66 ―――冬の島。 ―――降り注ぐ雨はやがて雪に変わり、島の色を変えて行く。 雪が目の前をちらつく。 俺は、町で仕入れてきた缶コーヒーを開ける。 二日寝ていないだけあって、流石に疲れが溜まっていた。 (結局、昨日は誰とも会わなかったか) コーヒーを一気に飲み干すと、缶を投げ捨てる。 ポケットから煙草を出すと、それに火をつける。 気にもたれ掛かりながら、煙を吐く。 (やっぱ朝はこれだな・・・) 「―――煙のせいで、お前の存在がバレバレだぞ?」 (チッ・・・・。厄介な奴がきやがったか) 「フン、モグラーズの糞コーチが何の用だ?」 言いながら、二つの銃を取り出す。 「お前に話したいことがある。―――小杉 優作」 「残念だが俺は話したいことなんかねえんだよ。 さっさと―――死ね!」 気から飛び出し、銃を撃つ。 迅雷は体の軸をずらすだけでそれを避ける。 「・・・相変わらず血の気だけはあるようだな?」 「・・・テメエに『相変わらず』なんて言われる筋合いはねぇよ」 銃を構えながら、じりじりと間合いをつめる。 「――――なら、この名で呼んでやろう」 「・・・何?」 「――――私はお前に話がある。小杉こと―――コナミよ」 「!」 銃を撃つ。 迅雷はやはり軸だけをずらし、それを避ける。 「何故・・・何故それを知っている?」 「小杉本人に聞いた。酒で酔っていたからな。簡単に話してくれたぞ?」 「・・・あの野郎・・・」 歯軋りをする。 「・・・何の用だ」 見たところ、迅雷は何も持っていない。 体からはみ出して見えるアレは、木刀だろうか。 「言っただろう?話がある、と」 「・・・何の話だ!」 声が自然と大きくなる。 「良い話と悪い話、どちらから聞きたい?」 「どっちでもいい、さっさとしやがれ!」 妙にじれったい。 (俺がモグラーズにいた時はもっときびきびした奴だと思ったがな) 「そうか、では良い話からするとしよう」 「・・・・」 煙草をくわえる。 「・・・大神が死んだ。 これ以上くだらない殺し合いをする必要は無い」 「・・・・何だと?」 くわえた煙草を、再び手で持つ。 「体に爆弾が埋められてんじゃねーのか?」 「大神のハッタリだ。体中見回してみろ。解剖傷が無い」 「・・・・で?俺にどーしろってんだ」 「慌てるな、二つ目の話が残っている」 「・・・早くしやがれ、馬鹿」 煙草を捨て、足で踏み潰す。 「・・・・大神の最終作戦が実行された。 5人の改造人間が動いている。 奴らは―――島にいる人を、全て殺そうとしている」 「・・・・・」 「今、島の人を集めて軍を作っているところだ。 だが―――戦力に乏しい。 お前にも協力して欲しい」 「・・・・・」 「――――奴らは島の人全員を殺す気だ。 お前一人ではかなわない。 自分の身を考えるなら――――私たちの仲間になってくれ」 「・・・・」 「返事をしろ。 ――――どうするんだ」 「・・・俺の質問に答えてくれ」 「質問をしているのは私だが・・・・まあいい。言え」 「大神が死んだという証拠は?」 「定時放送が一回しかないことだ」 「改造人間がいるという証拠は?」 「私が持ってきた大神の企画書に書いてある。 ―――今は持っていない」 「お前が集めていると言う軍の人間は?」 「鋼、小角、外藤、三鷹、進藤、神木、倉刈―――そして私だ」 「・・・倉刈だと?」 「ん?知っているのか。 倉刈 日出子――――二十歳ぐらいの女の子だ」 「・・・・親はどうした?」 「・・・・倉刈 仁志のことか。 彼は―――死んだらしい。三鷹が見届けた」 「・・・・・そうか」 左拳を強く握る。 