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―――冬の島。

―――降り注ぐ雨はやがて雪に変わり、島の色を変えて行く。






雪が目の前をちらつく。

俺は、町で仕入れてきた缶コーヒーを開ける。

二日寝ていないだけあって、流石に疲れが溜まっていた。

(結局、昨日は誰とも会わなかったか)

コーヒーを一気に飲み干すと、缶を投げ捨てる。

ポケットから煙草を出すと、それに火をつける。

気にもたれ掛かりながら、煙を吐く。

(やっぱ朝はこれだな・・・)

「―――煙のせいで、お前の存在がバレバレだぞ?」

(チッ・・・・。厄介な奴がきやがったか)

「フン、モグラーズの糞コーチが何の用だ?」

言いながら、二つの銃を取り出す。

「お前に話したいことがある。―――小杉 優作」

「残念だが俺は話したいことなんかねえんだよ。
 さっさと―――死ね!」

気から飛び出し、銃を撃つ。

迅雷は体の軸をずらすだけでそれを避ける。

「・・・相変わらず血の気だけはあるようだな?」

「・・・テメエに『相変わらず』なんて言われる筋合いはねぇよ」

銃を構えながら、じりじりと間合いをつめる。

「――――なら、この名で呼んでやろう」

「・・・何?」

「――――私はお前に話がある。小杉こと―――コナミよ」

「!」

銃を撃つ。

迅雷はやはり軸だけをずらし、それを避ける。

「何故・・・何故それを知っている?」

「小杉本人に聞いた。酒で酔っていたからな。簡単に話してくれたぞ?」

「・・・あの野郎・・・」

歯軋りをする。

「・・・何の用だ」

見たところ、迅雷は何も持っていない。

体からはみ出して見えるアレは、木刀だろうか。

「言っただろう?話がある、と」

「・・・何の話だ!」

声が自然と大きくなる。

「良い話と悪い話、どちらから聞きたい?」

「どっちでもいい、さっさとしやがれ!」

妙にじれったい。

(俺がモグラーズにいた時はもっときびきびした奴だと思ったがな)

「そうか、では良い話からするとしよう」

「・・・・」

煙草をくわえる。

「・・・大神が死んだ。
 これ以上くだらない殺し合いをする必要は無い」

「・・・・何だと?」

くわえた煙草を、再び手で持つ。

「体に爆弾が埋められてんじゃねーのか?」

「大神のハッタリだ。体中見回してみろ。解剖傷が無い」

「・・・・で?俺にどーしろってんだ」

「慌てるな、二つ目の話が残っている」

「・・・早くしやがれ、馬鹿」

煙草を捨て、足で踏み潰す。

「・・・・大神の最終作戦が実行された。
 5人の改造人間が動いている。
 奴らは―――島にいる人を、全て殺そうとしている」

「・・・・・」

「今、島の人を集めて軍を作っているところだ。
 だが―――戦力に乏しい。
 お前にも協力して欲しい」

「・・・・・」

「――――奴らは島の人全員を殺す気だ。
 お前一人ではかなわない。
 自分の身を考えるなら――――私たちの仲間になってくれ」

「・・・・」

「返事をしろ。
――――どうするんだ」

「・・・俺の質問に答えてくれ」

「質問をしているのは私だが・・・・まあいい。言え」

「大神が死んだという証拠は?」

「定時放送が一回しかないことだ」

「改造人間がいるという証拠は?」

「私が持ってきた大神の企画書に書いてある。
 ―――今は持っていない」

「お前が集めていると言う軍の人間は?」

「鋼、小角、外藤、三鷹、進藤、神木、倉刈―――そして私だ」

「・・・倉刈だと?」

「ん?知っているのか。
 倉刈 日出子――――二十歳ぐらいの女の子だ」

「・・・・親はどうした?」

「・・・・倉刈 仁志のことか。
 彼は―――死んだらしい。三鷹が見届けた」

「・・・・・そうか」

左拳を強く握る。

「男は何人いるんだ?」

「私を含めて5人だ。
 だが―――一人重症で、戦闘は出来ない」

「・・・・そうか」

軽く言い捨てる。

手の中で、軽く銃を回す。

「―――仲間になってやってもいい」

「・・・・そうか。なら―――」

「――――ただし――――」

「・・・」

迅雷が途中で言葉を止める。

「お前という邪魔者を消してから、だがな!」

手で遊んでいた銃を迅雷に向ける。

―――――ダァン!パァン!

