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「――――あの野球マスクを倒せるなんて、思いませんでしたわ」

「・・・・何の用だ」

俺は、突然の来訪者に問い掛ける。

「そッスよ!
 見てたんなら手伝ってくれればいいのに・・・・」

小角が、俺に合わせて呼びかける。

「―――あなた達に要はありませんの」

女が、体の陰から銃を出す。

「・・・・・」

「―――そう。黙っていればいいの。
 私が会いに来たのは――――小杉さん。
 ――――あなたですわ」

女が、小杉の方を見る。

小杉は、煙草を足で踏み潰している。

「ちょっと話しません?
 ――――森の中ででも」

銃口は、俺達に向けられたままだった。

「・・・・・・」

小杉が、無言で女に近づく。

「こ、小杉さん、行っちゃダメッスよ!
 何されるか分からないッスよ!」

「・・・・お前には関係無いだろ?」

小杉が、冷たく言い放つ。

「う・・・・・。
 で、でも・・・・・・!」

俺は、小角を手で制する。

「鋼さん・・・・?」

「・・・行かせてやれ。
 ―――何か、あるんだろう」

俺は、小杉の背中を見る。

「・・・・小杉さん・・・・」

小角も俺の隣に立つ。

「――――絶対に、生きて、帰ってきてくださいよ――――!」

―――小角の声は、木霊となって虚しく響いていた。






「――――どこまで行く気だ?
 もう充分離れた。
 ―――決着、つけようぜ」

小杉が、左手に持っていた銃を右手に移す。

「・・・・みんなと離れるのが怖いのかしら?」

「―――ハッ、そんなんじゃねえよ。
 遠いと、帰るのが面倒だからな」

「・・・帰るつもり?」

「・・・・ああ。
 俺はこんな島じゃ死なねえ。
 いや――――死ねねえ」

「勇ましいのね、格好だけは・・・」

「・・・・・」

小杉が、綾華に一歩近づく。

「――――スタート以来ですわね」

「・・・ああ」

「まさかあなたが生きているなんて・・・夢にも思わなかったわ」

「・・・その言葉、そっくりそのままお前に返してやるよ」

「あら、お生憎。
 私はあなたと違って窮地にも慣れてますの」

「・・・フン、運で生き残ったくせに良く言うぜ」

「・・・・フフフ・・・・・」

綾華が笑い出す。

「・・・何がおかしい」

「――――いえ、あなたも変わったと思っただけですわ」

「・・・・」

「以前のあなたなら――――そうね、
 後ろから不意打ちとか、話している最中にイライラして発砲・・・・。
 こんな感じだったかしらね」

「・・・・フン、我慢してるだけだ。
 今も―――撃ちたくてウズウズしている所だ」

「・・・本当にそうかしらね?」

「・・・・・何?」

「もしそうだったら、あなたは仲間なんていなかったはず。
 1人で生きて、1人で死ぬ。
 ――――一緒に戦う仲間なんていないはずですわ」

「・・・・・」

「あなたを変えたのは―――2人の男。
 ――――球界でライバルとして知られていた男と、
 幸せ島で起こった反乱の首謀者。
 ―――今のあなたは、以前とは全く違う――――」

「・・・・」

「―――フフ、恥ずかしいと思いませんの?
 自分の性格を考えて、仲間がお似合いとでもお思い?
 きっと待っている皆さんも、内心では帰ってこなくていいと思っているかもしれないわよ?
今からでも、裏切りの準備でもしたらどうですの?」

「・・・・もし、そうだったとしても――――」

「!」

小杉がゆっくりと口を開く。

「―――そうだったとしても、俺はあいつ等を裏切らない。
 短い間だったとしても、あいつ等は―――仲間だった。
 一緒に戦った、仲間だった。
 俺は―――仲間を裏切らない」

「・・・・倉刈さん、だったかしら?
 あの方はどうなんですの?
 死体を発見しましたわよ?」

「・・・・アイツは、俺の近くでは幸せにはなれない。
 妙に人がいいからな。
 きっと――――これで良かったと、俺は思ってる」

「・・・勝手な解釈ですわね?」

「・・・・フン、何とでも言え」

「――――人って、変わるものですわね」

「!」

綾華が、空を見つめる。

2人の頭には、うっすらと雪が積もっている。

「―――私があなたに近づいたのは、ある人からの任務。
 そして―――その任務を与えた人は、全くの別人のようになってしまいましたわ」

「・・・・」

「―――『あの頃』の小杉を確保すること。
 それが、『あの頃』のあの人からの任務。
 例えあの人が変わってしまっても、私の任務は変わらない――――」

「・・・・!」

綾華が、銃をゆっくり持ち上げる。

「―――でも、ターゲットが変わった場合は別・・・。
 毒を撃ったあと死んでいなかったのは不覚。
 ―――――あなたには、死んでもらいますわ――――」

綾華の銃が、俺の目の前に来る。

俺の銃は、綾華の目の前にある。

「―――殺したいでしょう?
 毒を撃って、人生をダメにした私を――――。
 ―――決着を、つけましょう――――?」

「――――お前の毒が無ければ、運命は変わっていたかもしれない。
 あいつ等もサンプルにならずに済んだ――――。
 ――――あいつ等の為にも、俺の為にも――――。
 ――――ここで、終わりにする――――」

「あら、いかにもあなたらしい言い訳だこと。
 能書きはいいの。
 さあ――――始めましょう?」

「―――俺は死なない。
 こんな所では――――死ねない――――!」



「「――――これで、終わり―――――」」



―――島に、二発の銃声が響いた。






「・・・・・俺は、死ぬわけにはいかねえんだよ――――」

俺は、綾華を見ないで話し掛ける。

「・・・・小角のヤローが、『絶対』なんて言いやがったからな・・・・・」

銃を、その場に捨てる。

(これも、もう必要ねえだろうな・・・・多分)

――――俺は、ゆっくりと町へと歩き始めた。

――――綾華の顔に、雪が積もり始めていた。

【3 浅上 綾華 死亡】
【残り6人】