「男は何人いるんだ?」 「私を含めて5人だ。 だが―――一人重症で、戦闘は出来ない」 「・・・・そうか」 軽く言い捨てる。 手の中で、軽く銃を回す。 「―――仲間になってやってもいい」 「・・・・そうか。なら―――」 「――――ただし――――」 「・・・」 迅雷が途中で言葉を止める。 「お前という邪魔者を消してから、だがな!」 手で遊んでいた銃を迅雷に向ける。 ―――――ダァン!パァン! 二発の違った銃声が響く。 「!」 迅雷は体ごと弾をかわし、そのまま木の陰に隠れる。 「・・・・どういうことだ?」 「・・・秘密を知っている奴がいると邪魔なんだよ・・・・。 俺は、秘密をうっかり話したが為に地獄の様な日々を過ごした・・・・。 秘密を知ってる奴は――――厄介なんだよ!」 銃を撃つ。 二発の銃弾は木に当たり、そのまま埋まる。 「出てこいよ!俺を仲間にしたいんだろ? 俺と勝負して、俺に勝ってみろよ!」 周りに敵がいるかもしれない―――― そんなことは、既に頭の中には無かった。 木の陰に隠れながら、作戦を考える。 ――――銃声がなり、木が削られる。 背中の木刀を抜き、右手で持つ。 (・・・・頭に血が上っていては、何事も上手くいかんよ) しゃがみながら木の陰から這い出る。 小杉は見えないが、それは小杉からも見えないということだ。 「オラオラ、出て来いよ!逃げたのか?腰抜け!」 小杉が吼えている。 (逃げるのもたまには良いものさ) 大回りをするように、小杉にこっそりと近づく。 「木の陰にいるのは分かってんだよ!さっさと出てきやがれ!」 (・・・実際にはお前の後ろだがな) 小杉の後ろ姿を見ながら、そう思う。 (気絶させる必要も無い・・・・) 木刀を静かに構える。 (体勢を崩して、銃を確保すればいい) 「早く出て来いっつってんだろ!」 「――――ならば、出てきてやろう!」 小杉の後ろから飛び出し、木刀を振る。 適度に力を緩め、足に当てる―――― ――――はずだった。 ―――後ろを向いていたはずの小杉はこっちを見ていた。 木刀を片方の銃で押さえ、もう片方の銃を私に向ける。 ――――ダァン――――! 銃声が、耳元で鳴り響く。 小杉の放った銃弾は私の肩をかする。 肩に痛みが走る。 「―――クッ!」 「バーカ、お前の考えなんて読んでんだよ!」 慌てて剣筋を整え、再度振る。 小杉が、もう一度銃を撃つ。 ――――ダァン、ダァン――――! 私の振った木刀は元の部分から折れ、柄だけが私の手元に残る。 「――――な――――」 「―――死ねッ!」 小杉が両手の銃を私に向ける。 「――――ハッ!」 小杉の銃を蹴り上げる。 銃は宙を飛び、小杉の後方に落ちる。 「く、クソッ!」 小杉が拳を繰り出す。 それを横から掴み、そのまま捻るように投げる。 「ウオッ!」 小杉が怯んでいる間に、銃を拾う。 「こ、コノ・・・・」 立ち上がった小杉が私の持っている銃を見て黙る。 「・・・・一緒に戦ってもらうぞ」 「・・・・クソッ!」 小杉が地を蹴る。 投げられたせいで、服が泥だらけになっている。 「この銃はみんなの元に着くまで預かっておく」 銃を懐にしまう。 (痛ゥ・・・・。肩から、血が・・・・) 「そうだ・・・・お前に、言っておきたいことがある」 「・・・・・何だよ」 肩から目を離し、小杉を見る。 「―――――改造人間の一人は――――コナミだ」 「―――――何?」 ―――雪は、ぬかるんだ地面に当たり消える。 だが――――私の話を呆然と聞く小杉の頭に降る雪は、消えなかった。 【17 小杉 優作 軽傷 21 迅雷 隼人 肩負傷】 【残り12人】