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(・・・・・ここは・・・・?)

俺は辺りを見回す。

(・・・いつ、俺はこんな場所に来た・・・・?)

今までのことを思い出す。

(確か・・・俺は――――
 ――――そうだ。
 俺は―――大神を倒した。
 みんなの力を借りて――――大神を、倒した)

その時の記憶が、だんだんと蘇ってくる。

(その後・・・・変な花粉らしいものに包まれて・・・・。
 野球マスクに、刺された。
 ――――あれ?俺って・・・・)

全てを思い出した後、ハッと気づく。

(・・・死んだんだよな?)

「あ、アニキーーー!」

「・・・・む?」

聞き覚えのある声が、突然聞こえる。

「アニキ、どうしてここに?」

「ジロー!お前・・・・生きてたのか?」

ジローの肩を掴み、真面目に聞く。

「いやいや、逆ですよ。
 ――――アニキが死んで、こっちに来たんですよ!」

「は・・・・?」

俺は、再び辺りを見回す。

霧がかかっているようにぼんやりしているが、そこが大神の部屋でないことは分かった。

「じゃ、じゃあお前は・・・・」

手を広げ、大声で言う。

「ここが・・・・あの世だとでも言うのか?」

「・・・それ以外に説明のしようが無いですから」

「う、うーむ・・・・」

腕を組み、唸る。

(これはひょっとして・・・俺の夢か?
 俺はまだ生きている・・・・そういうことなのか?)

自分の頭を殴る。

「な、何してるんですか?」

「――――大方・・・・夢だとでも思っているんじゃないのか?」

突然、聞きたくも無い声が聞こえる。

「お、お前は――――」

霧の中から、ぼんやりと姿を出す。

「大神!」

「ククク・・・私を殺すのは誰かと思っていたが・・・お前だったか・・・」

「あ、やっぱりアニキはやったんですね!」

ジローが嬉しそうに言う。

「ここは・・・・言うなら―――天国。
 死者の国、だ」

「な・・・・」

大神が笑う。

「私の野球マスクは・・・作動したようだな」

「な、何のことだ・・・?」

「ここから下の様子は分からないが・・・・お前が死んだことで分かる。
 お前は―――野球マスクに殺された。そうだろう?」

「え!そうなんですか、アニキ!」

大神とジローが問いかけてくる。

「・・・・そうだ」

唸るように答える。

「クククク・・・・それでいい。
 私の計画は――――成功だ」

「な、何を・・・何を言っているんだ!」

「・・・死人に説明する必要は無い」

「む・・・・」

大神に言われ、俺は黙ってしまう。

「・・・だが、良い事を教えてやろう。
 もっともお前が知ったところで何ともならないのだが・・・・。
 ――――野球マスクを殺せる武器は、パソコンと手裏剣だ」

「・・・・・は?」

「企画書にもこれだけは書かなかった・・・・。
 パソコンは仮面の機能を停止させ、手裏剣には奴にだけ効く毒が塗ってある」

「1人で喋ってねえで、説明しやがれ!」

「爆弾でも殺すことは出来るが・・・至近距離で無いと効かん。
 ――――1人、犠牲者が必要になる」

「おい、聞いてんのか!」

「・・・・私が話しているんだ。クズはそんな事も分からんのか?」

「あ、アニキを馬鹿にするな!」

ジローが大神に飛び掛り、殴りつける。

「この野郎・・・!
 人の命を何だと思ってやがる!
 勝手に弄びやがって・・・・!」

大神が倒れる。

俺はまだ殴ろうとするジローを止める。

「何で止めるんですか!俺はまだ――――」

「・・・大神の答えを聞こう」

大神がゆっくりと起き上がり、不敵に笑い出す。

「ククク・・・命を何だと思っているか、だと?」

「・・・・・」

「命など――――所詮は、使い捨てだ」

「・・・・!」

「お前らクズどもは知らないと思うが・・・人間はな、命を削りあいながら生きてきたのだ」

「・・・なんだと?」

「犠牲者を出し、その屍の上に私達はいる。
 文明の発達の裏には、いつでも犠牲があった。
 ―――もしこのゲームが文明の発展のためだとしたら・・・どうなる?
 私は普通の事をした、そういうことにならないかね?」