二発の違った銃声が響く。

「!」

迅雷は体ごと弾をかわし、そのまま木の陰に隠れる。

「・・・・どういうことだ?」

「・・・秘密を知っている奴がいると邪魔なんだよ・・・・。
 俺は、秘密をうっかり話したが為に地獄の様な日々を過ごした・・・・。
 秘密を知ってる奴は――――厄介なんだよ!」

銃を撃つ。

二発の銃弾は木に当たり、そのまま埋まる。

「出てこいよ!俺を仲間にしたいんだろ?
 俺と勝負して、俺に勝ってみろよ!」

周りに敵がいるかもしれない――――

そんなことは、既に頭の中には無かった。






木の陰に隠れながら、作戦を考える。

――――銃声がなり、木が削られる。

背中の木刀を抜き、右手で持つ。

(・・・・頭に血が上っていては、何事も上手くいかんよ)

しゃがみながら木の陰から這い出る。

小杉は見えないが、それは小杉からも見えないということだ。

「オラオラ、出て来いよ!逃げたのか?腰抜け!」

小杉が吼えている。

(逃げるのもたまには良いものさ)

大回りをするように、小杉にこっそりと近づく。

「木の陰にいるのは分かってんだよ!さっさと出てきやがれ!」

(・・・実際にはお前の後ろだがな)

小杉の後ろ姿を見ながら、そう思う。

(気絶させる必要も無い・・・・)

木刀を静かに構える。

(体勢を崩して、銃を確保すればいい)

「早く出て来いっつってんだろ!」

「――――ならば、出てきてやろう!」

小杉の後ろから飛び出し、木刀を振る。

適度に力を緩め、足に当てる――――

――――はずだった。

―――後ろを向いていたはずの小杉はこっちを見ていた。

木刀を片方の銃で押さえ、もう片方の銃を私に向ける。

――――ダァン――――!

銃声が、耳元で鳴り響く。

小杉の放った銃弾は私の肩をかする。

肩に痛みが走る。

「―――クッ!」

「バーカ、お前の考えなんて読んでんだよ!」

慌てて剣筋を整え、再度振る。

小杉が、もう一度銃を撃つ。

――――ダァン、ダァン――――!

私の振った木刀は元の部分から折れ、柄だけが私の手元に残る。

「――――な――――」

「―――死ねッ!」

小杉が両手の銃を私に向ける。

「――――ハッ!」

小杉の銃を蹴り上げる。

銃は宙を飛び、小杉の後方に落ちる。

「く、クソッ!」

小杉が拳を繰り出す。

それを横から掴み、そのまま捻るように投げる。

「ウオッ!」

小杉が怯んでいる間に、銃を拾う。

「こ、コノ・・・・」

立ち上がった小杉が私の持っている銃を見て黙る。

「・・・・一緒に戦ってもらうぞ」

「・・・・クソッ!」

小杉が地を蹴る。

投げられたせいで、服が泥だらけになっている。

「この銃はみんなの元に着くまで預かっておく」

銃を懐にしまう。

(痛ゥ・・・・。肩から、血が・・・・)

「そうだ・・・・お前に、言っておきたいことがある」

「・・・・・何だよ」

肩から目を離し、小杉を見る。

「―――――改造人間の一人は――――コナミだ」

「―――――何?」



―――雪は、ぬかるんだ地面に当たり消える。

だが――――私の話を呆然と聞く小杉の頭に降る雪は、消えなかった。

【17 小杉 優作 軽傷 21 迅雷 隼人 肩負傷】
【残り12人】