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迅雷と鋼の話し合いにより、俺たちはさらに西に向かうことにした。

明日香ちゃんは泣き止んだものの、まだ虚ろな目をしている。

唯ちゃんは普通に歩いてはいるが、疲れが溜まっているのが目に見えた。

―――日出子ちゃんは、いたって普通に歩いている。何事も、無かったかのように。

この場に、迅雷はいない。

アジトの周りにいる連中を集めるために、俺たちとは別行動となった。

―――鋼と俺は、呆然と歩いていた。

迅雷から島の話を聞き、とても動揺した。

話が本当なら―――俺たちに勝ち目は無い。

鋼でさえ、一人と戦うのがやっとだった。

―――それが、五人。

絶望に、打ちひしがれた。

勝つ確立を上げるには、島の人を集めるしかない―――。

全員で行こうとしたが、迅雷に止められた。

『お前らは女子三人を連れて西に逃げてくれ』―――ということだ。

―――俺たちは武器を全て集め、配りなおすことにした。

俺と日出子ちゃん、唯ちゃんが持っていた武器は―――鉄扇、救急セット、マシンガン。

鋼が持っていたのは剣と弓矢、弾の無いショットガンとハンドガン。

迅雷と明日香ちゃんが持っていたのは、プラスチック爆弾と地雷、レーダー。

俺たちは迅雷にレーダーと救急セット、剣を渡し、別れた。

―――そして、歩くうちに―――二度目の夜が来た。






「・・・へ、ヘルガさ〜〜〜ん・・・・」

「・・・情けない声を上げるな、ユウジ」

「そんなこと言ったって・・・またもや一日中歩き付けッスよ・・・?
 いくらプロ野球選手でも・・・疲れるッス・・・」

「・・・・」

ヘルガが、無言で前方を指差す。

「・・・・向こうで足音がする。静かに近づき―――様子を見るぞ」

「・・・」

小角が無言で頷く。

―――夜の森を、二つの影が動く。

「・・・・ねえ、ヘルガさん・・・」

「・・・私語は慎めと言ったはずだが・・・?」

「・・・・ヘルガさん、好きな人っているッスか?」

「・・・・ユウジ、今そんなことを聞くような雰囲気だと思うか?」

「・・・・もし何かあったらもっと聞けない雰囲気になるッス」

「・・・・・答える気は無い」

「・・・ということは『いる』ということッスね」

「・・・・勝手にしろ」

「・・・・そうさせてもらうッス」

「・・・・それにしてもお前は雑談が好きだな」

「・・・・好きってわけでは無いッス」

「・・・・姉の話を一時間以上もする者が言っても説得力に欠けるぞ」

「・・・・姉ちゃんの素晴らしさをヘルガさんにも教えたかっただけッス」

「・・・・普通はそんなに話せんぞ」

「・・・・そうッスかねえ?」

「・・・・!・・・・足音が近くなってきた。ユウジ、頭を下げろ・・・・」

二人が、頭を下げて歩く。

「・・・・ヘルガさん・・・・」

「・・・・なんだ」

「・・・・もし・・・相手が攻撃してきたとしても、銃は撃たないで下さいッス・・・・」

「・・・・何を言っている?」

「・・・・ヘルガさんが・・・人を殺すところなんて、見たく無いッス」

ヘルガが、横に首を振る。

「・・・・私はすでに多くの人を殺してきた。立派な―――人殺しだ」

「・・・・それでも・・・・オレは・・・そんなヘルガさんを、見たく無いッス」

「・・・・今ここで殺さなくても・・・・私が人殺しだということに、変わりは無いのだぞ?」

「・・・・」

ヘルガが、茂みの前で足を止める。

その場にしゃがみ、耳を澄ます。

小角もそれに習い、しゃがむ。

―――二人の目の前を、足音が通り過ぎる。

「・・・・5人、か」

ヘルガが、つぶやく様に言う。

―――やがて、足音が過ぎ去る。

「・・・いいか小角、知り合いがいても・・・大きな声を上げるな」

ヘルガが茂みから顔を出す。

小角も、続いて顔を出した。






「三鷹さん、三鷹さんッスよね?」

突然、そんな声が聞こえてきた。

「誰だッ!」

鋼がこっちを向き銃を構える。

「―――!」

茂みから顔を出した女も、こっちに銃口を向けている。

そして、その横に―――。

「・・・・小角、か?」

「そッス!ショートの小角ッス!
 いやー、奇遇ッス!こんなところで会えるとは・・・むぐ」

隣の女に口を塞がれる。

「・・・・小角、知り合いがいても声を出すなと言ったと思うが?」

「三鷹さんは信用できる人ッス。オレのチームのピッチャーッスよ?」

「・・・・理由になっていないぞ」

「鋼、銃を下ろしてくれ」

俺は、鋼に声をかける。

「・・・大丈夫なのか?」

「・・・・多分、な」

ため息を吐く。

女の子たちは身を寄せ合い、怯えた目で小角たちを見ている。

(・・・・やれやれ・・・)

俺は、小角に近寄る。

「小角、横の女性は?」

「ヘルガさんって言うッス。怖いけどいい人ッスよ?」

「・・・・よろしく」

「綺麗な女性と二人旅、ってか?邪魔したか?」

「そ、そんなんじゃないッスよ!それに声かけたのはオレの方ッスから」

「―――ミタカ、といったか?」

突然、ヘルガさんに声をかけられる。

「ああ」

少しイントネーションが変だが、間違ってはいない。

「見たところ5人で行動しているようだが?」

「ああ、その通りだ」

「・・・・仮にも二人しか生き残れない状況だということは?」

「知ってる」

馬鹿にされている気がする。

「ではなぜそんなに多くの人数で行動している?」

そういうことか。

「状況が―――変わったんですよ」

「―――何?」

「鋼」

自分でも解説ぐらい出来るが、鋼のほうが上手そうだ。

「・・・鋼だ。
 簡単に―――三鷹の言った『状況』について説明させてもらう」

―――迅雷は、まだ戻っていなかった。






―――満月の次の夜。

本来、月はほとんど満月と変わらない姿を見せてくれる。

だが、その夜は違った。

12月30日、夜。

月は雲に隠され、全く見えない。

月が泣くかのごとく、雲から雨が落ちる。

―――島に、雨が降った。






―――葉が生い茂る森の中でも、雨粒は容赦なく降り注ぐ。

―――雨に打たれながら、二人の男が対峙していた。

―――水木 卓(43番)と――――野球マスク(49番)。



――――島は、明かり一つ無い闇に閉ざされていた。

【8 小角 雄二 41 ヘルガ 合流】
【41 水木 卓 49 野球マスク 鋼らとは少し離れた場所で対峙】
【残り15人】