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黒松達のアジト特攻時の爆音により、アジト周辺に人が集まりつつあった。

秋穂(2番)や、小角(8番)・ヘルガ(41番)、そして―――塚本 甚八(26番)。

彼等は、場所こそ違えど皆アジトの近辺にいた。

その中でも、塚本は入り口のそばにいた。

(こりゃ誰かが入り込んだ後かぁ?派手にぶっ飛んでるが・・・)

しげしげと、壊されたドアの辺りを見つめる。

(それに・・・なぁんか臭ぇと思ったら・・・死体があるのか)

ドアの数メートル向こうに、黒服達の死体が転がっていた。

どれも腕や足が無かったり、首が半分もげていたりした。

(いくら免疫があるとはいえ、見ていていい気分にゃなれねえ光景だな・・・)

ドアに背を向ける。

(中で戦いが起こってンなら、わざわざ突っ込む必要もねえな)

彼の手には、洋刀が一つ。

―――高城 秋生(22番)の物だった。

彼女が赤坂の死体を見て落とした物を、塚本が拾ったのである。

(もともとの支給品がついてねえよなぁ、ベルト一丁なんてよ)

ベルトは、剣を拾った―――砂浜で捨てた。

(ま、こいつで小杉でも脅して、しっかりと働かせるか・・・)

剣をぶんぶん振り回す。

型も何もあったものじゃない、メチャクチャだ。

(最後にはちゃんと殺すがな。キシシシシ・・・)

洞窟の中で、一人で不気味に笑う。

―――突然、足下にパソコンを見つける。

(ぁんだあ・・・?何でこんな所にパソコンがあるんだ・・・?)

パソコンの前にしゃがむ。

(何か秘密の情報とかがあるのかもな。
 どれ、ちょっくら調べてみるか・・・)

片っ端からファイルを開く。

だが、ファイルにはほとんど何も入っていない。

(ほとんど買ったばかりの状態じゃねえか・・・・。
 もったいねえなあ。
 何かねえのか?)

調べる内に、一つのファイルに行き着く。

(セキュリティだぁ?
 パスワードなんか知らねえよ・・・・。
 しかし・・・見たい)

画面の前に座り込み、指をパキパキ鳴らす。

(まずは・・・・「ogami」で・・・クソ、ダメか。
 なら・・・・「mitio」・・・こんな簡単にはいかねえか・・・。
 「mogura-zu」・・・これもダメか・・・。
 クソッ、何なんだ、一体・・・・)

苛ついてきたのか、キーボードを打つ音が大きくなる。

――――カタカタカタカタ、パチ―――カタカタカタカタ。

しばらく、その音のみが洞窟内に響く。

熱中してきたのか、額が汗ばんできている。

―――五分ほど経ったときだった。

洞窟内に、大きな音が響く。

―――塚本が、パソコンを蹴り飛ばした音だった。

(クソ、何だってんだ・・・!
 わざわざパスワードなんか設定しやがって!
 ・・・どうせロクなもん入れてねえくせに・・・ケッ!)

塚本が右手の剣を振り上げた、その時だった。

洞窟内に、足音が木霊する。

「だ、誰だっ!」

塚本が慌てて洞窟の入り口を見る。

「な、なんだァ?
 変なマスクしやがってよ・・・」

入り口にいるのは、野球マスク(49番)。

ゆっくりと、塚本の方に近寄ってくる。

塚本の目線が、野球マスクの手元へと移る。

(ナイフ・・・・?血が付いたままだと?
 脅しのつもりか・・・・?
 キシシシシ・・・・馬鹿め。
 血糊の付いたナイフは切れ味が悪いに決まってんだろ!
 それに・・・リーチの差もある。
 先制攻撃を喰らわして、さっさと殺すか!)

剣を両手で持ち、体の前で構える。

「死ねやッ!」

大きく振りかぶり、野球マスクに飛びかかる。

野球マスクの腕が、空を横に薙ぐ。

―――次の瞬間、塚本の持っていた洋刀が飛んだ。

剣は回転しながら洞窟の入り口に滑る。

「・・・な、何だと・・・」

(ば、バカ力じゃねえの・・・?
 しっかり握ってたはずだぞ・・・)

野球マスクは、飛んだ剣を気にせず塚本の方へ近寄る。

「ひ、ひっ・・・!」

塚本は、野球マスクに背を向けて奧へと走り出す。

―――野球マスクが、走る。

すぐに塚本に追いつき、抜く。

「な、何なんだよ・・・お前はよぉ・・・」

塚本の目の前には、ナイフを持った野球マスク。

―――自分の後ろにいたはずの―――野球マスク。

「うわああぁぁぁぁっ!!」

塚本が、逃げようと後ろを向いたときだった。

突然視界が目まぐるしく回り、頭を打つ。

―――真っ先に視界に入ったのは、首のない自分の体だった。



獲物を狩り終えた野球マスクが、洞窟の入り口の方を向く。

―――そこには、銃を野球マスクに向けた神木 唯(12番)の姿があった。






―――遺伝子研究は、すぐに始まった。

と言っても実際研究は島で済んでいたらしく、後は実践だけだったらしい。

私は、一つ疑問に思うことがあった。

「研究材料に囲まれながら、なぜ実践をしていなかったのか」―――である。

博士に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「普通の人間では、変化した遺伝子構造に肉体と精神が耐えられず人格破綻する」――らしい。

博士は、島に来た人全てのデータを見た。

その中で、肉体的、精神的にも通常より優れていたのがあの男だったらしい。

実践には、遺伝子変化に耐えられる躰と精神がいる。

遺伝子構造が似ていれば、人格等も似ている―――博士は、そう践んだ。

―――正解だった。

遺伝子研究の成果が表れ、四人の男は人にして人ではなくなった。

だが、ここで問題が起きた。

肉体的には十分だったのだが、やはり精神的にはダメだったらしい。

言葉は話せるが、理性が存在しない―――今までよりははるかに良いらしいが。

実験後は、催眠ガスを使わないと近寄ることも難しい。

仕方がないので、冷凍睡眠装置を作り大人しくなってもらった。

私達は、悩んだ。

彼等より肉体・精神的に優れている者は山ほどいるだろう。

だが、私達はその人を知らない。

私は、もう一度プロペラ団のデータベースを見に本土に帰った。

―――そこで、私は面白い記録を見た。

ドイツの博士、ダイジョーブが昔ある少年を改造した―――という記録だった。

【26 塚本 甚八 死亡】
【12 神木 唯 剣は拾っていない】
【残り17人】