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「・・・鋼、こいつ等が――――」

「・・・・ああ。―――サンプルどもだ」

「おいおい・・・・目がヤバイで、こいつ等・・・」

「野球マスクとは全然違うッスね・・・」

俺たちの目の前には、3人の人間。

どれも帽子の奥で目をぎらつかせ、こっちを睨んでいる。

「・・・・どうするよ・・・」

「・・・俺一人で短時間の間凌ぐことは出来た。
・・・・勝算は・・・・ある」

「ホントにこんな奴ら相手にしたんか・・・?
 人数も3人しかおらへんで・・・・?」

「そうッスよ!
 いくらサンプルとは言え・・・野球マスクと大して変わらないんスよね・・・・?」

女の子達を背中に隠し、扇子を構える。

(確かに・・・話ではサンプルは4体・・・・)

「・・・三人でこいつ等の相手をする。
 ―――外藤、女子達を連れて先に西へ行ってくれ」

「な、なんでワシが!」

「怪我してるじゃないですか。
 もしもう一人が待ち伏せしてたら・・・女の子達だけじゃダメですよ」

「そッス!
 ここは俺たちに任せて、先に行くッス!」

「お、お前ら・・・・」

鋼が銃を構え、小角が剣を構える。

「・・・・分かった。
・・・先に行っとる。
――――絶対、追いつけよ!」

外藤さんが背を向けて走り出す。

女の子たちが俺達に声をかけてから、それに続く。

4人の姿が、だんだん小さくなる。

「・・・なーんてカッコつけちゃったけど・・・・」

「・・・・ホントに勝てるんスかねえ・・・?」

「・・・3人だったのが救いだ。
・・・追い払うだけでもいい。
―――生き残れ」

三人が等間隔に広がる。

目の前の三人も、一人一人と向かい合う。

(しかし・・・・。
 話には聞いていたが、ホントにこんな人たちが・・・。
 2人は知らないが、1人は―――モグラーズのコナミ選手じゃないか・・・)

突然、大神の顔が頭に浮かぶ。

(他の人はどうか知らないが、こんな大物選手を・・・改造?
 来期からは当然プロなんか・・・無理だよな。
 どういう神経してやがる・・・・!)

「――――来るぞッ!」

鋼の声が、頭に響く。

――――目の前の男が、跳びかかって来た。






―――野球マスクは、あらゆる面で一般人を超越している。

まず、驚異的な回復力。

細胞が固体単位で再生をするため、実行不可能な状況は無いと言っていい。

当然頭部の再生も可能だが、マスクまで復元することは出来ない。

マスクは彼の構成の象徴でもあり、そこに人間では不可能な様々な能力を集結している。

また、マスクは彼の運動能力をある程度制限している。

これは極度の筋力などにより逆に自身を傷つけるのを防ぐためだ。

マスクの破壊は唯一彼の理性を戻す方法であり、命を奪う手段でもある。

頭部を胴体と離す事は再生能力を止めることは出来るが、彼の動きを止める事は出来ない。

マスクの無い彼はただの殺人鬼であり、それ以外の何でもない。

身体能力の箍が外れるため、殺すことはまず不可能と考えてもいい。

―――サンプルと野球マスクには、いくつかの違いがある。

一つ目は、サンプルは攻撃的な知性しか残っていないが、野球マスクにはしっかりとした戦闘理性がある。

防御はもちろん、戦術を考えることもできる。

二つ目は、その戦闘能力。

サンプル1人なら、よく鍛錬をした人間でも倒すことが出来る。

だが、野球マスクは違う。

鍛錬をした者であっても、打ち破ることは不可能と考えていい。

もっとも、命を賭けた場合は異なるかもしれないが。

三つ目は、死亡判定。

野球マスクの死亡判定はマスクの決壊である。

サンプルは体の内部にある「再生装置」の破壊となっている。

「再生装置」は脆く、銃弾が当たれば壊れる。

他にも激しく叩く、高熱で焼くなど方法がある。

「再生装置」を仮面に変えたことが成功の秘訣だったのは言うまでも無い。

簡潔に言えばこんなところだ。

―――――この性能をまとめながら、私は一つの事を考えていた。

この実験の成果を利用する――――。

5体を東京に離してみるのも面白いが、政府が兵器などを使い出すとつまらなくなる。

そこで考えたのが、政府を介入させないで殺し合いをさせることだった。

人同士の醜い争いを見ながら、実験の成果を試す。

この島を利用することができ、何より面白そうだった。

まず、人を集める。

適当に集めても良かったのだが、それでは「人間ドラマ」が無い。

そこで私は、サンプルの関連者を集めることにした。

集めていて驚いたのが、「パワプロ」と言う人物ファイルだった。

前に見た時は「死亡」となっていたのだが、亀田の手によって生き返ったらしい。

私は彼の関係者も集め、50人のファイルを作った。

当然、参加者の中には「パワプロ」と「野球マスク」も入っている。

次に、ルールを考える。

ここまでは簡単だった。

有り得そうなパターンを予想し、対策を考える。

そして、一つの問題に突き当たった。

サンプルたちをどのタイミングで放すか、という事。

初めから放したのでは、「人間ドラマ」が見られない。

途中から放せばいいのだが、後始末が大変面倒臭い。

部下にやらせればいいのだろうが、部下に崇高なものを触らせる気は無い。

―――そこで考えたのが、私の命を捨てること。

――――いや、捨てるは言い方が悪い。

捧げる、と言った方が正しい。

―――この世の中には、いい加減ウンザリしていた。

手に入れたいものは何でも手に入る。

やりたい事など、既に存在しない。

私は、人を創った。

そして、人の命を握ろうとしている。

―――これ以上、この世にいてやる事など、無い。

サンプルを放す。野球マスクを覚醒させる。

後の事など、私の知ったことではない。

私は、最高のシナリオを書き上げた。



そして―――――物語は、シナリオ通り進む。

【残り12人】