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満月の光が穏やかに射す山の中。

人間が二人。

一人は男、もう一人は女。

男は、女に何か語りかけている。

女は両手をあげながらその話を聞いている。

不意に、男が手に持っているモノを女に向けた。

女は叫び、男に背を向け走り出した。

男が矢を発射する。

それは女の背中に刺さり、女は悲鳴をあげる。

それでも走ることを止めず、少しふらつきながらも走る。

男もそれを追うが、ボウガンの装弾によって遅れる。

やがて女は森の開けた場所に出る。

そこには、一軒の山小屋が建っていた。

女は助けを求め、入口を捜す。

やがてドアを見つけ、女はそこに向かう。

ドアノブに手をかけようとした、その瞬間―――

何かが躰を突き抜けていく感覚と共に、女は絶命した。



しばらくして、木々を駆け抜けてきた男が現れる。

男は、今は既に冷たくなってきている女を見下ろすと、ため息を一つ吐いた。

―――それは、ついさっきのこと。

男―――亀田 光夫(13番)が森の中を歩いていたとき。

亀田は視界の隅に人の影を見つけ、それに近づいた。

それは参加者の一人―――野々村 愛(33番)だった。

亀田はボウガンの矢を確認し、愛に近づいた。

『そこのお嬢さん、ちょっと待つでやんす』

『!?凡田君?』

『ちがうでやんす!
 オイラ亀田でやんす!今度凡田って言ったらこれを撃つでやんす!』

亀田がボウガンを突き出す。

『・・・・・』

『そうでやんす。黙っていれば殺しはしないでやんす。
 ・・・・ああ、そうでやんす。
 両手を上にあげるでやんす』

愛は言われたとおり両手を上にあげる。

手には、何も持っていない。

『・・・・それでいいでやんす。
 ――――このゲームでは、二人まで生き残れるでやんす。
 もしキミがオイラの仲間になるのなら、オイラはキミを殺さないでやんす。
 でも、少しでも怪しい動きをしたらこれを撃つでやんす。
 ・・・・さ、決めるでやんす。
 大人しく仲間になるか、ここで死ぬか。
 ―――悪いことは言わないでやんす。仲間になった方がいいでやんすよ?』

『・・・・』

(今断れば私は間違いなく殺される。
 でも―――仲間になっても・・・安全とは言えない。
 この人は―――危険。
 ―――――――)

『きゃあぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!』

亀田に背を向けて愛が走り出す。

『ック・・・この!』

亀田の撃った矢が愛の背中に刺さる。

『あああッ・・・・・!』

愛は叫ぶが、止まらない。

亀田が矢を装填する隙に、遠くに走る。

『ハアッ・・・ハアッ・・・!』

やがて愛は一軒の山小屋を見つけ、入り口を探す。

ドアを見つけ、ノブに手を伸ばした瞬間。

――――入り口にセットしてあったクレイモアの破片が、愛の躰を突き抜けた。



亀田は家の内部の様子を見る。

(クレイモアがあるって事は誰かが中にいたということでやんす。
 今中に入っても、返り討ちにされる可能性があるでやんす。
 どれ、まずは・・・)

亀田は足下に落ちていた石を拾い、中に投げる。

「キャッ!」

人の―――女の声がした。

(・・・この先にいるみたいでやんすね。
 それにこの声は―――寺岡さんでやんすね)

亀田は崩れかけている扉を蹴り倒すと、中に入った。

「・・・・亀田さん?」

「そうでやんす。
 プロペラ団の時以来でやんすね・・・」

「は、はい・・・」

(?
 何かに怯えてるように見えるでやんすね。
 何に―――ああ、後ろの死体でやんすか)

「・・・この子は不運だったでやんす。
 寺岡さんも祈ってやって欲しいでやんす」

「・・・・・」

(まだ怯えてるように見えるでやんす・・・?
 何か、恐ろしいものを見るような・・・・)

「亀田さん・・・・」

「・・・・・なんでやんす?」

「亀田さんが手に持っているのって、ボウガンですよね・・・」

(あ、これに怯えてたでやんすか)

「ああ、これは護衛用に持っているだけでやんす。
 誰にも撃ってないでやんすよ。
 ―――ところで寺岡さん、提案があるでやん―――」

「護衛用、ですか・・・・?」

「?そうでやんすけど・・・・」

(なんでやんす?
 何でこんなにしつこいでやんす・・・?)

「――――なら――――どうして――――
 後ろの女の子に―――矢が刺さっているんですか――――?」

「!」

(しまったでやんす!
 ・・・・・仕方がないでやんす・・・・)

「あ、明日香ちゃ―――」

「黙れでやんす!」

―――亀田が、矢を放つ。

―――その矢は、背を向けようとしていた寺岡の心臓に刺さり、背中を破った。

―――寺岡の躰が倒れ、古い木造の家が揺れる。

(・・・・・・チッ、しくじったでやんす・・・・。
 ・・・・・明日香ちゃんが中にいるなら、聞かれちゃったでやんす・・・)

亀田は、リビングに急ぎ入った。

そこにいたのは、レーダーを持ち、目に涙を浮かべて座っている明日香だった。

「・・・・明日香ちゃん、聞いていたでやんすね・・・?」

「・・・・あ・・・あ・・・・・てらおか・・・・さん・・・・・・」

「・・・こんなことするのは不本意でやんすが、知ってしまった以上―――オイラは・・・殺すしかないでやんす」

亀田は、ボウガンに矢を装填する。

―――満月が、明日香の顔を照らす。

―――怯えきり、涙が一筋通っている、顔を。

装填が、終わった。

ボウガンを、構える。

亀田の視界の隅に、三つの光の移るレーダーが見える。

「明日香ちゃん・・・・・・」

ボウガンを持つ手に、力がこもる。

「―――恨まないで、欲しいでやんす―――」






―――遠くで、銃声が聞こえた気がした。

―――直後、リビングのガラスが割れ、破片が飛び散る。

―――割れたガラスの先に見えたのは、一人の男。

―――スナイパーライフルを片手で構えた、よく知っている男。

―――月は、雲に隠れ、朧月となっていた。

【29 寺岡 薫 33 野々村 愛 死亡】
【13 亀田 光夫 20 進藤 明日香 外傷は無し】
【37 パワプロ 左腕負傷】
【残り33人】