57 ―――人を殺した。 生き残るためなら、仕方がないと思っていた。 実際、殺すのは簡単だった。 後ろから忍び寄り、鎌を振る。 それだけで、人は死ぬ。 ―――人なんて、無力だ。 ―――秋穂 不作(2番)は、一人森の中を歩いていた。 金属がぶつかり合う様な音を聞き、移動している途中である。 (・・・・・) この島に着てから、彼はほとんど何も考えていない。 ―――ただ―――はじめに、自分の行動を考えただけだった。 自分は、このゲームに乗るのか。 答えは、乗るしかなかった。 理由は、生きるため。 では、人殺しをするのか。 答えは、する。 理由は、生きるため。 では、知り合いが相手だったらどうするか。 答えは、殺す。 理由は、自分が生きるため。 ―――それだけを考え、彼は動いた。 そして、彼は人を殺した。 馬鹿な人だと思った。 島での軽率な行為は、死に繋がる。 そんなことは、誰でも分かっている筈だった。 それなのに、彼は違った。 行動や思考が制限された空間の中で、自由に生きていた。 ――――どうして、そんな行動がとれるのか―――? 彼は、考えそうになった。 だが、彼はすぐに思い直した。 ―――一時の情に左右されてはならない―――と。 ―――そして、彼は鎌を振った。 森が開けた。 秋穂は、藪に隠れながら動く。 ―――アジトの入り口が、近かった。 秋穂が、藪の中に顔を引っ込める。 ―――直後、秋穂の前を男が通り過ぎた。 (・・・・・) 秋穂が、ため息をひとつ吐く。 ―――だが、それも一瞬のことだった。 バッグから砂浜で拾った中華包丁を出す。 バックを置き、右手に中華包丁、左手に鎌を持つ。 藪から、音もなく出る。 ―――後ろから、中華包丁を、投げた。 だが、男は前を向いたままそれをかわす。 秋穂はすぐに鎌を右手に持ち男に跳びかかる。 ―――男が、振り返る。 ―――秋穂の顔が、驚愕の色を示す。 (―――キャプテン――――?) ―――そこまで、だった。 ――――一時の情に左右されてはいけない―――。 秋穂の首は、飛んだ。 ―――薄れゆく意識の中、一つだけ思うことがあった。 (―――人間なんて――――所詮――――) 意識は、そこで飛んだ。 ―――ドイツの博士、ダイジョーブが昔一人の少年を改造した―――。 このファイルを見た私は、すぐに詳細を調べた。 改造された少年の名は、猪狩 進。 交通事故に遭い、入院しているところにプロペラ団が介入。 「野球をもう一度やらせてやる」という条件で拉致。 「野球マスク」という改造人間となる。 甲子園制覇を目的としていた当時のプロペラ団は、彼を聖皇学園に編入させる。 当然優勝すると思われていた聖皇学園は決勝戦で極亜久高校に敗退。 その勝負により、野球マスクの正体が二人の者にばれてしまう。 その後、女医の加藤 理香によって野球マスクは人間に戻る。 現在は、日本初の捕手大リーガーとしてアメリカのレッドエンジェルズで活躍中。 ―――私は、アメリカにいる部下に連絡をとり、猪狩 進の確保を命じた。 数日後、博士に進を見せると博士は大変嬉しそうな顔をしていた。 「一度改造されているだけあって、今までとは躰の質が違う」―――らしい。 ―――そして、彼の二度目の改造は成功した。 精神も普通の人間ほどとはいかないがしっかりとしており、今までは出来が違う。 私は、博士に上出来だと言った。 だが、博士はまだ足りないと言った。 ―――そして、私に一輪の花を見せ、ある話をした。 博士の話をまとめると、こうだ。 花の名前は「しあわせ花」。 彼は通常状態でも人よりはるかに優れた能力を持っているが、それだけではつまらない。 そこで、いわいる「覚醒状態」というものを作ってみた。 この花の花粉を吸うと、精神のリミッターが外れる。 理性を失う代わり、凄まじい力を手に入れることが出来る。 覚醒状態時は破壊理念が精神の全てをしめており、理性は完全に消える。 要は、全てのものを破壊し尽くすということだ。 ――――そのあと、博士はポケットから仮面を取り出した。 その仮面は、残っている理性を最大限に引き出すものらしい。 それにより、普段は普通の人間としてすごせる。 皮膚にしっかりと固定するため、外すことは出来ない。 仮面を付けていても花粉の威力には逆らえず、花粉を吸えば理性は飛ぶ―――。 ――――素晴らしい出来だった。 ある意味、私達は神と言えなくもない。 人を、創ったのだから。 博士は、満足したようだった。 学会に発表することはできないが、自分の考えは正しかった。それだけでいいらしい。 博士は私に完成した5人を渡すと、どこかに行ってしまった。 そして――――私は、5人を活用する手段を考えていた。 【2 秋穂 不作 死亡】 【残り16人】