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「・・・雪の降る中、月が見えるというのもなかなか風流だな?」

「・・・・そうだな。
 ――――これが終わったあと、ゆっくり見物させて貰おう」

私達の前に立つのは、仮面に素顔を隠した男。

どこかで手に入れたのか、ナイフの他に銃を持っている。

「・・・どうやって倒す気だ?」

「・・・・居合を使えば仮面ぐらい簡単に割れるだろうが・・・。
 大神の企画書に書いてあったのは、あくまで『誰でも』ということだ。
 居合など、普通の者にはできん」

刀は鞘に入れたまま、間合いを取り合う。

「・・・・やはりショットガンか?」

「・・・・そうかもしれない。
 だが、そうでないかもしれない」

あくまで分かっていることは、支給武器の中に、二つだけ正解があるということ。

はずれれば、終わりだ。

「・・・どうするのだ?」

「・・・・一つだけ、考えがある」

私は、鋼の耳元で囁いた。






「――――行くぞッ!」

考える脳が残っているためか、俺達の会話中は襲いかかって来なかった。

俺の声を聞いたマスクが、一直線に俺の元に来る。

「――――そうは行かんッ!」

迅雷が俺の前に立ち、刀に手をかける。

―――ナイフを剣元で受け、マスクを突き放す。

離されたマスクは銃を抜き、引き金を引く。

――――ダダダダダダ―――――

迅雷が持ってきたマシンガンとは違った銃声がする。

「――――伏せていろ!」

迅雷が一喝する。

俺はそれに従い、態勢を低くする。

―――銃弾が、迅雷を襲う。

―――迅雷が刀を振る。

地面にパラパラと何かが落ちて行く。

(・・・銃弾、か)

マシンガンなので、一回銃弾の流れが読めれば、先を予測するのは容易い。

迅雷が銃弾を切りながら、徐々に近づいて行く。

「――――――」

マスクが銃を投げ捨て、再びナイフで迅雷に襲い掛かる。

二度目の抜刀。

相手の刃と垂直に刃を動かし、そのまま刃を斜めにし滑らす。

迅雷が突きを入れるが、手刀で横にずらされ、迅雷はそのまま横に倒れる。

迅雷のいた位置を、ナイフが鋭く抉る。

迅雷が地面を蹴り、空中で一回転しながら着地する。

「・・・・」

「・・・・」

―――2人が、無言で睨みあう。

迅雷の手が、まだ動くな、と語っている。

刀を再び鞘に収め、乱れていた髪を軽くすく。

(・・・・女・・・・?)

――――髪が乱れた時、一瞬別人の姿が見えた気がした。

「―――――鋼・・・・」

「・・・・なんだ」

「・・・・・次、私は勝負に出る」

「・・・・諦めが早すぎないか?」

「・・・・・・二人で戦えば、どうにかなる相手だと思うのか?」

「違う。
 ――――本気を出したらどうなんだ?」

「・・・失敬な。今ので充分本気だが?」

「――――どうしても、やるのか?」

「――――覚悟の上、だ」

「―――――ならば、俺は――――止めん」

「―――――」

迅雷の手が、刀に伸びる。

俺の手は、ショットガンに伸びる。

―――迅雷が、動いた。






『・・・企画書には、こうも書いてあった。
 「捨て身の攻撃をすれば、刺し違えることは可能」・・・とな』

『・・・・死ぬ気なのか』

『なに、まずは全力で戦わせてもらう。
 それで敵わなかった場合は――――』

『・・・・・一つ聞きたい』

『――――何だ』

『・・・何故、お前が責任を取ろうとする?』

『責任を取るつもりなど――――』

『―――お前の目は、哀しみに満ちていた』

『!』

『・・・何だろうな。
 悲しみ、憎しみ、憂い・・・・その感情が何かなど、分からん。
 ――――何が、何故そこまでお前を追い詰めるのか分からん』

『・・・・私は、この島で―――唯一の、傍観者だ。
 他の人間が死と向き合う中、私は違った。
 この島で、数々の死を見てきた。
 私は、一人の命も救ってこなかった。
 ―――生を、見捨てたこともあった。
 ・・・・私は、最期に―――最期だけでも、自分の信念を通したい。
 私が、私らしく生きる――――それを、貫きたい』

『・・・・生きる事は、出来ないのか?』

『・・・・それは―――「逃げ」になるのかもしれん。
 私には、私の生き方がある。
 せめて―――自分の生き方からは、逃げたくはない』

『・・・・・・そうか』

『・・・分かってくれたか?』

『・・・・止めたいが、聞かないだろうからな。
・・・全力で、戦えよ。死に急ぐな』

『・・・・ああ』






「――――ハァァァァァアアアアアアッッ!!」

抜刀しながら、マスクに突っ込む。

(この期に――――居合など、効果が無い)

マスクは避けようとせず、構えを崩さない。

(――――動きを完全に封じる――――そこだけだ――――!)

横に大きく刀を凪ぐ。

野球マスクが跳び、上からナイフを振り下ろす。

(――――今だ――――!)

身を一歩引き、ナイフをかわす。

前に倒れこむように剣を突き、空中の野球マスクに突き刺す。

マスクのナイフが、私の胸に刺さる。

「・・・グフッ・・・・」

口から血が漏れる。

私の手はマスクの手をつかみ、もう片方の手を懐に伸ばす。

中から爆弾を出し、野球マスクの仮面に張る。

腕を押さえつけ、爆弾を外せない様にする。

「―――鋼、やれェッ!」

後ろで待機している鋼に呼びかける。

「・・・・迅雷!」

鋼が、強い声で私を呼ぶ。

「・・・・お前なら、離れられるだろ!
 俺が撃った後でも、すぐに離脱ぐらい出来るだろ!」

「・・・」

私は、力無く首を横に振る。

「・・・・ホントに、これでいいのか!」

私は、首を縦に振る。

今度は、弱くでは無い。

力強く、決意を込めて。

「・・・・・・後の事は・・・・任せたぞ・・・・・」

「・・・・・・ああ!」

鋼が、射撃体勢を取る。

暴れるマスクを押さえつけ、強く抱き寄せる。

ナイフが深く入り込む。

「・・・・・・・・さらばだ、みんな・・・・・・」

――――鋼が、引き金を引いた。

発射音が聞こえる。

打ち出された弾が真っ直ぐに野球マスクへと、その仮面へと飛ぶ。

(・・・・・コナミ、父上、小杉・・・・・・・そして・・・・)

私は、目を閉じた。







「――――鋼さーん!」

小角が、走り寄って来る。

小杉は、横で煙草をふかしている。

「・・・・・じ、迅雷さんは・・・・・?」

「・・・・・アイツは―――――」

俺が答えようとした時だった。

―――――パチパチパチパチ―――――。

――――どこからか、拍手が聞こえた。

「―――だ、誰ッス!?」

小角が身構え、俺もショットガンを構える。

「―――――あの野球マスクを倒すなんて・・・・やりますわね、皆さん―――」

「――――!」

小杉が、声のした方を見る。

「見ていて感心しましたわ、今の――――」

建物の陰から、姿を現した女。

――――浅上 綾華。

同行していた人物以外の、最後の生き残り―――――。

【21 迅雷 隼人 49 野球マスク 死亡】
【残り7人】