42 「――――ろ松さん、黒松さん、そろそろ出発ですよ」 「む・・・・」 目が覚める。いつの間にか寝ていたらしい。 「あ、起きましたね。 そろそろ4時になります。 ・・・・暗いうちに、特攻しましょう・・・」 そういって、野球マスクが離れる。 (・・・・鋼はもう起きてる・・・か。 あと起きてるのは・・・バオとマスクだけ、か) 「おーい、ボボさーん、起きてくださーい。 ボボさーん・・・・」 その時、何故か木の上で寝ていたドミオが寝返りをうち、木から落ちた。 自由落下したドミオは綺麗にボボの上に落ち、奇妙な音と共に地面に転がった。 「わ、ボボさん、ドミオさん、大丈夫ですか?」 その言葉につられるようにドミオが起き上がる。 「・・・・ムー・・・。 ワタシは、全然、大丈夫デース・・・」 (頭がフラフラ揺れてるぞ) 「ぼ、ボボさんは・・・・」 「・・・俺はヤワには出来てないでバッタ〜・・・」 のっそりと起き上がってくる。 (うぇ・・・・・) 首から、黒い体液が出ていた。 「――――ここだ」 鋼が振り向く。 そこは確かに大きな洞窟で、軽トラなら軽く出入りできそうだった。 「・・・・しかし、どこにも怪しい所なんて無いぞ? なぜここにアジトがあると思ったんだ?」 (最悪の場合、コイツがスパイという可能性もある・・・。 この中に入れて、危険分子を皆殺しにする・・・。 注意は怠らないようにしなくては・・・) 「・・・・ここだ」 そう言って、鋼が壁の一点を指す。 「周りの岩石とくらべて、ここに段差がある。 削った跡だ。 おそらく、これが隠し扉・・・ということになる」 見ると、確かに周りと表面がずれている。 「・・・・で? どうする?今すぐ特攻するか?」 野球マスクを見る。 「―――ええ、今すぐです。 これ以上犠牲者を出さないためにも、早く」 「・・・・分かった。 みんな、外に出るぞ。 もしかしたら、洞窟が崩れる可能性もある」 みんなが外に出る。 俺は肩のロケット・ランチャーを下ろし、構える。 (弾は3発。 実質・・・・俺は戦いに参加できない。 ・・・・・・・) 周りの連中を、グルッと見渡す。 ―――スタンガンを片手に持ち、屈伸運動をしているバオ。 ―――粉の入った瓶を持ち、首の位置を修正しているボボ。 ―――弓を持ち、恐怖か、緊張かで震えている平山。 ―――スパナを片手に持ち、洞窟の天井を眺めている堤。 ―――手裏剣を装備し、投げるポーズを考えているドミオ。 ―――スタングレネードを両手に持ち、じっと俺を見ているジロー。 ―――パソコンをその場に置き、何かメッセージを書いている野球マスク。 ―――ショットガンを構え、鋭い目つきでドアの先を睨む鋼。 (・・・・・・・) 「――――離れろッ!」 引き金を、ひいた。 ――――時を同じくして、こちらは島の外周。 この島は一カ所を除き切り立った崖に囲まれており、落ちたら海に真っ逆さまとなっている。 その一カ所は砂浜となっているだけで、それ以外は何もない。 通常、大神のアジトに潜入する方法は洞窟からの特攻しかない。 ―――特異的な身体能力がない場合は、の話だが。 島の北側、崖の下―――そこには船着き場があり、アジトと直結している。 その船着き場に、一つの影があった。 (・・・・そろそろ、か) 次の瞬間、辺りに轟音が響く。 船着き場の見張りも、アジト本館に引き上げる。 (・・・・賽は投げられた、か) 手に持つのは、4つのプラスチック爆弾。 野球マスクらが突撃すると同時に、アジトに一人潜入する影。 ――――迅雷 隼人。裏での、孤独な戦いが、始まった。 12月 30日 午前4時 48分。 ―――殺し合いからの解放戦線が、今始まった。 【残り32人】