80 「――――うわー・・・・・! 見てくださいッス!鋼さん、小杉さん! 初日の出ッスよ! 大きいッス!凄いッス!」 「・・・太陽の何が凄いんだ?」 「俺もあまりそういうのに興味は無いな」 「・・・・2人とも、ホントに日本人ッスか?」 ―――だが、確かに綺麗だな、と思った。 ―――小杉が帰ってきて、二人が目覚めて。 小杉を見張りに残し、俺と小角は山に出かけた。 この島の隅々を歩き回り、あちこちで穴を掘って、埋めた。 途中、何回か知った顔に出会った。 ヘルガの時は、小角も苦しそうだった。 火葬をし、骨を埋める。 小角が、灰を今も持っている。 ―――今、島に土には48人が眠っている。 ―――――誰にも脅かされることが無い、眠り―――――。 「鋼さん、小杉さん、野球やらないッスか? いや、むしろやりましょう!」 「・・・突然何言ってんだよ?」 「俺は別に構わんが・・・ボールやバットはどこにあるんだ?」 「それなら・・・これッス!」 小角が、体の陰からバットやボール、グラブを出す。 「雑貨屋にあったッス。 小杉さんは確か元プロッスよね!期待してるッスよ!」 小角が内野手用グラブを掴む。 「しかし・・・人数が少なすぎないか? 流石に三人では―――――」 「――――おいおい、ワシは仲間はずれか? 小角、キャッチャーミット持ってきい」 外藤が現れ、小角に話し掛ける。 「え!? 外藤さん、片手なのに大丈夫ッスか?」 「そんなの関係無いわ。 ワシは外野も内野も捕手もできるスーパープレイヤーやからな。 怪我ぐらいなんてこと無いわい!」 「・・・まあ分かったッス。持ってくるッス・・・・」 「――――で、バッターは誰がやるんや?」 「・・・俺はピッチャーをやらせてもらうぞ」 小杉がピッチャー用グラブとボールを持っていく。 「・・・・俺がバッターか」 俺は、その場に残されたバットを持つ。 ブルン、ブルンと軽く素振りをする。 「ふむ、意外としっくりくる・・・・。 ―――金属バットか、よく飛びそうだ」 「キャッチャーミット、持って来たッスよ!」 「おう、じゃあ皆位置につけい!」 小角が内野手、小杉が投手、外藤が捕手。 「小角、内野じゃ取れないと思うぞ。 外野に――――」 「――――おい鋼、俺の球が打てるとでも思ってるのか?」 「・・・さあな。お前のピッチングは見たことがない」 「・・・フン、まあいい」 「よし、プレイボールや!」 小杉が、ボールを振りかぶる。 (まずは見させてもらおう・・・・!) 小杉の手から、ボールが離れる。 外藤のグラブが、パチン、といい音を鳴らす。 「ストラーイッ!」 (フォーク、の様だが・・・・まだ何かありそうだな) ―――小杉の球は、スライダー、シュートと続く。 「ボール!」 「・・・・チッ」 2・1。 (・・・・・来る!) 小杉が、4球目を振りかぶる。 さっきの球より明らかに速い球は、真っ直ぐこっちへ来る。 (――――ストレート!) 俺は、全力でボールを打つ。 ――――キーン―――――。 快音と共に、ボールが上がっていく。 「・・・うわー、でかいわー・・・・」 外藤の言う通り、かなり大きい。 それは、山の中に音もなく落ちる。 「・・・・小角、頼んだぞ」 「え、小杉さん、ちょっと・・・・」 (散った者への、プレゼント――――) 俺は、山に背を向けた。 「小角は今年もダイエーか?」 「そッス! 今年こそは三冠王狙うッスよ、三冠王!」 「ほう、ええのう、三冠王。 取ったら、ワシのたこ焼き屋紹介してくれや。 『三冠王行きつけの店』・・・ってな!」 「いッスよ! その代わり俺が行った時は値引きして欲しいッス」 「―――それとこれとは話が別や」 「え、ちょっと外藤さーん!」 「・・・・お前ら、さっさと仕事をしろ」 「――――よし、準備はいいか?」 「こっちはオーケーッス!」 「食料と水、ちゃんと持ったか?」 「人数分あるッス!一週間は軽いッス!」 「―――――よし、出発!」 「うおー、航海ッス!」 ――――俺達は、島を出た。 海なら俺は泳げるが、女子たちは流石に泳げない。 幸い木は豊富にあったため、俺達はイカダを作ることにした。 食料を町で集め、長旅に備える。 