「う・・・」

ジローが唸る。

「・・・俺は―――そうは思わない」

口を開く。

「もしこれが発展の為だったとしても・・・お前の罪は消えない。
 何の罪も無い人を殺した行為が普通?何を言っているんだ。
 お前が何をしたかなんて知らないが―――お前が殺人者である事に、変わりは無い」

「・・・・・フン」

大神が俺達に背を向ける。

(・・・・?何だか・・色が薄くないか?)

気のせいか、大神が透けて見える。

目をこすってみるが、それは直らない。

「・・・お前らとの雑談も・・・ここまでのようだ」

大神が言う。

「最後に言っておこう。
 ―――――私は、正しい。
・・・それだけだ」

大神の姿が、霧の中へと消える。

「・・・・お前が・・・正しい?」

「アニキ・・・」

「ハッ、勝手に言ってやがれ・・・・バーカ」

俺も大神に背を向ける。

「さて、ジロー・・・・」

「何スか?」

「・・・・これから、何をする?」

「・・・そうですねえ・・・・」

2人で悩む。

「・・・とりあえず・・・・」

「とりあえず?」

「―――走ってみるか」

「―――ヘイ!」

2人で、走り出す。

(どっかに行けば―――面白いこと、あるだろうしな)

―――俺は、スピードを上げた。







「――――愛!」

俺は、その後ろ姿に叫ぶ。

「・・・・水木さん!」

その人物―――野々村 愛が、俺に近づいてくる。

「良かった・・・一人で心細かったの」

「・・・・そうか」

「あ、でも2人とも死んじゃったんだから良くないか・・・・」

「・・・・・そうだな」

俺の服についた血は、いつの間にか消えていた。

「・・・・?ねえ、水木さん?」

「ん?何だ?」

「何か・・・水木さんの体、透けて見えるんだけど・・・」

「・・・・・!」

自分の手を見る。

確かに、心なしか透けて見える。

(・・・・まさか・・・・・)

「・・・なあ、愛・・・・」

愛の頭に、手を置く。

「もしここが天国なんだとしたら、俺は・・・・ここにいられないんだ」

「え・・・・?」

「・・・俺の体が透けているのは・・・その時が近づいている証拠かもしれない」

「ど、どういうこと・・・?」

頭から手を離し、愛の目を見る。

「俺は―――人を殺したんだ。愛を守るという名目で。
 ―――コーチや、倉刈を・・・」

「そ、そんな・・・・」

「倉刈はまだ生きているかもしれないが・・・・俺には分からない。
 ―――とにかく、俺は人を殺した」

「嘘よね、嘘って言って!」

「・・・嘘だったらどんなに良いことかな・・・。
 消えなくて済むんだから、な・・・」

俺の体は、かなり薄くなってきていた。

ほとんど向こう側が見える。

「そんな・・・・お願い・・・消えちゃダメ・・・・」

「古沢さんとかいるだろ?お前は1人じゃない。
 捜してみろよ?」

「でも、水木さんの代わりはいないんだよ?
 他の人はいて、私は1人じゃない、でも・・・水木さんは、1人・・・・」

「愛・・・・」

薄くなっても、体には触れられるらしい。

もう一度頭に手を乗せ、クシャっと撫でる。

「――――そろそろ、かな――――」

体が宙に浮くような感じがする。

「え・・・?」

「―――じゃ―――ま―――つか――――」

声は発しているが、上手く音にならない。

「―――きさん―――み――――ん――――」

愛の声も、遠く聞こえる。

(・・・・じゃあな、愛――――)

――――俺の体は、消えた。

【残り12人】