69 「・・・・滑るで、気いつけえ」 鉄パイプを杖代わりにしながら、ワシが先行する。 「・・・・・」 その後ろから女子が3人、ゆっくりと続く。 ―――銃弾は、未だに体に埋まったままだ。 出血は止まってはいるが、痛みは残っている。 体を動かすと、弾が当たった部分が疼く。 杖が無いと、ホントに倒れるかもしれない。 (・・・・今は・・・・止める人は、いない) 実際は女子が2人いるが、その気になれば女の2人ぐらいどうって事無い。 (・・・・仇をとるなら・・・今、や) ワシは、後ろからついて来る神木を見る。 (・・・・・やれば、ワシはみんなと顔を合わせられなくなる) 三鷹や進藤の顔が、一瞬頭をよぎる。 (・・・・しかし――――――) 目頭が熱くなり、目を閉じる。 (ワシは、ワシは―――――!) 「・・・お前は目を瞑って歩けるのか? まさか・・・・「心眼」を会得しているのか!?」 「うおっ!!」 目の前には、迅雷の顔。 「大声を出すな、馬鹿。 どこに敵がいるのか分からんのだぞ」 迅雷の後ろには、少し前テレビでよく見た小杉選手。 「おい、そいつは・・・・」 「・・・・・」 小杉は、黙ったままだ。 「自己紹介ぐらいしろ」 迅雷が小杉を小突く。 「・・・・小杉だ」 ぶっきらぼうにそれだけ言うと、そっぽを向く。 「ワシは外藤や。よろし―――」 差し出した手は、強く小杉に返される。 「―――痛つゥ!何するん!」 「うかつに手を出すのが悪い」 「な、なんやて!」 ワシと小杉の間に、迅雷が入ってくる。 「そこまで、だ。 ―――外藤、鋼達はどうした?」 「サンプル達と戦争や。 なぜか相手が3人やったから、ワシは女のお守りや」 「――――お守りは酷いんじゃないの、お守りは?」 「!」 後ろからの声に、慌てて振り向く。 「外藤さん、進むの遅すぎッスよ? こんな早く追いつけるとは思わなかったッス!」 「怪我人だから仕方あるまい。 それより―――迅雷、戻ったのか」 3人は特に慌てた様子も無く、普通に話している。 三鷹は女子と、鋼は迅雷と、小角は小杉と話している。 (・・・・ん?) 話に熱中している3人を見ながら、違和感を覚える。 (・・・・なんや?武器はみんな持っとるし・・・・) 3人とも何かがおかしい。 (・・・そうか、動作か・・・・。動作がおかしいんやな?) そう考えると、3人とも動きが多少ぎこちない。 中でも一番ぎこちないのは三鷹。 (女と話すとき、あいつは良く身振り手振りをしよる) 三鷹が言うには、その方がココロをゲットできるらしい。 (だが・・・その動きが、弱い。 ・・・・まさか・・・・) 三鷹に近づき、その腕を掴む。 「あいでででででででッ!!」 「う、うるさいわボケェッ!」 突然耳元で大声を出され、耳がツーンとする。 「と、突然何するんですか!」 「・・・・三鷹」 三鷹の問いを無視し、こっちから問いかける。 「・・・ワシは腕を掴んだだけや。 別に曲げたわけでもない。ただ掴んだんや」 「・・・・」 「・・・腕見せろ」 ワシが一歩近づくと、三鷹が一歩下がる。 「・・・・遠慮します。ちょっとさっき捻挫したんでね。 さっきのは過剰反応でした」 「・・・・ホントにそうか?」 ワシがまた一歩踏み寄る。 「・・・・別にどうってこと無いなら見せろ」 「遠慮します。 どうってこと無いから見せなくてもいいですよね?」 三鷹が一歩下がる。 「・・・」 「・・・・」 睨みあう。 「ええぃ、何でもいいから早う見せい!」 「うわっ!」 