77 「・・・雪の降る中、月が見えるというのもなかなか風流だな?」 「・・・・そうだな。 ――――これが終わったあと、ゆっくり見物させて貰おう」 私達の前に立つのは、仮面に素顔を隠した男。 どこかで手に入れたのか、ナイフの他に銃を持っている。 「・・・どうやって倒す気だ?」 「・・・・居合を使えば仮面ぐらい簡単に割れるだろうが・・・。 大神の企画書に書いてあったのは、あくまで『誰でも』ということだ。 居合など、普通の者にはできん」 刀は鞘に入れたまま、間合いを取り合う。 「・・・・やはりショットガンか?」 「・・・・そうかもしれない。 だが、そうでないかもしれない」 あくまで分かっていることは、支給武器の中に、二つだけ正解があるということ。 はずれれば、終わりだ。 「・・・どうするのだ?」 「・・・・一つだけ、考えがある」 私は、鋼の耳元で囁いた。 「――――行くぞッ!」 考える脳が残っているためか、俺達の会話中は襲いかかって来なかった。 俺の声を聞いたマスクが、一直線に俺の元に来る。 「――――そうは行かんッ!」 迅雷が俺の前に立ち、刀に手をかける。 ―――ナイフを剣元で受け、マスクを突き放す。 離されたマスクは銃を抜き、引き金を引く。 ――――ダダダダダダ――――― 迅雷が持ってきたマシンガンとは違った銃声がする。 「――――伏せていろ!」 迅雷が一喝する。 俺はそれに従い、態勢を低くする。 ―――銃弾が、迅雷を襲う。 ―――迅雷が刀を振る。 地面にパラパラと何かが落ちて行く。 (・・・銃弾、か) マシンガンなので、一回銃弾の流れが読めれば、先を予測するのは容易い。 迅雷が銃弾を切りながら、徐々に近づいて行く。 「――――――」 マスクが銃を投げ捨て、再びナイフで迅雷に襲い掛かる。 二度目の抜刀。 相手の刃と垂直に刃を動かし、そのまま刃を斜めにし滑らす。 迅雷が突きを入れるが、手刀で横にずらされ、迅雷はそのまま横に倒れる。 迅雷のいた位置を、ナイフが鋭く抉る。 迅雷が地面を蹴り、空中で一回転しながら着地する。 「・・・・」 「・・・・」 ―――2人が、無言で睨みあう。 迅雷の手が、まだ動くな、と語っている。 刀を再び鞘に収め、乱れていた髪を軽くすく。 (・・・・女・・・・?) ――――髪が乱れた時、一瞬別人の姿が見えた気がした。 「―――――鋼・・・・」 「・・・・なんだ」 「・・・・・次、私は勝負に出る」 「・・・・諦めが早すぎないか?」 「・・・・・・二人で戦えば、どうにかなる相手だと思うのか?」 「違う。 ――――本気を出したらどうなんだ?」 「・・・失敬な。今ので充分本気だが?」 「――――どうしても、やるのか?」 「――――覚悟の上、だ」 「―――――ならば、俺は――――止めん」 「―――――」 迅雷の手が、刀に伸びる。 俺の手は、ショットガンに伸びる。 ―――迅雷が、動いた。 『・・・企画書には、こうも書いてあった。 「捨て身の攻撃をすれば、刺し違えることは可能」・・・とな』 『・・・・死ぬ気なのか』 『なに、まずは全力で戦わせてもらう。 それで敵わなかった場合は――――』 『・・・・・一つ聞きたい』 『――――何だ』 『・・・何故、お前が責任を取ろうとする?』 『責任を取るつもりなど――――』 『―――お前の目は、哀しみに満ちていた』 『!』 『・・・何だろうな。 悲しみ、憎しみ、憂い・・・・その感情が何かなど、分からん。 ――――何が、何故そこまでお前を追い詰めるのか分からん』 『・・・・私は、この島で―――唯一の、傍観者だ。 他の人間が死と向き合う中、私は違った。 この島で、数々の死を見てきた。 私は、一人の命も救ってこなかった。 ―――生を、見捨てたこともあった。 ・・・・私は、最期に―――最期だけでも、自分の信念を通したい。 私が、私らしく生きる――――それを、貫きたい』 『・・・・生きる事は、出来ないのか?』 『・・・・それは―――「逃げ」になるのかもしれん。 私には、私の生き方がある。 せめて―――自分の生き方からは、逃げたくはない』 『・・・・・・そうか』 『・・・分かってくれたか?』 『・・・・止めたいが、聞かないだろうからな。 ・・・全力で、戦えよ。死に急ぐな』 『・・・・ああ』 「――――ハァァァァァアアアアアアッッ!!」 抜刀しながら、マスクに突っ込む。 (この期に――――居合など、効果が無い) マスクは避けようとせず、構えを崩さない。 (――――動きを完全に封じる――――そこだけだ――――!) 横に大きく刀を凪ぐ。 野球マスクが跳び、上からナイフを振り下ろす。 (――――今だ――――!) 身を一歩引き、ナイフをかわす。 前に倒れこむように剣を突き、空中の野球マスクに突き刺す。 マスクのナイフが、私の胸に刺さる。 「・・・グフッ・・・・」 口から血が漏れる。 私の手はマスクの手をつかみ、もう片方の手を懐に伸ばす。 中から爆弾を出し、野球マスクの仮面に張る。 腕を押さえつけ、爆弾を外せない様にする。 「―――鋼、やれェッ!」 後ろで待機している鋼に呼びかける。 「・・・・迅雷!」 鋼が、強い声で私を呼ぶ。 「・・・・お前なら、離れられるだろ! 俺が撃った後でも、すぐに離脱ぐらい出来るだろ!」 「・・・」 私は、力無く首を横に振る。 「・・・・ホントに、これでいいのか!」 私は、首を縦に振る。 今度は、弱くでは無い。 力強く、決意を込めて。 「・・・・・・後の事は・・・・任せたぞ・・・・・」 「・・・・・・ああ!」 鋼が、射撃体勢を取る。 暴れるマスクを押さえつけ、強く抱き寄せる。 ナイフが深く入り込む。 「・・・・・・・・さらばだ、みんな・・・・・・」 ――――鋼が、引き金を引いた。 発射音が聞こえる。 打ち出された弾が真っ直ぐに野球マスクへと、その仮面へと飛ぶ。 (・・・・・コナミ、父上、小杉・・・・・・・そして・・・・) 私は、目を閉じた。 「――――鋼さーん!」 小角が、走り寄って来る。 小杉は、横で煙草をふかしている。 「・・・・・じ、迅雷さんは・・・・・?」 「・・・・・アイツは―――――」 俺が答えようとした時だった。 ―――――パチパチパチパチ―――――。 ――――どこからか、拍手が聞こえた。 「―――だ、誰ッス!?」 小角が身構え、俺もショットガンを構える。 「―――――あの野球マスクを倒すなんて・・・・やりますわね、皆さん―――」 「――――!」 小杉が、声のした方を見る。 「見ていて感心しましたわ、今の――――」 建物の陰から、姿を現した女。 ――――浅上 綾華。 同行していた人物以外の、最後の生き残り―――――。 【21 迅雷 隼人 49 野球マスク 死亡】 【残り7人】