37 「おい、マスクさんよ・・・」 野球マスクの耳元で囁く。 「どうしましたか?」 俺は疑問に思っていたことを聞く。 「俺達は大神のアジトに特攻して、奴を倒す。 ・・・・それであってるんだよな?」 「はい、そうですけど・・・?」 「分からないことが二つある。 一つは、体内にある爆弾のことだ。 突撃がバレたら、この島の全員が逝くかもしれないぞ? これが一つ。 もう一つは、奴のアジトの場所だ。 明日の朝に探すのか? それじゃ死亡者がどんどん増えると思うのだが・・・?」 それを聞くと、野球マスクがこっちを向く。 「そのことでしたら―――」 堤の方を見る。 既に泣きやみ、パソコンの前で何やら難しい顔をしていた。 「堤君」 堤がパソコンを閉じ、こちらに来る。 「何か用ですか?」 「ああ。爆弾についての解析はできたかい?」 「ああ、そのことなら・・・ もう答えは出てますよ。意外と簡単でした」 「な・・・! お、教えてくれ! 爆弾はどこに埋まっている! どうすれば無効化できる! それとも取り出すのか!」 「あ、アニキ、静かに・・・」 いつの間にか、周りの連中も集まっていた。 「・・・・コホン。 では説明をさせていただきます。 ―――結論から言えば―――」 みんなの視線が堤に集まる。 「―――爆弾なんて、埋まってないんです」 「・・・・はぁ?」 目が点になる。 「お、おい、もう一度言ってくれ。 俺には「埋まってない」と聞こえたんだが・・・」 「はい、その通りです。 爆弾なんて、埋まってません」 「・・・・納得のいく説明をもらおうか」 「はい、分かりました―――」 みんなの視線が再び集まる。 「・・・・コホン。 まず、不思議に思ったのは体に傷がないことです。 自分の見えるところは全て見ましたし、 背中もドミオさんに見てもらいました。 が―――どこにも傷がないんです。 普通、解剖手術をした後は縫い跡が残ります。 優秀な医者ならまあ少しはマシになりますが・・・ それでも、全く傷が無いというのはおかしい。 ということは、体の解剖はしていないということになります」 「ほぉ・・・・」 (こりゃ驚いた。 高校卒業したばかりのガキかと思っていたら・・・) 「次ですが、もし埋まっていたときの話です。 通常、爆弾というものは爆発します。 銃弾なんかがあたったら間違いなく爆発します。 ―――さて。 黒松さん―――ですよね。 黒松さん。 もしあなたが大神だったら、どこに爆弾を埋めますか?」 「え?あ、俺か? そ、そうだな・・・・」 突然名前を言われて気が動転する。 (うーむ、俺が大神だったら・・・・か。 まあ普通は・・・・・) 「・・・腹、かな」 「腹ですか。 なるほど。確かに手術もしやすく、埋める場所もたくさんあります。 ――――でも、腹を狙うのは大神だけじゃないんですよ。 腹というのは、結構弾が当たる場所なんですよ。 ―――もし、弾が当たったら、どうなるか。 答えは簡単です。爆発します。 ――――さて。 腹は弾が当たっても致命傷になることは少ないです。 しかし・・・爆弾が埋まっていたら。 それは爆発し、その人は死にます。 そして、至近距離での戦闘でこうなった場合、撃った人の爆弾も誘爆します。 これでは、僕達の苦しむ姿を見て喜んでいる大神もがっかりするでしょう? というわけで、腹や心臓、頭などは埋まっていないと考えられます。 特に頭は手術自体が難しいですからね。 それで・・・・残った手足ですが、これは爆弾を埋めるには狭すぎると考えられます。 ということは――――爆弾なんて埋まっていない。 そう考えた方が、納得ができるんです。 ―――――。 以上のことから、爆弾は埋まっていない・・・と考えられます」 「はぁ・・・・・・」 思わず感嘆の息が漏れる。 (驚いた・・・・まさかここまでとは。 追いつめられた状況で、ここまで考えるとは・・・) 「じゃあ堤君、続いてアジトの位置を」 三度堤に視線が集まる。 「・・・・それなのですが・・・・」 申し訳なさそうに堤が言う。 「ネットワークに繋がっていないパソコンでは―――」 「――――俺が知っている」 突然堤と違う声が聞こえてくる。 「!?・・・・・・誰だ・・・!」 声の聞こえた方向を見る。 ゆっくりとランチャーを構える。 「安心しろ、敵意はない。 むしろ俺もお前達の仲間に入れて欲しいのだが・・・?」 木の陰から出てきたのは、ショットガンを肩にかけた長髪の男。 「あ、ハガネ! 久しぶりバッタ〜」 ボボが声をかける。どうやら鋼というらしい。 俺は鋼に声をかけた。 「で? アジトの場所を知っているとはどういう意味だ?」 「言葉通りだ。 俺はアジトの場所を知っている。 この目で確認してきたからな」 「な・・・・・」 「アジトはここの頂上を降りて少し行ったところにある。 洞窟になっているが、多分隠し扉でもあるのだろう。 トラック一台ぐらいは楽に通れるような大きな洞窟だ。 俺一人で行ってもよかったのだが、勝算は高い方がいい。 ―――それにいい武器を持っている奴もいるみたいだしな?」 鋼が俺の方を見る。 ランチャーは未だに構えたままだった。 「・・・・・・フン」 「鋼さん・・・でいいですよね? その情報は確かですか?」 「ああ。俺に嘘を付くメリットはない」 「では・・・予定どおり早朝に出発します。 鋼さんも、それまで体を休めていて下さい」 (おいおい、そんな簡単に仲間に入れていいのか・・・?) 口に出そうと思ったのだが、そのタイミングは失われた。 「―――俺の仲間が死んだ。 俺は、その仇を討たねばならない。 だが、殺した奴は分からない。 ならば―――主催者を殺すまで、だ」 そう言って、鋼は俺の前を通り過ぎた。 俺は、静かにため息を吐いた。 ランチャーは、既に下ろしていた。 【35 鋼 反乱軍に加わる】 【残り35人】