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―――これは、ホントに現実?

私は、そう思った。

優しかった木こりの友達は、私達を守るために―――死んだ。

いつも微笑んでいた不思議な少女も、私を守るために死んだ。

私は、二人の仇をとるため―――何人もの人を、殺した。

そして今、私の目の前で―――一人の人が、また死んだ。

夢じゃないことぐらい、分かってる。

何度も、何度も―――。

家の中でも、森の中でも――――。

何度も、認識された。

血、銃、叫び声――――。

全部、本物だった。

でも―――。

いつもの生活からの離脱。

信じられるわけが―――なかった。



銃口を、野球マスクに向ける。

(見た限りでは、あの人・・・普通の人じゃない・・・。
 多分・・・私も殺そうとするはず・・・。
 ・・・やっぱり・・・やらなきゃダメ、なのかな・・・)

洞窟の奧にいる男は、こっちを向いているだけで動こうとはしていない。

(・・・・・仕方がない、のかな・・・・)

男が、こっちに足を向けてくる。

(・・・・生きるために、やらなきゃダメ・・・なのかな・・・)

男がゆっくりと、歩き出す。

(・・・私は・・・私は――――)

男が、走り出した。

(やっぱり・・・・・出来ない・・・・)

銃を下ろす。

男が目の前まで来る。

覚悟を、決めた。



―――目の前を、一本の矢が通っていく。

それを避けるため、男が後ろに一歩下がる。

続けざまに、もう一発。

そして、声。

「西に向かって走れッ!」

―――私は、走り出していた。

(怖い、怖い―――)

本当は、逃げ出したかった。

でも、足が動かなかった。

もう諦めていたからかもしれない。

―――私は、走った。

弓を撃った人の来た方向に、ひたすら走った。



―――野球マスクが、唯を追おうとする。

俺は弓を撃ち、注意をこっちに引き寄せる。

思惑通り、野球マスクがこっちを向く。

(・・・それでいい・・・・)

矢を一本、撃てる状態にする。

「おい、野球マスクよ・・・・」

声をかける。

「・・・・黒松達は、どうした?」

野球マスクが口を開く気配は、無い。

「・・・・・なぜ、あの女を殺そうとした?」

それにも、答えようとする気配がない。

野球マスクは、じっとこっちを睨んでいる。

(一体どういうことだ・・・・。
 さっきの連中といい、コイツといい・・・・。
 何も喋らない、不気味な気配だけ・・・・)

突然、野球マスクが動き出す。

「ク・・・・・ッ!」

矢を発射せずに弓を下ろし、横に走る。

野球マスクのナイフが、空に弧を描く。

俺はそのまま洞窟の入り口まで走り、弓を置き剣を拾う。

―――その時、チラッと―――首のない死体が見えた。

野球マスクは、すぐ後ろまで迫ってきていた。

「ウオオオオオオオオオオオオッッッ!!」

振り向きざまに剣を振るう。

野球マスクが、それをナイフの短い刃で止める。

「――――ハッ!」

手を絞り、野球マスクを突き放す。

そのまま両手で縦に剣を振る。

野球マスクはそれをまたナイフで止める。

腕に体重を乗せ、剣を振り切る。

そのまま下から上に、左から右に剣を薙ぐ。

―――が、振り切るときに野球マスクにナイフで切っ先を止められる。

(マズイ・・・・切っ先は・・・力が届きにくい・・・・
 ・・・今押し負けたら・・・・俺の首も・・・・飛ぶ・・・
 ・・・日本刀なら・・・刃に手を乗せることも出来るのだが・・・)

だが、両刃の洋刀では、刃を掴めば自分の手が切れる。

(・・・焦るな・・・。
 こんな時こそ・・・・)

静かに、目を閉じる。

手に、意識を集中させる。

「ハアアアアアアアアアッッ!!」

目を、見開く。

ありったけの力を手に集中し、剣を振り切る。

野球マスクのナイフが飛ぶ。

「―――ヤアッ!」

もう一度、剣を薙ぐ。

―――何かに当たったような感触が、した。

剣が、確かに野球マスクを捕らえた。

見ると、野球マスクの腕から、血が流れていた。

―――俺はその時―――不思議な光景を見た。

―――血がアッという間に止まる。

―――傷が塞がり、腕は元通りになる。

(――――嘘だろ?)

俺は、突きを放つ。

野球マスクは、それを手のひらで受け止める。

返り血が飛んでくる。

野球マスクが、自分から剣を抜く。

剣がぬかれた手は、またもやすぐに流血が止まり、傷が塞がる。

(俺は―――悪夢でも見ているというのか―――?)

―――俺は、退いていた。

―――恐ろしいものから逃れるように、後ずさっていた。

(―――傷が塞がる――――勝てない―――)

野球マスクは、こっちを睨んでいる。

(―――俺は―――ここで殺されるのか―――)

―――俺は、初めて―――恐怖に駆られた。 ―――その時、野球マスクの様子が、急変した。

―――頭を抑え、苦しみに耐えるようにガクガクと震える。

―――だが、視線は相変わらず俺を睨み続けている。

殺気の籠もった目で、指と指の隙間から、見ていた。

「―――グッ・・・・」

(・・・今攻撃をすれば・・・・俺は・・・・返り討ちにあう・・・・)

確証は無かった。

むしろ、相手が弱っているのだからこっちが有利だった。

―――だが、何故か、攻撃はできなかった。

「――――クソッ・・・・!」

弓を拾う。

―――俺は、逃げ出すように、その場を後にしていた。

【49 野球マスク 激しい頭痛】 【35 鋼 毅 葛藤 西へ】 【残り17人】