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今年のモグラーズは、リーグ優勝はならなかったものの好成績を収めたらしい。

―――私がモグラーズを離れてから1年。

私は時々彼のことを思い出しながら、追手との戦いを続けている。

彼――――コナミの事を。







彼と初めに会ったのは、私がコーチになって4年目の冬。

そのころは全く気に留めない選手だった。

くだらない事故で入院したと聞いていたが、全く興味は無かった。

成績が悪く、態度も悪い。

解雇は、時間の問題だった。

―――ところが―――事態は急変した。

突然その選手は練習熱心になり、私の元にもよく来るようになった。

成績も急上昇しだし、チーム内での評判も良くなってきていた。

そして―――私は、そんな彼に興味を持った。

彼の前に、占い師として現れる。

当然―――男としてではなく、女の姿で。

それが、彼との二度目の出会い。



自分の容姿に自信は無かった。

だが、彼はよく私の元に来た。

練習をサボるのはコーチとして感心しないが、女としては嬉しい。

その照れ隠しをするように、私はきつめの言葉で話す。

――いつしか、私達はデートをするようになっていた。

大事な秘密を抱え、それを隠しながら好きな人とデートをする。

胸の奥が痛かった。

いつか、絶対に別れの時は来る。

その時――――私は別れられるだろうか?

彼を、危険に巻き込んでしまわないだろうか?

だが、そんな悩みも―――彼の前では、霞んだ。

今は、幸せな時間を―――。

望みは、それだけだった。



彼は、野球のセンスがあった。

基礎のしっかりしていない体にも関わらず、3年で1軍レギュラーになった。

ある日、練習中の彼に「野球は好きか」と尋ねた。

彼は頷き、そのまま練習に戻った。

―――彼に何かあったと確信したのは、この時だった。

―――占い師として町に顔を出してから6年目の夏。

私は追手が迫ってきているという情報を耳にした。

彼が街中で忍者の格好をした者を見たらしい。

一般人に姿を見られるということから考えて相手は下忍だろうが、油断は出来なかった。

―――時間が、少なくなっていた。



―――そして、事件は起きた。

彼が公園に寄ると、一枚の手裏剣が落ちていた。

彼が遊び心でそれを投げたところ、藪の中に潜んでいた男に当たった。

その手裏剣は毒入りだったため―――男は、死んだ。

そこに現れた私は彼を返すと、久々に―――刀を振るった。

―――次の日、私の元に彼が来たが、真実は語らなかった。

そして―――私は、彼と別れる決意をした。

私の近くにいれば、必ず危険が伴う。

私は―――コーチとしても、恋人としても――――彼と一緒にいては、いけない。

占い業は店仕舞いし、コーチも今期で辞めることにした。

私は――――彼と別れる道を、選んだ。



孤独を選んだ私を待っていたのは、追手の刃だった。

里では一応五本指に数えられていたため、並の忍者には負けなかった。

戦いは大抵夜に起こるので、人の目を気にすることも無い。

初めの頃は、私の攻勢だった。

―――だが、シーズンも終わった10月頃。

里が、ついに強行姿勢をとり出した。

流石に抜け忍一人に上忍は使えないのか、数に物を言わせて来た。

戦況は一気に逆転。私は度々危険な目に遭うようになった。

―――私がそうしている間にモグラーズはリーグ優勝し、日本一への切符を手にした。

日本リーグまでの間、彼はよく私の元に来た。

最近、巨人の小杉のライバルとして有名になって来ており、練習にも磨きがかかっていた。

―――そんな彼を見るうちに、私の心に変化があった。

―――3年前、彼は二軍の落ちこぼれ選手だった。

今は球界を盛り上げるスター選手。

―――彼の秘密は、既に聞いていた。

デートで酔っ払っていた時、あっさりとはいた。

「俺は、小杉と・・・体が入れ替わったんだ・・・」―――と。

実際、その頃の小杉は人が変わったように成績が落ち込み、態度も悪くなったと聞いた。

球界の絶頂から、奈落の底へ。

まさに絶望的な状況だった。

―――だが、彼はあきらめなかった。

スターだった過去に囚われない。

僅かな可能性である『元に戻る』ことを目指し、上へ上へと昇って行く。

そんな彼を見て―――私は、決心をした。

私は、もう逃げない。

里との決着をつけ、過去を断ち切る。

―――私は、彼に秘密を話す事にした。

彼を呼び出し、まず練習をする。

――――だが、そこにも敵はいた。

私は彼を逃げさせ、追手達と向かい合う。

――――重症を負いながら、私は約束の場所へと向かう。

そして―――私は、全てを話した。

埼川 珠子と迅雷 隼人が同一人物だという事。

私の正体は、里から逃げた抜け忍だという事。

そして――――私の、本当の名前。

全てを話した後、彼に別れを告げた。

――――そして、私は走り始めた。







――――私が探しているのは、彼の体の元の持ち主。

(彼とライバルだった小杉・・・・・・)

地面を、一歩一歩踏みしめる。

(――――小杉だけが―――彼を止められるはず)

―――森の中は、どこまでも暗かった。

【残り12人】