肩を掴み、こっちに引き寄せる。 無理矢理袖をまくり、腕を見る。 「うわぁ・・・・こいつは・・・・」 「・・・・ッ・・・・」 三鷹の腕は酷く腫れ上がっていて、どす黒くなっていた。 「み、水持ってきいや!」 「・・・・・」 「三鷹、お前・・・・他にもあるんやないか? 足とか、胴とか・・・・」 足の裾をまくり、足を見る。 「・・・・・やっぱり、か・・・・・」 「外藤さん、水です・・・・」 進藤から渡されたペットボトルの中身を全て腕にかける。 「・・・・まずいな・・・・。 おい、他の奴は・・・」 迅雷に尋ねる。 ―――すぐに同様に2人が調べられ、2人にも傷が見つかった。 不幸中の幸いか他の2人の傷はそこまで大したものではなかった。 「・・・・クソ、今は処置のしようが無いわ・・・・!」 鋼の話によれば、奴等には1対1という意識が無いらしい。 三鷹は3対1の状況になり、負傷。 その時に鋼と小角が攻撃をした。 軽傷を負ったのもその時である。 「・・・・悪いが、この銃ももう弾が無い。 迅雷、そっちはどうだ?」 鋼が迅雷に話しかける。 「こっちは大丈夫だが・・・・残量が少ないな。 ―――小杉、予備マガジンはどうした?」 「ああ?そんなもんねーよ! 全部俺が使ったぜ。色々大変だったからな」 「な・・・・」 鋼の口がぱっくりと開く。 迅雷もそうなのだろうが、包帯があるため確認できない。 「と、なると・・・対人用で使えるのは・・・。 ―――剣と弾の少ない銃二丁、弓に・・・プラスチック爆弾と地雷、か」 「プラスチック爆弾と地雷は・・・無理じゃないッスか? どっちかって言うと仕掛ける武器ッスよね・・・・」 「だから・・・さっさと西の町に行って、陣をしけば・・・」 「怪我人が言ったってダメや。 その足、動くのだけでも大変やったんやないか?」 「う・・・・・」 場が沈黙する。 女子は当然会話に入れないし、小杉は入る気も無さそうだ。 「・・・・問題は武器、ということか」 迅雷が立ち上がる。 「何する気や?」 「・・・・大神のアジトへ行って来る」 「え!ま、待つッス!」 小角が引き止める。 「迅雷さん動きっぱなしッスよ? いい加減休んだほうがいいッス!」 「・・・そうだな。アジトなら俺が―――」 「―――島の中を動くのは私が一番早い。 このぐらいは慣れている。 ―――時間が無い。私は行くぞ」 「あ、ちょっと―――」 小角が止める間も無く、迅雷が去る。 「・・・・行っちまったッス・・・・」 「・・・・せっかちな忍者ヤローだぜ、ケッ!」 小杉が煙草を取り出し、火をつける。 「小杉、ワシにもくれ」 「呼び捨てで呼ぶな」 「・・・・小杉君、ワシに煙草をくれ」 「・・・"様"だ」 「・・・・もうええわ」 ため息交じりに、ワシは空を眺める。 「・・・なんや、もう暗いやんけ・・・」 その呟きを聞いてか、鋼がみんなに言う。 「・・・仕方が無い、今日はここで泊まる」 「え、何言ってるッスか! こんなところで―――」 「怪我人がいるし、みんな疲れている。 お前も休んでおけ」 小角にそう言うと、鋼はその場に座る。 「・・・ま、得策やな」 ワシも地面に座りこむ。 三鷹や女子は既に寝たらしい。 (早いご就寝やな) そう思いながらワシも目を瞑る。 (せめて・・・・起きるまでは・・・・) 疲れていたのか、だんだん意識が遠くなる。 (・・・・平和な・・・・・・じかん・・・・・) 【45 三鷹 光一 腕と足 重症】 【時間は夕方】 【残り12人】