46 「・・・あの男の言ったことがあってるとすれば、この部屋でいいんだよな?」 俺達は、一つの部屋の前にいた。 「・・・・・そういうことになりますね」 9人いたメンバーも、いまでは4人になっていた。 (ま、鋼はいないから3人だがな・・・) 「・・・・行くぞ。鋼は今も戦っているんだ」 俺は、ドアノブに手をかける。 スタンを使って入りたいところだが、ついさっき鋼に渡したばかりだった。 「あ、俺が先に入りますよ」 ジローがドアノブに触れる。 「いや、いい・・・。 お前は無傷なんだ、俺が先の方がいい」 野球マスクとジローは無傷だった。 といっても、軽いかすり傷などは負っていたが。 「だからですよ。 もしこの先に仕掛けとかあったりしたら、アニキじゃ避けられませんよ。 俺ならまだ全然大丈夫ですから」 「いや、だがしかし・・・」 「いいからやらせて下さい。 ・・・・俺は、スタンを投げること以外もできるんですから」 「む・・・」 俺は手を引く。 (・・・・強くなったものだな、本当に・・・) 俺は、ある春の日のことを思い出していた。 ―――それは、アイツが工場に来てから一年ほど経ったとき。 「あ、アニキッ!大変ですよ!」 いつも通り朝のコーヒーを啜っていた俺の部屋に、ジローが入ってきた。 「朝っぱらから騒々しいぞ、ジロー。 もっと静かにしろ」 「す、スイマセン・・・」 「・・・で、何があったんだ?」 「あ、それなんですよ! 和桐のアイツが・・・工場を辞めるらしいんですよ!」 「な、なにっ!」 俺は、和桐製作所に走り出していた。 「・・・・本当に辞めるのか?」 「・・・ああ。俺は、いつかは帰らなくちゃいけない身だから、ね」 俺達は、河原で座っていた。 「・・・いつ行くんだ?」 「そうだな・・・。 ・・・・早ければ、早いほうがいい」 「・・・・そうか」 俺は、静かにタバコをふかす。 「・・・・一つお願いがあるんだけど、いいかな?」 「・・・・言ってみろ」 「―――実は―――」 次の日。 俺は、野球場にいた。 といっても、いつものように観客席ではなく、グラウンドの上。 (最後に、試合がしたい、か) 俺は、アイツの方を見る。 (・・・何というか、欲がないというか・・・) アイツは、嬉しそうに素振りをしている。 (・・・野球バカ、というか・・・) ジローが寄ってくる。 「アニキ、ウォーミングアップ終わりました」 「おう・・・・じゃ、そろそろ始めるか!」 「ヘイ!」 俺は、久々にグラウンドに向かって走った。 (・・・・3−2、9回裏。ランナーは満塁。 ・・・・・なんかの野球漫画か?) マウンドの上には、アイツの姿。 (・・・アイツを打ち崩せば逆転、か) 俺の横で、白鳥が立ち上がる。 (・・・いくらファーストはいえ、白鳥じゃ難しいだろうな・・・) 思案している俺に、ジローが寄ってくる。 「アニキ、お願いがあるんですけど・・・」 「・・・・代打か?」 「さすがアニキ、話が分かる・・・」 「・・・タイム!」 俺は、審判にそう叫ぶ。 「・・・・で?誰を使う気だ?」 ジローに聞く。 「・・・・俺、じゃダメですかね?」 「・・・む、しかしお前は9回まで投げたんだ、もうフラフラじゃないのか? ・・・・というより、ルールを無視してないか?」 「・・・そ、そこをなんとか・・・」 「いくら草野球とはいえ、やはりルールはルールだろうしな・・・」 「お願いしますよ・・・。 ・・・アイツとの決着を付けたいんですよ!」 「う、うーむ・・・」 白鳥の顔を見る。 「仕方が無いなあ」と言わんばかりの顔で、オーケーサインを出している。 「・・・掛け合ってこよう」 「ありがとうございます!」 急にジローの顔が晴れる。 (まったく、現金な奴だな・・・) 審判と掛け合い、和桐社長の承諾を得た後、俺はジローに親指をつき出した。 「ありがとうございます! 俺は、球を投げること以外にも出来るということを証明しますよ!」 ジローは、バットを持って走っていった。 その後結局ジローは三振、フローラルローンズは敗北した。 (・・・セリフはほとんど同じでも、意志は成長しているんだな・・・) 「・・・じゃ、行きますよ・・・」 ジローがノブをひねる。 左手に持った銃をドアの先に向けて構え、発射態勢をとる。 「――――オラァッ!」 ジローが、ドアを蹴り開ける。 その直後に聞いたのは、一発の銃声。 その直後に見たのは、血を吐いて倒れるジロー。 ―――そして、その先に見たのは、銃を構えた黒服と、イスに座り微笑む大神の姿。 【6 奥野 次郎 死亡】 【16 黒松 49 野球マスク 大神 イワノフ 部屋内】 【残り25人】