俺・外藤・進藤と、小角・小杉・倉刈に分かれ、二つのイカダに乗る。 「――――島が、後ろに見えるッス!」 当たり前のことだ。 しかし―――俺も、最後に見納めることにした。 「――――――この島で―――――――」 俺は、島を眺めながら口を開く。 「―――この島で散った者達の為にも――――― ―――――俺達は、これからも―――――生きていく―――――」 「――――」 ――――ヘルガさん、俺はやったッス。 俺は、前を向いて生きるッス。今を。そして、これからを。 ―――過去に囚われるんじゃなくて、俺は、過去を思い出しながら生きるッス。 この島で起こった出来事、俺は――――忘れないッス。 ヘルガさんの事も、思い出すッス。 ―――――というより・・・・忘れられないッス。 今から考えれば――――一目ぼれ、ってやつッス。 俺、ヘルガさんの事―――好きだったッス。 だから、これからも―――ヘルガさんに言われたこと、絶対忘れないッス。 ――――さよならッス、ヘルガさん。 ――――お父さん、私、大丈夫だよ。 明も、ちゃんと面倒見る。だから心配しないで。 ―――お父さん、言ってたよね。 『一度でいいから、お前たちに父親らしくしたかった』・・・って。 ―――お父さんは、充分父親らしかった。 私たちをいつも守ってくれて・・・苦労ばかりして。 一緒に遊ぶって事は少なかったけど、お父さんはとっても父親らしかった。 学芸会・・・見に来てくれたこともあったよね。 ―――お父さんは、私の自慢の父親だよ。 ――――ありがとう―――――日本一のお父さん。 ――――ワシな、気絶しながら色々考えたんや。 お前ら殺した神木は、ワシを守って死んだ。 ワシが仇討つはずやったんやが・・・・。 ワシには、どんな行動が正しいのか分からん。 一つ分かるのは、今度亀田に会ったらボコボコにするっちゅー事だけや。 ――――神木も、色々考えとったんや。 勘違いとは言え―――人を殺してもうた。 そして―――自分の罪を、償おうとしたんや。 ――――命と、引き換えに。 ――――――罪は、消えん。だけど――――― 許してやって、くれんかね?奴は、奴なりに動いたんや。 ―――ワシは、これからも生きる。 お前らの分も、生きる。だから――――神木のことも、分かってくれや。 ――――コナミ、俺は――――帰る。 プロに戻るかもしれないが、どうするかは分からない。 だが、一つ約束しよう。 お前と交換したこの体、決して無駄にはしねえ。 最期の最期まで―――俺は、俺らしく生きる。 お前は、あんな奴に捕まっちまったが―――― お前は、俺の中でまだ生きている。 ――――それだけは、言いたい。 ―――――――最後に―――――― ―――最後に、お前と決着がつけられて良かった。 ――――パワプロ君、三鷹君。 2人が守ってくれた前に、もう1人―――私を守ってくれた人がいるんだ。 寺岡さんって言うんだけどね、いい人だったの。 その人も、パワプロ君たちと同じ様に―――生きていたのかな? 自分らしく、生きていたのかな。 パワプロ君、もし会えたら聞いて欲しいな。 そして―――伝えて欲しいな。 私は、これから―――私らしく、生きる、って。 ――――パワプロ君、三鷹君、寺岡さん―――――。 ――――ありがとう、そして――――さようなら。 ――――黒松、迅雷――――。 2人のお陰で、ようやく一つのことが成し遂げられた。 6人だけ――――だが、生き残った。 ―――俺達は、このことを忘れない。 この島で経験したことを―――忘れない。 お前らと言う人がいたことを――――忘れない。 ―――私は、お前らに何か出来ると言うわけではない。 ――――ただ、生きることしか、出来ない。 ――――だが――――――。 これだけは、言っておく。 俺達は、散っていった者たちの分も――――生きる。 そして――――これからも、伝えていく。 お前らの生き方を―――――。 そして、お前らと生きていた、自分達を――――。 ――――いつか、俺も死ぬ日が来る。 ―――――その時まで、俺は全力で走り続ける。 ―――――――自分の進む道を、歩み続ける――――――――。 PAWAPOKEROYALE 完