79 ――――ここは、どこだろう? ――――私は、どうしてこんなところに――――? ――――ああ、そうか。 ――――神木さんや外藤さんが戦っているのを見て・・・気絶しちゃったんだ。 ――――暗いな、ここ・・・・。 ――――眠れば、元に戻るかな・・・・? ――――分からないけど、そうしよう・・・・・。 「――――日出子――――!」 ―――目を瞑った時だった。 暖かい声が聞こえ、私は飛び起きた。 「―――お父さん―――?」 私の目の前には、前見たときより確実に痩せているお父さん。 「・・・日出子、無事か?どこにも怪我なんかしてないか?」 お父さんが、真剣な目つきで聞いてくる。 「ええ、私は大丈夫だけど・・・・。 お父さんこそ、大丈夫なの?背中に、斧が―――」 背中を見る。 斧は、どこにも刺さっていない。 「ああ、もう大丈夫だ。 今は、逆に体の調子がいいんだ」 そう言いながら、お父さんが体を動かして見せる。 「なんで、ここに・・・・?ここはどこなの?」 「日出子の心の中、さ。 私は、最後に日出子に伝えたいことがあって来たんだ」 「伝えたい、こと・・・・?」 「ああ。 日出子、お前は―――迷っているんじゃないのか?」 「え・・・?」 「私の後を追おう、なんて考えているんじゃないのか?」 「・・・・」 私は、俯いてしまう。 「どうやら、本当にそうだったみたいだな・・・」 「・・・何で、分かったの?」 「そりゃ、私が日出子のお父さんだからさ」 「お父さん―――」 お父さんが、やさしい眼差しでこちらを見ている。 「いいかい、日出子」 口を開く。 「私の後を追う―――そんな馬鹿なことは、考えちゃダメだ」 「でも――――」 「日出子には未来がある。 まだまだ、お前にはやることがたくさんある。 それに―――明だっている」 「・・・・」 「私は、充分生きた。 こんなしっかりした娘がいて、幸せだった。 日出子には悪い父親だったかもしれないが、私にはとてもいい家族だった。 ―――私に、思い残すことは――――」 そこまで、お父さんが言った時だった。 お父さんの目から、涙がこぼれる。 「―――一度でいいから、お前たちに・・・父親らしくしてやりたかったなぁ・・・・・」 「お父さん・・・・」 お父さんに近づいて、私は驚いた。 「お父さん、体―――」 「え?私の体が――――あ――――」 お父さんの体が、透けてきていた。 「―――そろそろ、お別れの時間みたいだ・・・・」 お父さんが、寂しそうな顔で言う。 「え・・・・! 早すぎるよ、まだ・・・もうちょっとだけでも――――」 「―――そうはいかないみたいだ・・・。 日出子と別れるのが、辛くなっちゃうからね・・・・」 「今別れたら、もっと辛いから! だから――――」 「―――日出子、明を―――頼んだよ――――」 「だから―――もう少しだけでも――――」 「――――バイバイ――――日出子――――――」 お父さんの体が、消えた。 「お父さん・・・・・」 ――――私の意識も、ぼやけてきた。 「―――ホントに、パワプロ君なの・・・?」 「ああ、俺は1人しかいない。 ――――本物の、パワプロさ」 「―――パワプロ君―――」 私は、パワプロ君に抱きつく。 「お、おいおい・・・・・」 パワプロ君の照れたような声が、上から聞こえる。 「―――あの時、私を守ってくれたのも―――パワプロ君、だよね?」 「―――ああ」 「でも―――パワプロ君って、ずっと前に――――」 「話すと長くなるんだけど――――とにかく、俺は蘇ったんだ。 だから―――あそこにいたのは、紛れも無く―――俺さ」 「―――じゃあ、やっぱり・・・亀田君も・・・・?」 「・・・ああ、あれも―――夢なんかじゃない。 俺は――――また死んだんだ」 パワプロ君が、寂しそうに言う。 「でも、また会えた―――」 「――――なーに誰もいないからってイチャついてんだ、キャプテン。 見ているほうが恥ずかしくなるぜ」 突然、全く別の人の声が聞こえる。 「み、三鷹っ!」 「三鷹君!?」 私は、慌ててパワプロ君から離れる。 「伝えたいことがあるって言うから来たんじゃねえのか?キャプテン」 「あ、ああ。そ、そうだったね・・・」 パワプロ君がごまかす様に返事をする。 「―――とにかく――――。 ―――明日香、話があるんだ」 パワプロ君が突然真面目な顔になる。 「何?話って―――」 「―――明日香は、今―――苦しんでいると思う。 繊細な性格だからね――――。 俺や三鷹が死んで、胸を痛めているんじゃないか?」 「え・・・・?」 「俺たちは、明日香を守って死んだ。 だから―――明日香は、苦しんでいるんじゃないか?」 「・・・・・」 「もし、そうなら―――気にしないで欲しいんだ。 明日香は、前を向いて―――笑っているほうが、俺は好きだ」 「おいおいキャプテン、突然告白かよ・・・・」 三鷹君を無視して、パワプロ君が続ける。 「俺たち、馬鹿だからさ。 目の前で女の子がピンチなのを見ると・・・どうしても体が動いちゃうんだ。 増してや―――相手が明日香だったらなおさらさ。 俺たちがそうしたのは、明日香に笑っていて欲しいから――――。 笑って、これからも生きて欲しいから。 そのために、俺たちは行動を取ったんだ」 「でも、私なんて―――2人の大切な命を――――」 「関係無いんだよ、そんな事は。 俺たちは、自分の好きなように動いたんだ。 自分の好きなように、生きたんだ。 ――――明日香、それを否定するつもりかい?」 「パワプロ君――――」 「明日香ちゃん、納得してあげてくれよ。 コイツ、明日香ちゃんが納得するまでずっと言い続けるぜ」 「三鷹君――――」 「キャプテンの言う通り。 俺たちは、俺たちらしく生きたんだ。 だから―――明日香ちゃんが悩むことなんて、一つも無い。 明日香ちゃんが、明日香ちゃんらしく生きてくれれば、俺たちはそれで満足なんだ」 「――――うん。 分かったよ、二人とも。 私は――――私らしく、生きる。約束する」 「・・・それを聞いて安心した」 パワプロ君が、近づいてくる。 「―――決心したなら―――いつまでもここにいる必要は無い――――」 パワプロ君の手が、私の目に覆い被さる。 「―――パワプロ君――――?」 「―――現実に、帰るんだ――――これからも、生きるために―――――」 「―――――――」 ――――だんだんと、意識がなくなっていった。 「――――お父さん―――――」 「――――パワプロ君――――」 「鋼さん、2人とも―――――目が覚めたッスよ!」 【残り6人】