――――ッ・・・・!」 左腕が熱い。見ると、上着が真っ赤に染まっていた。 (!―――アイツは?) 相手がいた場所を見る。 「うっ・・・・」 吐き気がした。 そこにあったのは、何発も銃弾を受けてすでに人のモノとは思えない顔をしている男だった。 「・・・・俺が、やったのか」 ライフルの引き金を引く。 かえってくるのは、銃弾の飛ぶ轟音ではなく、渇いたカチカチという音。 (・・・・・う) その場に吐いた。 体の中にあったものを全て吐く様に、地面にブチ巻けた。 それが収まった後、ネロを埋めようとしたが、脱力した俺では運べなかった。 それが悲しくて、俺はまた泣いた。 (守れなかった・・・) ネロの顔にハンカチをかぶせ、黙祷をする。 (守るだけの力はあったはずなのに・・・守れなかった) 目の涙を拭い、ネロの亡骸に背を向ける。 (明日香―――) そして、進路を山中に変更した。 【5 江川 茂 死亡】 【37 パワプロ 二人の所持品を回収、水とリボルバーを取る】 【残り38人】