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(――――ここは――――どこだ?)

一歩一歩足を踏み出す。

足の痛みは無く、不思議に手の痛みも無い。

ぼんやりとした空間を、ただただ、歩く。

(―――俺は――――寝た。そう――――寝ただけ)

辺りをきょろきょろ見回す。

何も無い。

というより、『辺り』という感覚が無い。

どこまでも続いていきそうな、そんな空間。

そして―――声が聞こえた。

「――――久しぶりだな、三鷹――――」



その声は、懐かしい―――だが、頭の中には鮮明に残っている声だった。

「キャプテン!」

どこからとも無く、キャプテン――――パワプロが姿を現す。

「キャプテン、キミは確か――――」

「・・・ああ。俺は死んでる」

「ならここはどこなんだい?
 まさか天国とか答えるんじゃないだろうね?」

「・・・いや、これは多分・・・お前の夢の中じゃないか?」

「・・・・ということは、キミはこれが全部僕の空想だと言いたいのかい?」

「いや、俺はホンモノだから」

キャプテンは慌てて顔を振る。

いつも一人称は『俺』なのだが、キャプテンの前では『僕』になる。

「・・・で、キャプテン。
―――何の用なんだ?
まさか出てきただけとか言うんじゃないよな?」

「ああ、そうそう・・・・。
――――頼みがあるんだ」

「・・・・頼み?」

「ああ。外藤さんとか智美でもいいんだけど・・・先輩に迷惑かけるわけにはいかないしな」

「・・・・何なんだい?」

「――――進藤 明日香――――覚えてるよな?」

「当然だろ。
 今もそばにいるぜ」

多少誤解を招くような言葉で言う。

「・・・・なら話は早い。
 ――――彼女を――――守ってやってくれ」

「・・・・・」

「知っての通り、明日香は心臓がわるい。
 俺が見た様子じゃ、今もそこまで良くなってない。
 ――――今、お前がどういう状況にいるかは知っている。
 ――――誰が来ようと、明日香だけは―――守ってくれ」

「・・・言われなくても・・・・分かってる」

俺はそっぽを向きながら、答える。

「そうか。
・・・・安心したよ」

その言葉を言うと、急にキャプテンの体が透けだす。

「きゃ、キャプテン?」

「・・・いつまでも人の夢の中にいるわけにはいかないからね・・・・」

「ど、どこ行くんだよ!」

「・・・・帰るんじゃないかな?俺にも分からない」

「帰るって・・・・どこへ!」

「・・・・・あの世――――」

キャプテンが手を振りながら、姿を消す。

「キャプテン!」

俺はキャプテンのいたところに走っていき、辺りを見回す。

「・・・・・・・」

―――そこには、既に何も存在しなかった。








「さて、俺が伝えたいことは伝えたな・・・・」

三鷹の夢から帰ってきた俺は、大きく伸びをする。

「あーあ、それにしても・・・何で俺は二回も死んでるんだ・・・・?」

記憶は、復活する時に失ったらしい。

「―――それを言うなら『一回生き返った』と言って欲しいでやんすねえ?」

隣に、殺気に近いものを感じる。

「か、亀田君!」

「ひどいでやんすパワプロ君!
 親友であり命の恩人でもあるオイラを殺すとは!サイテーでやんす!」

「な、何を言ってるんだ!
 キミが明日香を殺そうとしていたから、やむを得ず―――」

「パワプロ君は『幼馴染』と『親友』で、幼馴染を取るでやんすか!」

「・・・・『明日香』と『亀田君』なら明日香を取るけど」

「ムキー!ヒドイでやんす!
 オイラは許さないでやんす!」
 オイラの野望は今回も阻止され・・・頭にくるでやんす!」

「・・・そういえば、『野望』って優勝のことかい?」

「そうでやんす!
 そのためにオイラはわざわざ危険を冒してまで――――」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

亀田君を殴る。

「な、何で突然殴るでやんすか!」

「いや、時が止まってたからつい・・・。
 ――――そうじゃなくて、続きを言えよ!気になるじゃないか!」

「・・・・パワプロ君には関係無いでやんす」

「・・・・まさか、人を殺したんじゃ・・・・」

「・・・そ、そんな怖いことはしてないでやんす・・・・」

「・・・・ホントかい?」

「・・・・嘘だったでやんす」

亀田君を殴る。

「ゴメンナサイでやんす・・・。
 悪気は無かったでやんす・・・・」

「・・・あれ?
 ならどうして亀田君が天国に・・・・?」

「それは多分・・・・オイラの気が済んでないからでやんす!」

「・・・気が済んでいない?」

「オイラ、パワプロ君と決着つけてないでやんす!
そのことが心残りだからでやんす!」

「君との決着は一回つけただろ?
 ほら、人間にもどる前の・・・・」

「あんなのは無効でやんす!
 パワプロ君はサイボーグだから卑怯だったでやんす!」

「・・・・ガンダーロボは?」

「悪のロマンだからいいんでやんす」

「・・・・はぁ・・・・・。
・・・・もういいよ」

「よくないでやんす!
 さ、決着をつけるでやんす!」

「・・・・何で?」

「野球でやんす!」

亀田君がどこからとも無く野球道具を出す。

「・・・・どっから出したの?」

「オイラには秘密がたくさんあるんでやんす!
 さ、勝負でやんす!」

「・・・分かったよ」

俺はボールを持ち、亀田君から離れる。

「――――おーい、キャプテン!」

「・・・ん?」

遠くで、聞き覚えのある声がする。

「あ、あれは!・・・でやんす」

「村上君に水原君・・・それに平山君・・・」

「ひさしぶりじゃの、パワプロ」

「全然変わってないみたいだね?」

「あ、亀もいるじゃねーか!」

「は、は、は・・・・・みんな、ここに来たって事は・・・・?」

「どうやら銃で撃たれたみたいだ。今は何とも無いけど・・・」

「おう、酷い目にあったんじゃ。まったく・・・大神、今度会ったらぶん殴っちゃる!」

「まあまあ、過ぎたことは忘れてさあ・・・・。
 亀とキャプテンがいいもの持ってんじゃん。
 久しぶりにやろうぜ!」

「野球か。久しぶりじゃのう」

「人数が少ないけど・・・まあ何とか出来そうだね」

「よし、じゃあ今度こそ・・・」

俺が再びみんなに背を向けた時、小さく何かが見えた。

「・・・・・あれは・・・・?」

「―――パワプロさん、やっと見つけましたよ!」

「きょ、教祖・・・?」

「ネロとたかゆき、バッタ男もいるでやんす!」

「うー、ネロも野球やる!」

「ヒーローには運動神経も必要バッタ。俺もやるバッタ!」

「おいパワプロ、俺がお前より優れているところを今日こそ見せてやる、覚悟しろ!」

「ピッチャーだったら私がやりますよ!
 小説ばかり書いてて体を動かしてなかったんで、丁度いいですよ」

突然人数が増えて、辺りはうるさくなる。

「ははは・・・・みんな来ちゃったのか・・・・」

力無く笑う。

「・・・・・過ぎたことを考えても仕方が無い、か」

空を仰ぎ、深呼吸をする。

「――――よし、やるか!」

俺はボールを教祖に渡し、バッターボックスに向かい走った。

【残り12人】