32 時間はあっという間に経ち、午後7時となった。 ネロ達が死んでから一時間、この島で交戦はなかった。 嵐の前の静けさ―――そう言わんばかりに。 黒松 東児(16番)はこの島で初めて人と接触していた。 「こっちは交戦する気はない。もっとも、お前がその気なら話は別だがな」 そう言って対峙する人物を睨む。 「交戦しようにも、武器を持ってませんから無理ですね」 対峙する人物―――野球マスク(49番)がパソコンを見せながら答える。 「・・・・それがお前の支給武器なのか?」 黒松が気の抜けた声を出す。 「ええ。ツいてないですよ・・・」 頭を掻きながら野球マスクが答える。 「・・・・・。 ならここでお別れだ。 せいぜい死なないように努力するんだな」 野球マスクを通り抜けようとする。 「―――あ、ちょっと待って下さい!」 呼び止められ、立ち止まる黒松。 「・・・・何だ?」 「その武器って・・・確かロケット・ランチャーですよね。 建物とかも壊せるっていう・・・」 「そうだが、なんだ?」 「―――大神を倒しに行くんですか? それとも、ゲームに乗った人を殺しに行くんですか?」 「!」 黒松の目が見開かれる。 「あ、図星でしたか。それで、どっちですか?」 「・・・・・何故分かった?」 「え?何がですか?」 黒松が強い視線で睨む。 「とぼけるなよ。 どうして俺が大神を倒しに行くと分かったのか、と聞いている」 「あ、大神を倒す方でしたか。それはそうと・・・・ 理由なんて簡単ですよ。あなたはゲームに乗っていない。それだけです」 「何故俺がゲームに乗っていないと?」 「自分で言ってたじゃないですか。 こっちは交戦する気はない、って。 ゲームに乗ってる人なら、すぐ撃ったはずですから」 「む・・・・」 「アツくなってるんじゃないですか? いくらこのゲームを潰すといっても、頭が動かなきゃどうしようもないですよ」 「・・・・・。 ・・・・そうだな。 お前のお陰で落ち着いた。礼を言おう。 じゃあ俺はこれでな」 再び野球マスクの脇を抜けようとする。 「あ―――ちょっと待って下さい」 黒松が呆れた顔で振り返る。 「まだ何かあるのか?」 「せっかくですから、僕達と手を組みません? 少し離れたところに仲間がいるんですけど、 みんな大神を倒すために集まったんですよ。 どうですか?」 「・・・・・」 黒松は考えていた。 (仲間、か。 下手に近づいて一網打尽にされるって可能性もあるな。 だが・・・一人で突っ込むよりは勝算は高くなる。 まあいざとなったらジローから貰ったアレもあるしな・・・。 とりあえず会ってみるか) 「・・・・まずは会ってみる。 案内してくれ」 「あ、じゃあ着いてきて下さい」 しばらくして二人は少し開けた場所に出た。 月の光が葉の間から射し込む、穏やかな場所だった。 そこいたのは、小さな声でお互い話し合っている6つの影。 黒松はそのうちの一人を見て声をかけた。 「ジロー?ジローか?」 その声を受けて、その影がこっちを見る。 「あ、アニキ!生きてましたか!」 「当たり前だ。俺は簡単には死なない」 「流石はアニキ!うわ、凄い武器持ってるじゃないですか! アニキもやりますね〜。ウソついて一人で旅に出るとは―――」 (・・・良かった。 ジローが生きてるなら・・・まずは一安心だ・・・って・・・ん?) 「おい、ジロー」 「な、なんすかアニキ。改まっちゃって」 「もしかして―――お前も大神を倒す「仲間」なのか?」 「はい、そうですけど・・・・?」 「悪いことは言わん。お前はやめろ。 お前はまだ若い。 お前は生き残って―――」 「今は一人でも戦力が多い方がいいんですよ、アニキ。 それに、俺だけ見てるだけってのも退屈ですよ?」 「む・・・まあお前がそこまで言うなら・・・」 「あの、そろそろよろしいですか?」 野球マスクが申し訳なさそうに口を挟む。 「ん?どうした?」 「そろそろ仲間の紹介をしたいのですが・・・・」 「あ、ああ。悪かったな。勝手に話し込んで・・・」 「いえいえ。 ―――えーと、左から順番に立花さん、堤君、ドミオさん、平山君、バオ、奧野さん。 ―――こちらが新しい仲間の黒松さん」 黒松が軽い会釈をする。 (・・・どうやら普通の反大神勢力らしいな。 安心した・・・・) 「出発は明日の早朝。 体力を蓄えてからです。 ―――あ、それと黒松さん」 「む?何だ?」 「この中で、しっかりした武器を持っているのは 平山さんの弓矢とドミオさんの手裏剣ぐらいですから。 黒松さんは主力ですので、期待してますよ」 「・・・・何だと?」 【黒松 野球マスクらと合流】 【残り38人】