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「・・・あの男の言ったことがあってるとすれば、この部屋でいいんだよな?」

俺達は、一つの部屋の前にいた。

「・・・・・そういうことになりますね」

9人いたメンバーも、いまでは4人になっていた。

(ま、鋼はいないから3人だがな・・・)

「・・・・行くぞ。鋼は今も戦っているんだ」

俺は、ドアノブに手をかける。

スタンを使って入りたいところだが、ついさっき鋼に渡したばかりだった。

「あ、俺が先に入りますよ」

ジローがドアノブに触れる。

「いや、いい・・・。
 お前は無傷なんだ、俺が先の方がいい」

野球マスクとジローは無傷だった。

といっても、軽いかすり傷などは負っていたが。

「だからですよ。
 もしこの先に仕掛けとかあったりしたら、アニキじゃ避けられませんよ。
 俺ならまだ全然大丈夫ですから」

「いや、だがしかし・・・」

「いいからやらせて下さい。
 ・・・・俺は、スタンを投げること以外もできるんですから」

「む・・・」

俺は手を引く。

(・・・・強くなったものだな、本当に・・・)

俺は、ある春の日のことを思い出していた。





―――それは、アイツが工場に来てから一年ほど経ったとき。

「あ、アニキッ!大変ですよ!」

いつも通り朝のコーヒーを啜っていた俺の部屋に、ジローが入ってきた。

「朝っぱらから騒々しいぞ、ジロー。
 もっと静かにしろ」

「す、スイマセン・・・」

「・・・で、何があったんだ?」

「あ、それなんですよ!
 和桐のアイツが・・・工場を辞めるらしいんですよ!」

「な、なにっ!」

俺は、和桐製作所に走り出していた。



「・・・・本当に辞めるのか?」

「・・・ああ。俺は、いつかは帰らなくちゃいけない身だから、ね」

俺達は、河原で座っていた。

「・・・いつ行くんだ?」

「そうだな・・・。
 ・・・・早ければ、早いほうがいい」

「・・・・そうか」

俺は、静かにタバコをふかす。

「・・・・一つお願いがあるんだけど、いいかな?」

「・・・・言ってみろ」

「―――実は―――」



次の日。

俺は、野球場にいた。

といっても、いつものように観客席ではなく、グラウンドの上。

(最後に、試合がしたい、か)

俺は、アイツの方を見る。

(・・・何というか、欲がないというか・・・)

アイツは、嬉しそうに素振りをしている。

(・・・野球バカ、というか・・・)

ジローが寄ってくる。

「アニキ、ウォーミングアップ終わりました」

「おう・・・・じゃ、そろそろ始めるか!」

「ヘイ!」

俺は、久々にグラウンドに向かって走った。



(・・・・3−2、9回裏。ランナーは満塁。
 ・・・・・なんかの野球漫画か?)

マウンドの上には、アイツの姿。

(・・・アイツを打ち崩せば逆転、か)

俺の横で、白鳥が立ち上がる。

(・・・いくらファーストはいえ、白鳥じゃ難しいだろうな・・・)

思案している俺に、ジローが寄ってくる。

「アニキ、お願いがあるんですけど・・・」

「・・・・代打か?」

「さすがアニキ、話が分かる・・・」

「・・・タイム!」

俺は、審判にそう叫ぶ。

「・・・・で?誰を使う気だ?」

ジローに聞く。

「・・・・俺、じゃダメですかね?」

「・・・む、しかしお前は9回まで投げたんだ、もうフラフラじゃないのか?
 ・・・・というより、ルールを無視してないか?」

「・・・そ、そこをなんとか・・・」

「いくら草野球とはいえ、やはりルールはルールだろうしな・・・」

「お願いしますよ・・・。
 ・・・アイツとの決着を付けたいんですよ!」

「う、うーむ・・・」

白鳥の顔を見る。

「仕方が無いなあ」と言わんばかりの顔で、オーケーサインを出している。

「・・・掛け合ってこよう」

「ありがとうございます!」

急にジローの顔が晴れる。

(まったく、現金な奴だな・・・)

審判と掛け合い、和桐社長の承諾を得た後、俺はジローに親指をつき出した。

「ありがとうございます!
 俺は、球を投げること以外にも出来るということを証明しますよ!」

ジローは、バットを持って走っていった。






その後結局ジローは三振、フローラルローンズは敗北した。

(・・・セリフはほとんど同じでも、意志は成長しているんだな・・・)

「・・・じゃ、行きますよ・・・」

ジローがノブをひねる。

左手に持った銃をドアの先に向けて構え、発射態勢をとる。

「――――オラァッ!」

ジローが、ドアを蹴り開ける。



その直後に聞いたのは、一発の銃声。

その直後に見たのは、血を吐いて倒れるジロー。

―――そして、その先に見たのは、銃を構えた黒服と、イスに座り微笑む大神の姿。

【6 奥野 次郎 死亡】
【16 黒松 49 野球マスク 大神 イワノフ 部屋内】
【残り25人】