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「お父さん・・・お父さん・・・・」
少女は、泣き続けていた。
いくら色んな女の子と話してきたとはいえ、父を失った直後にかける言葉なんて思いつかない。
とりあえず俺は、頭を撫でる。
―――しかし、効果がありそうにもない。
少女は、相変わらず泣き続けている。
(確か・・・日出子ちゃん、だったかな)
「え、と・・・日出子ちゃん、ここにいると危ない。
すぐに人も集まってくる。
さ、早く移動しよう・・・」
日出子は顔を上げない。
(聞こえていないのかもな・・・)
「―――その男の言う通りだ。
ここらへんに人が集まってきている。
殺意を持っている奴なら、容赦なく殺されるぞ」
「―――だ、誰だっ!」
―――俺としたことが、二回もでかい声をあげてしまった。
俺が見た先に立っていたのは、弓を持った長髪の男だった。
「倉刈が亡くなったか――――クソッ」
どうやら、倉刈さんを知っているらしい。
「・・・名前ぐらい言ったらどうだ?」
「・・・・・鋼だ」
淡々と言う。
「・・・三鷹だ」
名を言われたら、返すのが礼儀だ。
「・・・・さっきも言ったが、早くここから遠ざかった方がいい。
近くで銃声が聞こえた。
お前達の他にも誰かがいるということだろう」
「・・・なぜ声をかけた?」
「・・・後で話す。
今は―――一刻も早くここから遠ざかった方がいい」
「・・・・お前は・・・これにノッていないと考えていいんだな?」
「・・・殺し合いの時間は終わった。
―――参加者を集め、戦力を高める・・・・それが、今の目的だ」
「何を・・・言っている?」
言っていることが分からない。
(殺し合いは終わり?戦力を高める?なんのことだ―――)
「―――俺は他の者と接触を図る。
お前らは―――ここを真っ直ぐ進め。
ある程度進んだら止まれ。そこが―――集結地だ」
「は・・・・?」
「・・・・じゃあな」
それを言うと、鋼は行ってしまった。
(よくわからんが・・・ここから離れるのには同意だ)
俺は、また日出子ちゃんに声をかける。
「日出子ちゃん・・・今の話聞いただろ?
―――移動しよう」
だが―――やはり、日出子は動こうとしない。
(・・・・仕方がない)
俺は、日出子ちゃんの腕に触れる。
「・・・・行こう」
だが、その手は強く引き剥がされる。
「・・・・・・っ・・・・。
日出子ちゃん、ここにいたら殺されるんだ。
悲しい気持ちは分かるけど、いつまでもそうはしてられないんだ!」
「・・・・私は・・・お父さんと・・・ここで・・・・」
「・・・・・・」
俺は黙ってしまう。
「ここで・・・・死にます・・・・」
「・・・・・・馬鹿・・・・言ってんじゃねえよ」
「・・・・・!」
日出子ちゃんを睨む。
「・・・何のために、倉刈さんが死んだと思ってるんだよ・・・・。
自分の命と引き替えにしてまで、何で日出子ちゃんを助けたと思ってるんだよ!
・・・・日出子ちゃんに、生きて欲しいからだろ?
だから・・・分かっているのに、突っ込んでいったんだろ?
――――なあ、日出子ちゃん・・・。
頼むよ・・・・。
倉刈さんのことを思っているんだったら・・・・動いてくれよ・・・・」
俺は、泣いていた。
理由なんて、知らない。
ただ、いつの間にか・・・・泣いていた。
「おとう、さん・・・・・」
日出子ちゃんが、顔を上げる。
「―――さあ、行こう」
俺が差し伸べた手に、日出子ちゃんの手が、重なった。
―――空蝉という言葉がある。
魂が抜けて、虚脱状態になった身のことをいう。
今の私は、まさにその状態だった。
どれくらいの間、ここにいたのか。
長い、長い時間が経っている気がした。
私は、何をしていたんだろう。
泣いていた・・・?呆然としていた・・・?
分からない。
思い出そうとすると、あの光景が蘇ってくる。
(パワプロくん・・・・・・・)
悲しい。
だけど、涙が出ない。
―――既に、出す涙が無くなってしまったのかもしれない。
突然、レーダーの光が増えた。
その光はかなりの速さでこっちに向かってきていた。
しかし―――動こうとは、思わなかった。
光が、私の真後ろに来た。
だが、気配が無い。
―――そんなことは、私にはどうでもよかった。
「・・・・大切な人を・・・・失ったのか・・・?」
後ろから声が聞こえてくる。
やっぱり人はいたらしい。
「・・・・・・はい」
口が、勝手に動いた。
「・・・・この家には―――死体が4体あるようだが・・・・?」
そんな言葉は、聞きたくなかった。
「・・・・二人は殺されて、一人は殺した人と相打ちです・・・」
だが、やはり口が勝手に動く。
「・・・・・その眼鏡の男の名は―――」
後ろの人がそこまで言ったときだった。
「――――いい加減にして下さい・・・!
初めに言ったはずです、大切な人を失った、と。
それなのに、なぜ、その事を聞いてくるんですか?」
「・・・・」
枯れたと思った涙が、再び出ていた。
「大切な人を失った悲しみ、あなたに分かりますか?
ずっと会いたいと思っていて、やっと会えたのに引き離されて―――
あなたに―――その悲しさが分かりますか?」
後ろを向いた。
立っているのは、髪で目を、包帯で口を隠した男だった。
「・・・・・分かるさ」
「・・・・なら、どうして・・・・!」
言おうとしていた言葉を、途中でやめる。
―――男は、泣いていた。
「―――昔・・・・私も大切な人を失った。
悲しかった。
だけど・・・私には、悲しみを共有できる人なんていなかった。
家の事情から、葬式すらも開けなかった。
私は―――一人で悲しみを背負った。
その時に、思った・・・・。
大切な人を失った悲しみを一人で背負うのは、本当に寂しいことなんだ、と。
だから―――他の人を、同じ思いにさせたくなかった・・・。
――――分かって、くれたかな?」
気のせいか、最後の言葉は、女の人が喋っているように聞こえた。
「・・・・怒鳴って、スイマセンでした・・・・」
「・・・いや、こっちが図々しかったかもしれない。
こちらこそ―――悪かった」
男が、目の涙を拭く。
そして、突然話し始めた。
「―――大神が死んだ。
脱出と行きたいところだが、船は爆破されていた。
・・・大神は、死ぬ間際に最終手段に出た。
このままだと・・・島の人は、全滅する。
だから、一刻も早く人を集め、解放軍をつくる。
詳しくは歩きながら説明する。
今は―――早く西に逃げた方がいい。
さあ、行こう―――」
手を出してくる。
(この人は―――信用できる――――)
私は、そう思っていた。
「ちょっと待って下さい」
そう言うと、私は再びパワプロくんの前に立った。
「パワプロくん・・・・ありがとう・・・・」
帽子を取る。
落ちていたレーダーを拾う。
「・・・・・行きましょう」
私は、歩き出した。
【14 倉刈 日出子 45 三鷹 光一 西へ】
【20 進藤明日香 21 迅雷 隼人 西へ】
【35 鋼 毅 アジト周辺へ】
【残り18人】