59 ―――諸君、アンニョンハセヨ。 日本のヨ○様こと、智林 昭雄だ。 ――――何、誰もそんなこと言ってない? うるさい、人の話は黙って聞け! 我輩が最後に出た話は一ヶ月ほど前。 さぞ寂しかったであろう。 だが、もう安心しろ。 残り人数も16人、我輩はその一人。 ―――つまり、だ。 我輩は、パワポケシリーズのベスト16に入ったのだ! ―――え?関係ない? ―――ともかく。 我輩が強く、賢く、カッコイイということが証明された。 ―――まあ我輩、棍棒を持った男以外、誰とも会っていないわけだが。 コラそこ、卑怯者とか言うな! 全く―――近頃のガキは礼儀を知らん。礼儀を。 あー、そこそこ!パワポケ1・2で遊ぶんじゃない!6で遊べ、6で! 大体だぞ貴様ら。 今までのシリーズで、一番人気のある作品を何だと思ってやがる! ――――まあ我輩も知らないわけだが。 ――――そんなことは置いといて、だ。 とにかく、我輩は今ストーリー上でも重要な立場にいる。 何故かって?そりゃベスト16だからな。あっさり死んだらあんまりだろ? 智林優勝説もちらほら出ているそうではないか、ん? まあ貴様らはパソコンの前で指でもしゃぶりながら「智林様〜」とか言っていればいいのだ。 ―――む、お前、何をする。離せコラうわなにするやめ―――― 日が暮れかけていた。 森の中は、BR開始から二度目の暗闇を迎えようとしていた。 ―――アジトから少し離れた森の中。 一本の木の上に、宇宙との交信を終えた智林の姿があった。 夢から目が覚めたように、辺りを見回している。 智林の姿は、下からは見えない。 太い枝の上にディパックも置いてあるため、そこに人がいるという痕跡は無い。 木の下も、一見何もないように見える。 ―――だが、そこには智林特製の仕掛けがあった。 智林は、夜寝ずに行動していた。 誰もいないタイミングを見計らい町に侵入し、必要なものを集めた。 日が完全に昇らないうちに現在の場所にきて、仕掛けを作った―――。 智林の行動は、こんな感じである。 睡眠は、一切とっていない。 ―――それは、罠に人が侵入したときのため。 智林は、ずっと起きている必要があった。 もし失敗すれば、自分の命が危険にさらされる―――。 生きるためにも、休息をとる暇は無かった。 (―――誰もこないのか―――? 何度もこの近くで銃声がしているのだが―――― ん―――――!) 智林は、下を覗いていた顔を引っ込めた。 (―――足音がする――――) 足音は、徐々に近くなってきていた。 (――――いよいよ――――) ディパックから必要なものを取り出す。 (我輩の天才的な仕掛けの、実践だ――――) ―――智林は、ディパックを二つ持っていた。 一つは自分のもの、もう一つはマコンデから奪ったもの。 そして―――片方のバックに、食料や水を集めていた。 ―――葉の間から、時々姿が見える。 (・・・・5・・・4・・・) カウントダウンを始める。 (3・・・2・・・1・・・!) ―――ターゲットが、仕掛けの位置にたどり着いた。 (0!) ―――ターゲットが、突然穴に落ちる。 (落とし穴、成功!) 続けて、智林が食料の入っていないバックを落とす。 それは凄い速さで落ちていき、穴の中に入る。 (石も―――成功か―――?) ―――バックの中身は、大量の石。 そもそもこの作戦は、簡単なものだった。 穴の上にシートをかぶせ、その上に葉っぱを乗せる。 幸い、この島は常緑樹にも落葉樹にも恵まれており、枯葉も隠れる木も簡単に見つかった。 あとは、落とし穴に落ちた人めがけて石入りのバックを落とすだけ。 簡単で、確実に仕留められる方法だった。 ―――相手が、普通の人間ならば。 ―――智林が、木の上から降りてくる。 ―――それは、確認をするためではない。 ―――――――逃げるためだった。 ――――――自分が考えた完璧なトラップを超えてきた、悪魔から逃げるため。 (何だ、あいつは!) 走る。 (何故あの石を喰らって生きている・・・!) 追いかけてくる。 (・・・だが・・・・) 走りながら、微笑む。 (・・・我輩の作戦がそれだけだと思うなよ!) 「ハァァァァァアアアアアアアアッッッッ!!」 急激に加速する。 (見ろゴロー、兄の素晴らしい走りを!我輩は今鳥のように軽やかに走っているぞ!) ―――鳥は走れないが。 ある程度行ったところで、棍棒を持ち振り返る。 「さあ我輩に楯突く愚か者よ、かかって来い!唯一神昭雄様が相手になってやろう!」 威勢良く言い放ち、右手で棍棒を構え、左手に仕掛けてあったロープを持つ。 後ろから追う男は、間も無く追いつこうとしていた。 「―――馬鹿めッ!」 ロープを、強く引く。 ―――走っていた男の足元にロープが張る。 (引っかかった!) ―――相手が転んだところを、棍棒で狙い撃ちする。 これも、簡単な作戦だった。 (張ったロープは3本、鍛えた男でも普通は切れない。この勝負、もらっ・・・!) ――――普通の人間なら、引っかかっていた。 張られたロープは、男の足によって引きちぎられる。 「な、何ッ!」 男は、止まらない。 「クソォッ!」 棍棒を、相手の頭めがけて振る。 ―――体が、腕を降った方向に引っ張られた。 ―――体のバランスが取れない。 ―――重心を動かそうとするが、うまく動かせない。 ―――異常を感じて右腕を見たとき、その腕は―――無かった。 「グ・・・ウオォォォォォオオオオオオオッッッッッ!!!」 痛みと悔しさで、雄たけびを上げる。 男が、智林の腕を投げ捨てる。 「ウ・・・・・・・・ククククク・・・・ハハハハハハ!!」 突然、智林が笑い出す。 「・・・・我輩が・・・こんな奴に負けるとは・・・・・クククク」 地面に座り、あぐらをかく。 「・・・・お前、他の連中に誇るといい、この智林 昭雄に勝ったことをな!ハハハハハハハ!!」 腹の底から、笑っていた。 ――――そして――――智林の首が――――飛んだ。 【25 智林 昭雄 死亡】 【殺ったのは野球マスク】 【残り15人】