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「――――見えてきたぞ!」

先頭を進む鋼が、声を上げる。

最後尾を進む俺と小角には、まだ見えない。

腕と足の怪我は、酷いものだった。

出血こそないものの、動くだけで激痛が伴う。

寝る前より、確実に酷くなっていた。

「三鷹さん、着いたらしいッスよ!」

小角が声をかけてくる。

「ああ、聞こえてる」

俺の足取りは、遅く、重い。

心の中では、ずっとあの夢のことを考えていた。

(『明日香を―――守ってくれ』か・・・・)

もちろん、初めからそうする気だった。

だが、その時の心構えは今とは全く違うものだった。

女の子たちを守り、高感度アップ――――。

だが、キャプテンは違う。

死人の身――――既に高感度も何も無い。

それでも、1人の女の子を守ろうとしている。

(・・・アイツ・・・バカだよな・・・・)

キャプテンの顔が、目の前に浮かぶ。

野球バカで、女の子付き合いも下手で、くだらない事であっさりと死んだ男。

―――それでも、正義感だけは人一倍あった。

(死んでまで・・・・人の心配すんのかよ・・・・・)

明日香ちゃんを見る。

前を見ているため、顔は確認できない。

(・・・・そんなに人の心配がしたいなら・・・・死ぬなよ・・・・!)

思わず足が止まる。

「?
 どうしました、三鷹さん?」

(・・・・キャプテンがバカだと・・・チームもバカになってくるんだよ・・・!)

「三鷹さ〜ん?
 どうしたんスかー?」

目の前で、小角が手を振っている。

(・・・俺もバカになってやる・・・・・)

「命に代えても――――明日香ちゃんは、守る」

「お!?
 三鷹さん、進藤さんに気があったッスか!」

「・・・は?」

突然話しかけられて、困惑する。

「いやー、確かに可愛いッスからねー。
 俺の姉ちゃんほどじゃないッスけど」

「いや、まあ確かにそうだがそれとこれとは話が別というか何と言うか―――」

――――そこまで言った時、後ろから物音がした。

「き、来たッス!」

「う・・・」

サンプルの内の一体。

さっき退けたはずだが、傷が浅かったのかもしれない。

「―――ここは俺に任せるッス!
 三鷹さんは進藤さんと逃げるッス!」

「・・・・あ、ああ」

小角が剣を抜き、サンプルに切りかかる。

「―――明日香ちゃん、俺と一緒に――――――危ない!」

「―――キャアッ!」

突然、もう1人のサンプルが襲撃してくる。

手元には、どこかで拾ってきたのか斧が握られていた。

(―――斧―――。
まさか、水木さん――――!)

「こ、この野郎ッ!」

外藤さんが鉄パイプを振り、サンプルが退く。

(鋼は―――もう一体と格闘中か・・・・!
 クソ、小杉は・・・何をやってやがる!)

怪我人の外藤さんと俺では、とてもサンプルは倒せない。

「外藤さん、小角か鋼が来るまで凌ぐんだッ!」

「―――任せときッ!」

怪我をしているにも関わらず、軽くパイプを振る。

「みんな、こっち――――」

―――女の子達を振り返ったときだった。

「――――三鷹、後ろや!」

―――外藤さんの声。

―――とっさに扇子に伸びる手。

―――振り向きざまに扇子を振る。

―――視界の上の方に見える斧。

―――斧を止めようと出した扇子。

―――だが、疲れきった俺に、サンプルの強靭な斧は止められない。

―――手から離れ、叩きつけられる扇子。

―――動こうとした時には既に遅く、俺の腕は元から持っていかれる。

「三鷹ァッ!!」

外藤さんの鉄パイプは軽く避けられる。

俺を傷つけたサンプルは、女子たちの元に向かう。

(―――――キャプテン――――――!)

「うおおおおおおおッッ!!」

全身の筋肉が痛む。

それでも、体を前に突き動かす。

サンプルの足を掴み、動きを止める。

足蹴りが、顔に降る。

(惨めな姿だよな・・・・ホント・・・・・・)

サンプルが無理矢理手を引き剥がし、こっちを向く。

「ラアアアアアアアッッ!!」

外藤さんがパイプを振る。

「―――――」

サンプルが斧を振る。

――――カァン!!

(―――斧が吹っ飛んでくれればなあ・・・・・)

――――その願いは、儚く、小さなもの。

―――全身に何かが走るような感覚と共に、俺は意識を失った。






―――キャプテン、すまないな・・・・。

約束は―――最後までは果たせなかった。

でも―――努力はしたんだぜ?

キャプテンに頼まれた時、もう怪我してたんだぜ。

凄い酷い怪我でさ、動くのも辛かったんだ。

それでも―――守ろうとは、したんだ。

ハハハ・・・キャプテンのこと色々馬鹿にしたよな、俺。

「負け犬」とか、「糞蟲」とか。

でも―――俺の方が、馬鹿だったかもな。

死ぬ間際まで、大切なことに気付けなかった。

―――大丈夫、今は分かってる。

もし生き返ることがあったら―――その時は、はじめから。

―――そういえば、これも死ぬ間際に思い出したんだけど―――。

鋼と俺って、一回会ってるんだよね。高校の時。

あいつ、全然変わってないよ。キャプテンにも見せたかった・・・・。



―――じゃ、そろそろ―――俺も、そっちに行くぜ――――。

【45 三鷹 光一 死亡】
【残り11人】