34 小山と鬼鮫の戦いが終わった後、街には3人の姿があった。 そのうちの二人は当然天本と唯である。 そして、その「もう一人」が家に迫っていた。 迫っている男は、手にボウガンを持っていた。 彼はもともと3人をつけていたのだが、なかなか交戦をしようとしなかった。 小杉の戦いと小山の戦いを見物し終わった今、危険が少なくなった今、 男が、動き出した。 一方、家の中では天本が荷物をまとめていた。 小山の雄叫びによりここにも人がやってくる可能性がある、と思ったからである。 「神木さん、こっちに食料と水をまとめましたから」 「・・・・あ、ありがとう・・・」 「・・・いえ、どういたしまして」 あれ以来、唯はほとんど口を開かなくなった。 というより、無気力になった、といった方が近い。 呆然とどこかを見るような虚ろな目をしていた。 しかし、体の方はしっかりとウージーを抱いていた。 ―――小山の、最後の遺産を。 突然、玄関の方で音がした。 (!―――もう敵襲? 今は神木さんが弱っているというのに・・・・ ・・・・・。 今は、私が守り人。 小山君に代わって、私が―――) 天本がそう考え立ち上がった時、服を唯につかまれた。 「神木さん?」 「イヤ・・・行かないで・・・今は・・・一人にしないで・・・・」 「大丈夫ですから。私は、戻ってきますから。 このままだと、二人ともやられてしまいます。 ―――私に何かあったら、すぐに逃げて下さい」 そう言って天本は服を掴む唯の手をほどいた。 「―――あ―――」 近くにあったカッターを拾い、部屋を出る。 「――――え?」 天本が見たのは、この家に来た敵の姿。 それは同時に、自分の兄弟の姿でもあった。 亀田 光夫(13番)である。 (山田さん・・・? いや、違う・・・・何か、雰囲気が・・・ ということは、あの人も・・・・矢部一族・・・?) 「かわいい子でやんすね。 大人しくしてれば悪いようにはしないでやんすよ」 そう言って亀田が近づいてくる。 「―――あなたも、兄弟の一人なのですね」 「・・・突然何を言いだすでやんす?」 「あなたも、矢部一族の一人なのですね」 「・・・・・・・何故そのことを知ってるでやんす?」 「・・・私も、その一族の一人だからです」 亀田がさらに近寄ってくる。 「・・・・オイラの前でその事は口に出さないで欲しいでやんす。 オイラは、この一族を恨んでいるんでやんす。 そして、自分がこの一族だということを早く忘れたいんでやんす」 「―――それは、逃げてるだけじゃないんですか?」 「・・・・」 「私もこの一族を恨んでいます。 でも、忘れようなんて思ってはいません。 この恨みを、恨みの元凶である父親にぶつけるまでは。 ―――忘れることなんて、できないんですよ。 私は、逃げるほど弱くはないですから」 その言葉を聞き、亀田の目が細くなる。 「それは、オイラが弱いって言ってると受け取っていいでやんすね?」 「・・・・ええ。 大方現実から目を背けているのでしょうが、それってどうしようもない負け犬ですよ? 逃げて、忘れて。それでは私達は負けたままなんですよ?」 「・・・・さっきから弱いだの負けだのムカツク女でやんすね。 オイラは気にしてないでやんす。 別に忘れたって何も悪いことは―――」 「何度でも言います。 逃げてるだけじゃ私達は―――」 亀田が突然声を張り上げる。 「あ゙ー!五月蠅いでやんす! 女だからって調子にのるなでやんす!」 ―――その時、振り上げた亀田の手がボウガンにあたり、矢が空を切った。 太く強い矢は真っ直ぐ飛び、天本の心臓を貫いた。 ちょうどその時、唯がウージーを持って部屋から出てきた。 (銃を持ってるでやんす! ここは退散するでやんす!) 亀田が家から出てゆく。 後に残されたのは、体の中心を一本の弓矢で貫かれた天本とその横で座り込む唯の二人だけだった。 「か・・・・み・・・・き・・・・さ・・・ん・・・・・・・」 天本が苦しそうに呟く。 「・・・・・い・・・・き・・・・・て・・・・・・・・」 その後、天本は息を引き取った。 ウージーとディバックを持った唯は、天本の最期を見届けた後街を出た。 (天本さんの仇―――顔は見た――― 山田君にそっくりの――――弓を持った男―――) 唯は走っていた。 小山のウージーと天本のディバックを握りしめながら。 【4 天本 玲泉 死亡】 【12 神木 唯 街を出る】 【残り35人】