61 ――――レーダーの探知可能範囲はその場から半径25メートル。 ――――その範囲内であれば、電波障害が起こっていない限り有効。 レーダーに、一つの光が見えた。 動いている様子は無い。 (今は、一人でも多くの仲間が欲しい) 私は、その光の方へ歩を進めた。 (・・・・・・・) 不意に、目が開く。 (・・・まだ、生きていたんか・・・・) 腹の辺りが痛い。 (・・・みんなは・・・生きとるのか・・・?) 首を動かそうとする。 (痛ぅ・・・・。頭がクラクラしよる・・・・) 動かしかけた首を戻す。 再び、仰向けになる。 (・・・このまま・・・死ぬんか・・・・) 喉がひどく渇いている。 手を動かし、腹の辺りを触る。 (・・・・ベトベトやな・・・・。血ぃ、出すぎや・・・・) 手を、そのまま空中に上げる。 (・・・はは・・・真っ赤や・・・・) 手は、そのまま力無く落ちてくる。 (・・・・なんで・・・目ぇ覚めたんやろうな・・・・) ―――その時、だった。 近くで、足音が聞こえた。 (・・・・血の匂い・・・・) 最初に感じたのは、それだった。 目の前には、6人の死体。 (―――いや、一人生きているのだから5人か・・・) 私は、まわりをざっと見渡す。 (・・・銃弾を受けているな・・・生きていても、虫の息、か・・・?) 「・・・・そこの・・・アンちゃん・・・・」 「!」 声が聞こえた。 「・・・・いい剣持っとるな・・・・。 それで・・・・ワシを・・・殺してくれんか・・・?」 「・・・・悪いがその願いは聞けん」 (出血がひどいな・・・・。敗血病かもしれない・・・) 私は、ディバックの中から救急セットを取り出す。 「・・・・消毒をする、染みると思うが我慢してくれ」 「・・・そんなものはしなくていい・・・」 男が、私の手をつかむ。 血で濡れているのか、妙に粘ついていた。 「・・・・ワシを・・・・殺してくれ・・・」 同じ事を言ってくる。 私は、無言で消毒をする。 「・・・・・」 男は、それ以上は何も言わなかった。 「傷はそこまで深くない。出血がひどいが、特に異常は無さそうだ。 熱は・・・・無さそうだな」 箱にガーゼをしまいながら、男にそう伝える。 ディバックからパンと水を出し、男の前に置く。 「・・・食え。血が足りないはずだ」 男は、それを無言で受け取り食べ始める。 (なんだ、意外と図々しいのだな・・・) 「・・・名は?」 「・・・・・外藤や」 「・・・気分は?」 「・・・・喉が渇いていた。今は大丈夫だ」 「・・・・では、この惨状について話してもらいたいのだが?」 「・・・・・」 外藤は、黙ってしまった。 私は、一つため息を吐く。 「・・・誰かにやられたのか?」 「・・・そうや・・・。 ワシらは・・・・ワシらは、何の罪も無い・・・。 それなのに・・・それなのに・・・・アイツは・・・撃ってきよった・・・」 外藤が、地面を拳でたたく。 「・・・やった者は?」 「・・・知らん。ワシらを撃った後逃げよったんやないか? クソ・・・・あの青髪めが・・・・・・!」 (青髪?) ――――私には、思い当たる人物が二人いた。 ―――一人は、あの山小屋でクレイモアを持っていた人物。 ――――もう一人は、鋼と同行していた少女―――神木 唯。 「・・・・これから、どうするつもりだ?」 私は、気になっていたことを聞く。 「ホントは死ぬ気やったが、お前に助けられた以上そうも言ってられん。 ―――あの青髪を、捜す。 捜して――ワシが・・・・みんなの仇を取る」 外藤が近くにあった鉄パイプを取り、振る。 「傷が開くぞ、やめておけ」 私は立ち上がり、周りの様子を見る。 (全員知らない顔だな・・・。 武器は・・・使えそうなものはチェンソーと木刀ぐらいか) 私は二本の木刀を手に取り、軽く素振りをする。 (ふむ、やはり洋刀よりしっくりくる・・・・。 剣はしまっておくか) 鞘が無いため、少し危ない。 「一つ聞きたいことがあるんや、ええか?」 パンを食べ、水を全部飲み干した外藤が聞いてくる。 「・・・なんだ?」 「・・・・ワシは、気絶していたから放送を聞いとらん。 ・ ・・・・・誰が死んだか、教えてくれへんか・・・?」 外藤が、顔を伏せながら言う。 「・・・・さあな。私も知らん」 「・・・アンちゃんも聞き逃したのか?」 「いや・・・・・。 ――――放送なんて、行われていない」 「?どういう・・・ことや?」 「・・・・・。 大神が―――死んだ――――」 私は、企画書の内容と―――私たちの目的を、外藤に伝えた。 ―――雨が、降り始めた。 ―――話すことなど、無い。 友人を傷つけた今、すでに失う恐れがあるものは愛以外無い。 相手が誰であろうと、どんな目的を持っていようと――――。 俺は、戦う。 人数を減らすことで、愛の危険が減るなら。 それなら―――言うことはない。 愛と会うまで、それまでは―――― 斧を振ることを、やめない。 ―――先手は、水木だった。 短刀を野球マスクの顔に向け投げる。 野球マスクが、それを軸を変えてよける。 水木が、飛ぶ。 斧を振りかぶり、顔の中心線めがけて下ろす。 マスクは柄を掴み、斧を止める。 マスクのパンチをかわし、足払いをかける。 斧を持つ手を離し、それをかわす。 自由になった斧で空を横に凪ぐ。 ―――フォン――――。 斧は空を切り、水木も反動で動きが止まる。 ―――その時雨によりぬかるんだ地面を踏み、水木の態勢が崩れた。 位置がずれる。 水木のいた場所には、マスクの拳。 態勢を立て直した水木は、服を脱ぐ。 水を含み重くなったそれは、音も無く泥の上に落ちる。 マスクが、落ちていた短刀を拾う。 水木が斧を構える。 ――――第二ラウンドの、始まりだった。 【10 外藤 侠二 島の真実を聞く 迅雷と同行】 【43 水木 卓 49 野球マスク アジトより多少離れた場】 【残り15人】