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「・・・・・」
水木は無言で斧を引き抜く。
倉刈の体が倒れる。
「お、お父さん・・・お父さんっ!」
私は、叫ぶことしかできない。
救急セットのことも、目の前にいる斧を持った人のことも、忘れていた。
「・・・・悪いな、倉刈・・・。
俺は、優勝すると決めたんだ・・・。
だから、お前の子供もここで殺る。
・・・すぐに会えるんだ・・・・良かったな」
お父さんは、苦しそうに呼吸をするだけで何も言わない。
「・・・・これで・・・終わりだ」
斧が、もう一度振り上げられる。
(・・・・・・)
私は、すでに避けようという意志もなかった。
ただ呆然と、斧が振り上げられるのを見る。
(ここで、私は―――お父さんと、死ぬ・・・)
―――そうなるはずだった。
声が、聞こえた。
「おおおおおおおおおおおおおっ!!」
誰かが、茂みから出てくる。
斧を持った人に、扇子で殴りかかろうとしている。
懐に入られると弱いのか、斧はほとんど動いていない。
扇子の先から、刃が出てくる。
それは水木の腕に当たる。
鮮血が飛ぶ。
腕が、見る見るうちに赤く染まる。
「・・・ク・・・」
水木が地を蹴り間合いを取る。
「・・・・次に会ったときは・・・殺す」
それだけを言うと、森の奧へと消えてしまった。
男が、扇子を腰に下げる。
そして、父の元に駆けてきた。
「おい、倉刈さん・・・大丈夫かよ!」
男が、父の名を呼ぶ。
「・・・あなたは・・・・わたしと・・・入れ替わり・・・入ってきた・・・」
「三鷹です。・・・それ以上しゃべらないで下さい」
三鷹さんは、自分の服の袖を破くと父の背にあてた。
「ははは・・・いいんですよ・・・わたしは・・・ここで・・・」
「何言ってるんですか、こんな可愛いお子さんを一人にする気ですか?」
三鷹さんが私を見る。
「・・・ひでこ・・・・」
お父さんも、私を見る。
「みたかさん・・・」
「・・・何ですか」
「・・・むすめのこと・・・たのんでもいいですか・・・?」
「何・・・?」
「あなたなら・・・きっと・・・・。
・・・・・ひでこを・・・まもってください・・・」
「な、何言ってるんですか!
あなたがやらなくてどうするんですか、あなたが!」
お父さんはそれに答えず、私を見ている。
「おおきくなったな・・・・ひでこ・・・・。
・・・・まずしかったけど・・・・しあわせだった・・・・。
・・・・みなさん・・・・さようなら・・・・・」
それを言い終えると、力尽きたように目を閉じる。
「おとう・・・・さん?」
名前を、呟く。
しかし、返事は帰ってこない。
幸せそうな顔で、お父さんは目を瞑っている。
私は、その時初めて、何も考えずに泣いた。
(あの様子じゃ、致命傷だろうな・・・)
俺は、歩きながら考えていた。
既に腕の傷は応急処置済みだ。
(奴の扇子に毒が仕込んでなければ、特に異常はないはず)
そこで、再び俺は倉刈のことを考える。
(・・・・俺は・・・・・。
・・・・俺は、愛を生かすため・・・・それだけを考えて動いている。
・・・・そのために、コーチや見ず知らずの参加者を殺してきた・・・。
だが、本当に・・・・それは正しい行動なのか・・・?
・・・・いや、反乱なんて出来るわけないのは散々考えた。
体内爆弾があるし、参加者同士が手を結ぶなど、到底考えられない。
・・・・だったら、これは仕方がないことではないのか?
知り合い同士が殺し合うのは、「不幸」という言葉で済ませるんじゃないのか?
それとも・・・・?
・・・・逆に言えば、この島ではどんな行動が正しいと言えるんだ?
・・・・・)
止血だけをした腕が、痛み出していた。
―――痛み出しているのは、俺の心も、か?
そんなことを、ふと思った。
【15 倉刈 仁志 死亡】
【43 水木 卓 左手負傷】
【残り23人】